「埼玉西武ライオンズ」公式HPより引用 ロスジェネ世代の野球ライター2人が野球界の話題を取り上げる新企画の第3弾。アメリカでの生活経験を活かし、日刊SPA!などでMLBを中心とした記事執筆などを手掛ける八木遊と、野球専門誌の編集畑出身で現在はフリーライターとして活動する上村祐作がお届けする。
◆和歌山県出身監督は“お人よし”?
開幕からちょうど1か月が経過したプロ野球は、セ・リーグ、パ・リーグともに大混戦の様相を呈している。特にパ・リーグは首位オリックスから最下位ソフトバンクまで3.5ゲーム差の団子状態。今回は、今後のペナントレースの行方を占ってみた。
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八木遊(以下、八木):パ・リーグは引き続きオリックスが首位だけど、4カード連続で負け越し中。ちょっと苦しいかな。
上村祐作(以下、上村):日曜(27日)の西武戦は、同点の9回裏に2死二塁で打率1割台の平沼翔太を歩かせて、最後は中村剛也にサヨナラ打を浴びました。
八木:岸田監督の判断ミスともいえるけど、これは西口監督の采配勝ちだったね。西武は5位とはいえ、借金は1つだけだし、やっぱり投手陣がいい。相変わらず打てないけど、両リーグトップの21盗塁が光ってる。
上村:やはり投手陣がいいですね。中日じゃないですけど、「3点取れば勝てる野球」を実践しています。
八木:西口監督には注目していたんだけど、柔和なイメージとは裏腹に人心掌握の能力は高そう。
上村:たしかに規則、規律には厳しい監督ですね。ただ采配はオーソドックスです。自身が先発完投型の投手だったので、先発をかなり引っ張るイメージ。長いシーズンでこれがどう出るかでしょうか。
八木:そういえば、西口監督とソフトバンクの小久保監督、そしてロッテの吉井監督も同じ和歌山県出身。自分自身(八木)もそうだけど、和歌山県民はどこか“お人よし”というか保守的というか、非情になり切れない、ちょっと勝負弱い面があるんだよね。
上村:たしかに西口監督は現役時代に“ノーノー未遂”が何度かありました。
八木:これまで和歌山県出身監督は何人かいるんだけど、日本シリーズを勝っていないんだよね。古くは西本幸雄監督がそうだったし、ちょっと前は西武の東尾修監督も2回出場して両方負けている。去年の小久保監督も最後に油断しちゃったしね。
◆打線が貧弱な西武の今後は…
上村:西武に話を戻すと、やはり打線が貧弱すぎます。上位進出はかなり厳しいのでは。
八木:ファームに仲三河優太っていうすごい左打者がいるのよ。今は育成だけど、一軍でクリーンアップを打てる逸材。チャンスさえもらえれば、西武打線のカンフル剤になるんじゃないかな。
上村:パ・リーグはなんだかんだ言ってソフトバンクの選手層の厚さが違いますし、優勝に一番近いです。近藤健介がヘルニア手術から戻ってくる後半戦は首位争いの中心にいると思います。
八木:たしかにソフトバンクはこれだけ故障者がいて、首位とは3.5ゲーム差だからね。強いのは間違いないけど、小久保監督というか、チーム全体が去年の日本シリーズの負けを引きずっている気がするんだよね。
上村:悪夢の4連敗があって、今季は手綱を締めてくると思ったんですけど。小久保監督は実績のある選手を動かさないというか、保守的すぎる面はありますね。短期決戦での戦い方も見据えながら、時には選手に活を入れるような起用をしてもらいたいところです。
八木:不振の山川穂高も4番で使い続けているしね。確かにもっと打順をいじってもいいと思う。
上村:あとは甲斐拓也の抜けた穴が大きいです。
八木:巨人で大活躍しているからなおさらだね。
◆小久保監督と対照的な吉井監督
八木:ロッテはどう?
上村:小久保監督とは対照的に吉井監督はよく選手を動かしますよね。打順の組み替えも多いですし、適材適所、臨機応変にやっているイメージです。あとは中継ぎ投手に3連投させないなど、長いシーズンを見据えた選手起用が特徴です。
八木:現役時代の吉井監督はちょっと荒々しい面があった記憶があるけど、監督になってからは優しいというか、和歌山県民らしくなってきた。佐々木朗希をメジャーに送り出した時のコメントなんかも人情味があって良かったよ。
上村:いずれにしてもパ・リーグはソフトバンクの戦力が1枚も2枚も上。山川もそのうち当たりを取り戻すと思いますし、連覇は堅いとみています。
◆ソフトバンクの戦力はケタ違い?
八木:今日は話題に出さなかったけど、日本ハムと楽天も優勝を狙える位置にいると思う。特に楽天は三木監督が5年前の経験を生かしている。新庄監督は何を考えているのかさっぱり読めないけど(笑)。
上村:日本ハムはやはり万波中正と清宮幸太郎の2人次第でしょう。清宮幸の三塁守備は怖くて見てられませんが……。
八木:個人的には和歌山県出身の3監督はもちろん応援しているけど、西武、楽天、ロッテのうち2球団はAクラスに入ると思う。
上村:いや、ソフトバンクは戦力が他球団と違いすぎますって。交流戦までは5割で十分です。
八木:いずれにしてもこのまま混パが続いて、5〜6ゲーム差以内に全チームがひしめき合うなんて事態になったら盛り上げるだろうね。
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文/八木遊
【上村祐作】
1980年生まれ。鹿児島出身。上京後、複数のスポーツ系アルバイトを経験したのち、野球専門誌で編集者兼アナリストとして従事。2013年から独立し、選手の技術本制作やウェブ媒体の執筆に携わる。可能な範囲で現場取材も行い、春季キャンプ期間の2月はほぼ沖縄にいる。
―[八木遊×上村祐作の野球雑談会]―
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。