2番手まで順位を上げたものの、第3スティントでのタイヤ選択が明暗をわけてしまった8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT。 富士スピードウェイで行われたスーパーGT第2戦決勝。GT500クラスでは、スティントによって各車のペース差が顕著に現れ、au TOM’S GR SupraやSTANLEY CIVIC TYPE R-GTのように順位を上げてゴールしたチームもあれば、序盤は力強い走りを見せていながらも、結果に結び付かなかったチームもあった。
その中でも表彰台の可能性が見えながらも、レース中に急激なペースダウンや順位を下げてしまった3台に、何が起きていたかを聞いた。
⚫︎バトルで大きな代償を受けてしまった19号車WedsSport ADVAN GR Supra阪口晴南
前日の公式予選では僅差でポールポジションを逃したWedsSport ADVAN GR Supra。決勝は2番グリッドから国本雄資が第1スティントを務め、序盤は2番手をキープする走りを披露。スティント後半になって、ポジションを落とす場面もあったが、4番手の状態で阪口晴南にバトンタッチした。
第2スティントに入ってからも順調に走っていたが、53周目に緊急のピットインをすることとなった。それまでは順調に走っていた19号車に何が起こったのか。
「100号車(STANLEY CIVIC TYPE R-GT)とコカ・コーラコーナー手前で当たってしまって、右フロントタイヤをカットしてしまいました。それでのピットインでした」と阪口。ちょうど100号車STANLEYが後方から迫ってきていたタイミングで、バトル中にわずかな接触があったという。
その緊急ピットインが痛手となり、最終的に14位でのフィニッシュとなった19号車Weds。ただ、仮にそれがなかったとしても、全体的には課題が残るレースだったと語る。
「ファーストスティントで国本(雄資)さんがすごく耐えてくれたのですけど、ラスト5周くらいで厳しくなりました。自分のスティントも後半で厳しくなって、全力を出し切れない状態になってしまっていました。そこは改善する余地が、たくさんあるなと……。予選が良かったことはすごくポジティブでしたけど、決勝は決勝で問題が出たかなと思います」
特にスティントの後半にかけてのタイヤのグリップの“落ち”が気になったようだ。
「タイヤを変えた直後は、前についていけそうな良い雰囲気がありそうでしたけど、その後に関しては優勝したチームなどとはスティントの後半が速かったので……あそこを目指さないと『強い』とは言えない。また改善しないといけないなと思います」と阪口。レース後もヨコハマタイヤのエンジニアたちと、長時間にわたってミーティングを行なっていた。
19号車と阪口にとっては、開幕戦の岡山でも8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTとの接触によって実質レースを終えてしまっていたため、2戦連続での不本意な結果となってしまった。
⚫︎直前まで悩んだタイヤ選択。8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT 松下信治
4番グリッドからスタートしたARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8。野尻智紀がダブルスティントで約2時間走り、GT500の中でもっとも早いピットタイミングでアンダーカットに成功し、中盤では2番手に浮上してトップの38号車KeePerを追いかけた。
そのまま表彰台圏内は手堅そうな走りをみせていたが、野尻から代わった松下信治が乗り込んで最終スティントが始まると状況は一変。まったくペースが上がらず、次々と後続のライバルに抜かれていく展開を強いられた。
これについて「何か大きなトラブルがあったということではなくて、タイヤ選択を外したのが大きく影響したのかなと思います」と松下。
「(最終スティントは)気温が下がってくるだろうと予想して、それに対応したタイヤを履いたのですけど、ピットアウトからウォームアップして、プッシュしたら『あ、これはヤバい。早く気温が下がって!』と思いながら走っていました。最初の2スティントが良かっただけに、もったいないですね」
実は最終スティントに向けて前半2スティントで使ったのと同じ種類のタイヤも選択できた状況だったとのこと。
タラレバにはなるが、もし同じ種類のタイヤを履いていたら「たぶん、(2位表彰台は)行けたんじゃないかなと思います。僕が乗った1時間くらいのスティントのうち、最初の40分くらいは、その(第2スティントまで使っていた)タイヤの方が良かったです」と松下。
「結果論ですけど、マージンもあったので、無理に(タイヤの種類を)変える必要はなかったのかもしれないです」
チームと共に判断した結果、ということを受け入れようとしていた松下だが、課題は少なからず感じている様子。
「トヨタ勢では、同じようなレンジのタイヤを使えていたところもあるらしいので、その辺は詳しく調べて、どうやったらそこに近づけるか……。(8号車は)一発は割と出ると思いますけど、レースでは負けている感じがあります。ちょっとした(温度レンジの)外しでこうなってしまうのは良くないので、ドライバー含めて精度を上げたいなと思います」と語った。
⚫︎アンダーカットを狙ったもののペースダウン。3号車Niterra MOTUL Z 佐々木大樹
ニッサン陣営で最上位となる5番グリッドからスタートしたNiterra MOTUL Z。序盤は5番争いを展開し、アンダーカットを狙って36周目に1回目のピットストップを済ませた。三宅淳詞がダブルスティントで臨んだ中盤では、1号車auの山下健太を攻略しようとするが、前に出ることはできず。そこから後手を踏む展開が始まり、最終スティントでは順位をズルズルと落として、最終的に10位でレースを終えた。
「セカンドスティントから調子は良くなかったです」
そう語るのは、最終スティントを担当した佐々木大樹。なかでもポジションを下げるきっかけとなったのが、第2スティントで1号車auを攻略できなかったことだという。
「僕たちは早めにピットに入って、アンダーカットはできていたのですけど、セカンドスティントでは1号車のペースが上がらなくて、そこに詰まってしまったのもあります。加えて(3号車も)ペースが良くなくなっていって、後ろのライバルたちに全部詰められて、最終的にポジションが落ちてしまいました」
「やっぱり3時間レースだと、ピットに入るタイミングで給油量が違うので、セカンドスティントでだいぶギャップを失ってしまったかなというところはありました」
さらに、佐々木が担当した最終スティントでも状況は改善しなかったという。
「三宅選手の時と症状が同じで、リヤのグリップ不足でセクター3がうまく走れませんでした」と、佐々木。
「自分たちの中では、そこまでソフト側だと思っていなかったのですけど、やっぱり他車が選んでいたものが、どちらかというとハード側の方が多かったので、そういう部分で厳しいところもあったのか……いずれにしても、今日は速さが足りなかったのかなと思います」と、肩を落としていた。
[オートスポーツweb 2025年05月05日]