画像:Kōki 木村拓哉と工藤静香の娘であり、モデルで俳優の「Kōki,」(22歳)。2018年にファッション誌『ELLE japon』の表紙を華々しく飾りモデルデビューを果たした彼女は、超有名人である両親を持つがゆえなのか、何をしても賛否両論の大きな反響を集める存在です。
SNSやネットを通じて「七光り」「コネ」と厳しいバッシングにさらされることも多いKōki,。5月1日から後編が公開されている映画『女神降臨 Before 高校デビュー編/After プロポーズ編』では、演技経験がほぼない状態で主演に抜てきされたことに批判の声も上がりました。
しかしKōki,はこの映画における演技で、女優としての新たな可能性を感じさせる姿をハッキリと見せています。劇場で目撃した、その演技力と存在感に迫ります。
◆Kōki,演じる地味ないじめられっ子が女神になるまで
『女神降臨』は、全世界累計ビュー数が累計64億回を記録した、韓国発の大ヒットWEBマンガ(yaongyi著)の映画化作品。Kōki,が演じるのは、地味で冴えない容姿からいじめられ、不登校になってしまった主人公・麗奈。
ですが彼女はメイクとの出会いをきっかけに、ゼロからテクニックを学んで努力を重ねた結果、誰もが振り向く「女神」へと大変身。なりたい自分をあきらめない9年間のシンデレラストーリーです。そんな麗奈を奪い合う2人の同級生、“氷の王子”神田俊を渡邊圭祐が、“情熱的な御曹司”五十嵐悠を綱啓永が演じています。
◆映画の主演に「コネ使いすぎ」多くのバッシングも
世界的雑誌の表紙やブランドアンバサダーを華々しく務め、若くして突然脚光を浴びたKōki,。演技経験もほとんどないなかで2022年公開の映画『牛首村』への初出演・初主演が発表されたときは、批判の声も上がりました。「さすがにコネ使いすぎ」「演技を舐めている」と感じてしまった人が多くいたようです。筆者もその一人で、作品を観る気にはなれませんでした。
しかし同作で、彼女は第65回ブルーリボン賞の新人賞を受賞。その後も、映画『TOUCH/タッチ』(アイスランド・イギリス合作/米2024年、日2025年公開)で本木雅弘と親子役で共演したり、映画『Tornado(原題)』(アイスランド・イギリス合作/英2025年公開予定)に主演したりと海外作品への出演が続きました。そして、映画『女神降臨 Before 高校デビュー編/After プロポーズ編』への主演。「もしかしたらいい女優なのかな?」と興味をもつようになり、本作を視聴しました。
◆どうしても中央に置きたくなる存在感
観てみると「えっ嫌いじゃない! むしろいい!」と思いました。冴えないオタク女子が変身して「女神」と崇められる役どころは、モデルであるKōki,が演じることによって高飛車で嫌味に見えてしまう可能性もある。しかし彼女は、ヒロインがもつ内面を表現することによって、高い好感度のヒロインを創り上げていました。
ホラーが大好きでメイクも興味をもてばとことんのめり込む“オタク気質”な部分と、いじめられた過去をもつからこその“自信のなさ”。これらを自然な演技のなかで見せることで、見た目ではない魅力に惹きつけられます。本作鑑賞後に映画『牛首村』もチェックしましたが、高い演技力に驚かされました。
また父譲りのヒロイン気質であるとも感じます。これは彼女の性格的なことではなく“存在感”のお話。演技自体はとても自然なのに、どうしても中央に置きたくなる魅力が彼女にもあるのでしょう。鑑賞中、木村拓哉の演技を観ているような錯覚に何度も陥りました。顔が似ているということもありますが、大げさな演技をしている訳ではないのに、目で追わずにはいられない。そんな天性のヒロイン力をKōki,はもっていると思います。
◆脇役や敵役で実績を重ねれば大女優になるかも
とはいえ下積み期間がなく親の七光りで、いきなりヒロインになった彼女自身の好感度は高いとはいえません。どちらも、日本人にはあまり好まれない要素だからでしょう。俳優の渡辺謙を父にもつ杏は、それを明かさずにモデルとしてパリコレで活躍し、七光りを好感度に変えました。そんなエピソードがKōki,にはないのです。彼女の場合、あまりにも木村拓哉に似ているので隠せなかったかもしれませんが。
父・木村拓哉にもSMAPで売れずに苦労した期間があり、ドラマ『あすなろ白書』や『若者のすべて』の助演で人気を築いた過去があったように、Kōki,にも主演ではなく、ヒロインの親友役や敵役などの経験が必要なのではないでしょうか。
クランクアップや舞台挨拶の映像で涙を流す、まだあどけないKōki,の姿を見るに、彼女には彼女の苦悩があると察します。だからこそ演技の才能があるにしても、下積みに相当する期間が必要なように感じました。
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親の七光りから逃げることはできないでしょうが、彼女自身が映画と同じように“なりたい自分”に向かって、切磋琢磨する姿を見守りたいと思います。
<文/鈴木まこと>
【鈴木まこと】
日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間でドラマ・映画を各100本以上鑑賞するアラフォーエンタメライター。雑誌・広告制作会社を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとしても活動。X:@makoto12130201