『灰となっても』©rather be ashes than dust limited香港出身のアラン・ラウ監督が2019年に起きた香港の民主化を要求する大規模な抗議活動を命懸けで撮影し、1,000時間以上に及ぶ映像から身を削るように制作したドキュメンタリー映画『灰となっても』が6月28日(土)より劇場公開されることが決定した。
第28回釜山国際映画祭で上映され多くの観客の注目を集めた本作は、これまで日本で公開された映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』『Blue Island 憂鬱之島』『時代革命』に続き、あのときの香港と、世界の混乱、後退してゆく民主主義、私たちが生きている時代を映し出している。
本作の原題『寧化飛灰(英題:Rather be Ashes than Dust)』は「塵として朽ちるよりも、灰となっても燃え尽きる方がいい」という意味。人生を無為に過ごすよりも、短くとも激しく生きるという覚悟を表している。
2014年の雨傘運動に続き、2019年、香港で民主化を求める抗議運動が燎原の火ように広がった。逃亡犯条例改正案反対のデモを発端にして、参加者たちは香港の人口の3割を占める約200万人に膨れ上がり、市民と警察との衝突は日を追うごとに激しさを増した。
この抗議運動の最前線でアラン・ラウ監督はフリージャーナリストとしてカメラを回し、香港の若い世代の勇敢さと恐れを知らない心、対する香港警察当局の冷酷さと残虐性を記録した。
監督は混乱と暴力が渦巻く現場を撮影する中で、「ジャーナリストは客観的であり続けるべきか? どのような行動をするべきか?」というジレンマに直面したという。
本作には、香港の人々が否応もなく分断され、罪悪感に苛まれる姿、怒号が渦巻く路上、あの時のありのままの香港が映し出されている。観る者は時間を遡り、壮絶な現場でカメラを回すジャーナリストたちが何を見て、何を感じていたのかを体験することになるだろう。
変わりゆく香港を世界に伝えることができるのか、その確信と疑念に引き裂かれながら監督は撮影を続け、1,000時間以上の映像から制作された本作は、ニュース報道だけでは伝えるのが難しい現場の生々しい衝撃を突きつける。
「香港国家安全維持法」施行から2025年6月30日で5年、香港では言論に対する締めつけがさらに強まっている。
痛ましいほど若い抗議活動家たちの物語が灰となっても、消えることのないように。本作はいま、自由に発言することができない香港の人々の闘いの記録でもあり、香港市民の烈火のような自由と民主に対する熱望が込められている。
『灰となっても』は6月28日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。
(シネマカフェ編集部)