ファイナルラップにストップし、コースサイドで顔を覆う井口卓人 2025スーパーGT第2戦富士 5月4日、スーパーGT第2戦『FUJI GT 3Hours RACE GW SPECIAL』の決勝レースが行われ、GT300クラスはUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIが優勝を飾ったが、ファイナルラップまでレースをリードしたのは、井口卓人/山内英輝組SUBARU BRZ R&D SPORTだった。しかし、ファイナルラップでまさかのトラブルが発生。ふたりのドライバーはレース後、悲痛な表情を浮かべた。
2024年はさまざまなトラブルに見舞われてきたSUBARU BRZ R&D SPORTは、捲土重来を期し2025年に向けて新車のBRZを投入し、オフシーズンから精力的にテストを続けてきた。迎えた第2戦富士では、公式予選で井口がQ1を突破すると、山内がQ2で2番手につけ、フロントロウからレースを戦った。
レース序盤から中盤にかけて、山内がスタートを担当したSUBARU BRZ R&D SPORTは、トップを走るD'station Vantage GT3を駆る藤井誠暢の背後につけプレッシャーをかけ続けていた。1回目のピットイン後も藤井、山内がスピードをみせオーバーテイクをみせると、D'station Vantage GT3がタイヤトラブルに見舞われた後はトップに浮上した。
終盤、緊急ピットインを行ったD'station Vantage GT3がふたたびトップに返り咲くことになったが、燃料が足りずピットへ。これで井口に交代したSUBARU BRZ R&D SPORTがトップに。好ペースで追い上げてきていたUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIを退け、2022年第4戦富士以来となる優勝を飾るかと思われた。苦しい2年間の戦いを続けてきたBRZにとって、ついにトンネルを抜ける歓喜の瞬間が訪れたかと思われた。
●「ショックが大きい」悲痛な表情の井口
しかし、グランドスタンドのスバル応援団の声援を受けながら突入したファイナルラップ、300R立ち上がりでSUBARU BRZ R&D SPORTは無情のストップ。またも勝利はお預けに、しかも今度はこれまでにない残酷なかたちで遠のいてしまうことになった。
このファイナルラップの状況について、ステアリングを握っていた井口は「まだ原因は分かりませんが、エンジントラブルだと思います。アドバンコーナーの立ち上がりで加速が鈍くなり、音もおかしくなってしまって。煙も上がったので、クルマを止めるしかありませんでした」と振り返った。
ふだんは明るい井口だが、このストップはさすがに衝撃が隠しきれない様子で、「終盤6号車に追いつめられましたけど、十分勝てるレースだったと思います。今回はちょっとショックが大きいですね……」と言葉も出ない様子だった。
「勝てるポテンシャルは見せられたのでは」と声をかけたものの、「でも、こんなことがあってはポテンシャルがいくらあっても繋がらないです。いろいろ考えなければいけませんね」と厳しい表情は変わることはなかった。
「きつい。本当に」と最後は言葉をしぼり出していた。
●「心の傷は結果でしか癒されない」
その様子をサインガードで見守っていたのが、レース序盤から好走をみせていた山内。「勝てたレースだったのかもしれませんが……。よく分からないです。正直。本当によく分からない」とこちらも悲痛な表情だった。
「(トラブルが起きたのが)あのタイミングだっただけで、本当はレースの途中にあったかもしれません。そう考えると難しいです。もちろんチームのみんなが振り絞って戦った中でのこの結果だと思いますし、努力も分かっているからこそ、キツいことは分かります。でも、やはり失ったものは大きいですし、正直もう(こういうトラブルは)お腹いっぱいです」
ただ、レースの悔しさはレースで晴らすしかない。また勝利のための努力を続けていくしかない。山内は「やるしかないですし、落ち込んでも始まらないです。心の傷は結果でしか癒されないと思うので、もう頑張るしかないです。それが今の率直な思いです」となんとか顔を上げた。
「残り半周足りなかったですが、あのエンジンも頑張ってくれたのかな、とも思います。でも、やっぱりお腹いっぱいですね。また頑張るしかないです」
[オートスポーツweb 2025年05月04日]