映画『消滅世界』に出演する柳俊太郎(C)2024 air vision networks 俳優の柳俊太郎(※柳=木へんに舛)が、蒔田彩珠が主演を務める映画『消滅世界』(2025年秋公開)に出演することが2日、発表された。
【写真】グレーの世界にたたずみ…主人公・雨音を演じる蒔田彩珠
村田沙耶香氏による原作『消滅世界』は、累計170万部を超える芥川賞受賞作『コンビニ人間』直前の2015年12月に刊行された長編小説。超少子化の先にある「性」が消えゆく世界で激動する「恋愛」「結婚」「家族」のあり方に翻弄(ほんろう)される若者たちを描く。“常識”という枠の中でもがく現代の私たち自身を映し出した合わせ鏡のような作品となっている。
「日本の未来を予言する小説」と大きな話題となった同作を、国内外さまざまなアーティストのライブやミュージックビデオ、CM、ショートフィルム、大河ドラマのドキュメンタリーなど多岐にわたるフィールドで活躍する映像ディレクター・川村誠氏が脚本とともに映像化に挑む。独自の世界観を築いてきた映画的・音楽的感性を存分に活かして、本作では繊細かつ耽美な異世界観を追求。本作が長編映画の監督デビュー作となる。“村田ワールド”全開の最高傑作と呼び声の高い小説を、さまざまなジャンルの映像を手掛け着実にキャリアを積み上げてきた川村誠氏が、類まれな映像センスとオリジナリティあふれる演出で創造する。
柳は、主人公・雨音(蒔田)の夫・朔を演じる。12年5月に公開された「ヴァージン『ふかくこの性を愛すべし』」で俳優デビューを飾り、『クローズEXPLODE』(14年)、『東京喰種トーキョーグール』(17年)、『弱虫ペダル』(21年)、『バジーノイズ』(24年)など着実にキャリアを重ね、今年だけでもすでに『少年と犬』『#真相をお話しします』『九龍ジェネリックロマンス』の劇場公開映画へ出演している。20年12月に全世界配信されたNetflixドラマ『今際の国のアリス』では、原作で最も異彩を放つラスボスというキャラクターを、頭を剃髪して好演。昨年公開した『ゴールデンカムイ』(24年)で演じた二階堂兄弟もまた原作のキャラクターを完コピ。「憑依レベル」「キモい動作が完璧」などファンの間で絶賛の嵐になるなど、毎作品でさまざまな表情で魅了する柳は、令和を代表するカメレオン俳優の一人として数多くのクリエイターから絶大なる信頼を得ている。
柳は「読んだときに衝撃を受けた」と脚本と初めて出会った時のことを述懐。「人間」という言葉を使っていいのかどうなのか、といった疑問が浮かんでくる存在であり、優しくとても真面目なゆえに自分を壊していってしまうような、柔らかく儚い一面がある」と朔というキャラクターを分析。主演の蒔田についても「演じている時の姿と、撮影の合間に2人で話している時のゆるりとした姿とのギャップが、プロフェッショナルであり印象的」だとコメントを寄せている。
川村監督は柳について「朔という人物を、淡々と、そしてどこかミステリアスに演じていただける方を考えた時、真っ先に思い浮かんだのが柳さんでした」と起用理由を明かし、「蒔田さん同様、柳さんの存在なくして本作の実現はあり得ませんでした」と柳へ信頼を寄せた。また、新たな場面写真も同時に解禁。グレーを基調とした背景にたたずみ、柳がまとう空気感が物語る朔の心情とは。
【コメント全文】
■柳俊太郎(朔役)
初めて脚本を読んだのは5年半前でした。当時の自分にとってこのようなテーマは現在ほど身近ではなかったので、読んだときに衝撃を受けたことを強く覚えております。朔という人間は、ここで「人間」という言葉を使っていいのかどうなのか、といった疑問が浮かんでくる存在であり、優しくとても真面目なゆえに自分を壊していってしまうような、柔らかく儚い一面もあります。撮影は短い期間でしたので、あっという間に終わってしまいました。監督の演出は多くを語らずともしっかり寄り添っていただき、監督の頭の中の世界をみんなが共有していたように思います。主演の蒔田さんはとてもハードなシーンが多く大変だったと思いますが、演じている時の姿と、撮影の合間に2人で話している時のゆるりとした姿とのギャップが、プロフェッショナルであり印象的でした。この作品は川村監督の持つ独特な色とリズムを存分に感じられる作品になっていると思います。ぜひ劇場でご覧いただけたらと思います。
■川村誠氏(監督・脚本)
私たちの常識とはかけ離れ、それでいてもしかしたら有り得るかもしれない世界線で生きる朔という人物を、淡々と、そしてどこかミステリアスに演じていただける方を考えた時、真っ先に思い浮かんだのが柳さんでした。企画立ち上げ当初からお声がけさせていただき、制作が危ぶまれた時期も含め、長年本作に拘ってくださったことが、作品成立の大きな力となりました。蒔田さん同様、柳さんの存在なくして本作の実現はあり得ませんでした。撮影の頃には、役を完全に自分のものにして世界の同調圧力の中でグラデーションするように変容していく人間の内面を、極めてナチュラルに、そして静かな狂気をも感じさせる存在として見事に体現してくださり、作品のトーンを決定づけてくれました。本気でこんなことを言っているのか、その瞳の奥で何を考えているのか。そんな想像を掻き立てる柳さんの存在感と演技を、ぜひ堪能していただきたいです。
【あらすじ】
人工授精で子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為はタブーとされ、 恋や性愛の対象は「家庭の外」の恋人か、二次元キャラというのが常識に。そんな世界で「両親が愛し合った末」に生まれた主人公・雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。家庭に性愛を持ち込まない清潔な結婚生活を望み、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園(エデン)で一変する。