八代亜紀さん「ヌード写真付きCD」を法では規制できない異常さ。“良心の通じない相手”に感情論をぶつけるよりも必要なこと

4

2025年04月29日 09:21  日刊SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

日刊SPA!

写真/産経新聞社
’23年に亡くなった歌手・八代亜紀さんについて、ヌード写真付きの追悼アルバムが4月21日に発売され、物議を醸している。写真は元同棲相手が撮影したもの。レコード会社の事前告知で注目が集まり、SNSでは「#八代亜紀さんの尊厳を守れ」というハッシュタグがトレンド入りするも、半ば強引に販売に踏み切られた形だ。作家の乙武洋匡氏は「倫理的に極めて許しがたい」としながらも、感情論を振りかざす以上に必要なことがあることを提言する(以下、乙武氏の寄稿)。
◆故人に肖像権やプライベート権はない?

故・八代亜紀さんのヌード写真付きCDがついに発売となった。このヌード写真は、私的に撮影されたものを「権利を取得した」と主張するレコード会社がCDに封入し、販売に踏み切ったことで話題を呼んでいる。ネット上には「故人への冒涜だ」「遺族が気の毒」「死者にも尊厳はある」といった批判があふれており、八代さんの出身地である熊本県八代市の中村博生市長までコメントを発表する事態にまで発展している。タワーレコードをはじめ、多くの流通会社がこの商品を取り扱わないという良心的な対応を取っていることが唯一の救いだ。

とはいえ、日本は法治国家でもある。「お気持ち」だけで物事が決まっていき、その結果として法が無視され、歪められていくことも避けなければならない。今回の件は倫理的には極めて許しがたいことであるものの、現在の法律に照らし合わせると、どのような判断が下されることとなるのだろうか。

現時点では故人に肖像権やプライバシー権はないという見方が一般的であり、今回の件もただちに違法であるとは言い難いのが現状のようだ。’14年に制定されたリベンジポルノ防止法に抵触する可能性もあるようだが、故人に対しても適用されるのかは意見が分かれるという。

◆感情論を振りかざす以上に必要なことは

「死後にヌード写真をバラまくなんて許せない」という感情論はSNSに限らず、多くのメディア報道にも見られる。

しかし大事なことは、「今後どのように法規制していくのか」であるはずだ。デジタルタトゥーを含め、ネット上に半永久的にデータが残ってしまう時代。そうした意味でも、今後「死者の権利」を法的にどう扱うのか、早急に議論する必要があるだろう。

私自身も著名人の端くれであり、自身の死後に私的な写真が“公開処刑”されるようなことは恥辱に耐え難い。しかし、この問題は有名無名に限らず、誰だって自分の死後に私的な写真が流出し、ネット上に出回るような事態は何としても避けたいと思うのだ。ぜひ国会での議論を期待したい。

【乙武洋匡】
作家・政治活動家。1976年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』が600万部を超すベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、小学校教諭、東京都教育委員などを歴任。「インクルーシブな社会」を目指し執筆や講演、メディアへの出演を精力的に行う

このニュースに関するつぶやき

  • 法の抜け穴をつく異常さは批判しないのでしょうか。原発事故では法無視の感情論を国全体で支持していることは良いのでしょうか。不思議
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(3件)

ニュース設定