写真「ごきげんよう」から始まった、2025年4月21日(月)放送の『彬子女王のオールナイトニッポンPremium』。聴く側も背筋が伸びるような約2時間でした。
彬子女王殿下(以下、彬子様)のファンの一人として拝聴するのを楽しみにしていた貴重な機会。番組内で貴重な音源が公開されましたが、お父様であらせられる寛仁親王殿下、お祖父様の三笠宮崇仁親王殿下もニッポン放送のラジオにご出演された過去があったとのこと。彬子様が出演されるのも自然ななりゆきで、DNAに刻印されていたのかもしれません。
◆「ございます」「わたくし」自然に使われていて耳から浄化されそう
それでも依頼された当初は、話すことは決して得意ではないのとのことで悩まれて、事務官たちにご相談。「これはお受けになったほうがよろしいのでは」と背中を押されて引き受けたとのことで、「快」諾、ではなかった、と強調されていました。
それにしてもラジオごしのお声は、上品で穏やかで癒しの力を感じさせます。「ございます」「わたくし」という言葉が自然に使われていて、耳から浄化されそうです。
ゲストは彬子様と親交がある歌舞伎俳優・中村勘九郎氏と落語家・立川志の八師匠。歌舞伎や落語の話題や、ベストセラー「赤と青のガウン」のエピソード、日本ラグビー協会名誉総裁でいらっしゃるのでラグビーの話題、日本の伝統文化を伝える「心游舎」のご活動について話されるなど、文化と教養が詰まった約2時間でした。
◆彬子女王のすべらない話、皇室ならではの名前ネタも
まじめな話だけではなく、「彬子女王のすべらない話」や意外な一面を感じさせるエピソードもありました。
序盤で話されたのが、大英博物館でレクチャーを受けられたときの名前表記にまつわるお話。受講者リストにお名前がなく、受付の人に「お名前ちょうだいしてよろしいですか?」と聞かれた彬子様。「彬子女王」と伝えたら「JOEでよろしいですか」と確認されてしまったとのこと。
「矢吹ジョーのジョーですね」「『立つんだジョー』になったという彬子女王のスベらない話ですね」と、彬子女王がお好きなカルチャーである、漫画になぞらえる立川志の八師匠。
ネットで買い物をされるときの名前表記についての具体的なお話もありました。ここまで公開してしまって大丈夫なのか心配になります。
彬子様は、皇族ならではの名前ネタを一般向けにお話しくださる貴重な存在です。
◆留学当初の孤独エピソード、庶民としても共感
また、オックスフォードにご留学されたときのお話も印象的でした。
日本のプリンセスなので、きっと人がどんどんとりまいて孤独を感じられることはなさそうだと思っていたのですが、入学当初は孤立されていたという彬子様。幼稚園からずっと学習院で、知らない人たちの中でお友達を作る経験をされてこなかったので、どうやって話しかけて良いのかわからなかったそうです。
でも、孤独を感じたある日、3年生のベネディクトという友人がお茶を飲まないか声をかけてくれたことがきっかけで、少しずつ学校に溶け込まれたとのこと。ベネディクトも当時3年生で将来が不安になっていたところ、彬子様との交流で落ち着いて学校生活を送れるようになりました。
後に、ベネディクトは「お互い魔法をかけ合うような出会いだったのかもしれないね」と回想。さすが英国屈指の名門の学び舎、例えも詩的で上品で、イギリスならではの魔法の表現も素敵です。彬子様でもはじめての環境で孤独を感じられることがある、というエピソードは、庶民としても共感とともに励まされる思いです。
他にも、漫喫の会員カードを作られて何度も利用されている、というお話や、神社での相川七瀬氏のライブでノリノリになられてタオルを振り回されたお話など、親近感を覚えるトークが繰り広げられました。
◆100円ショップでキッチングッズご購入と知ってホッ
「100円ショップとか行かれるんですか?」という質問に対して「100円ショップ、行ったりします」とお答えになられたのは意外でした。「結構キッチングッズは100円ショップで買ってるのが多いかもしれないです」とのことで、具体的には「菜箸(さいばし)とか、ゴマをするすりこぎとか、タオルをかけるためのフックとか」を買われているとのこと。
彬子様は「心游舎」で次世代の子どもたち向けに、日本の伝統文化や本物を知ってもらう活動をされていて、プラスチックの器ではなく、焼きものやガラスの器を使ってもらうことの意義深さをラジオでもおっしゃっていました。なのできっと家にある食器やキッチングッズも、漆(うるし)塗りや高級な陶磁器ばかりなのでは、と思っていました。
それが100円ショップでもキッチンアイテムを買われていると知って、少しホッとしました。彬子様のライフスタイルに憧れている者の一人として、100均やスリコに行きまくっていることに一抹の後ろめたさを感じていたので……。
今回のお話で、彬子様がどんどん利用して良い、と太鼓判を押してくださったかのようです。でも、固有名詞を出さないのがさすが皇族のリテラシー。皇室御用達100円ショップは、ダイソー、セリア、キャンドゥ、ワッツのどれかまではわかりませんでした。
◆「オールナイトニッポン」月曜の呪いを止められた
心温まるお話や楽しいエピソードなどであっという間だった2時間。終盤にはお祖父様の崇仁親王殿下、お父様の寛仁親王殿下が過去にラジオに御出演されたときの貴重な音源もオンエアされ、歴史的な一夜となりました。
そのあと、「オールナイトニッポン」の月曜日の呪い、という不穏なニュースがネットに流れていました。なんでも、伊藤健太郎、フワちゃん、永野芽郁などが月曜のパーソナリティーとして出演し、トラブルやスキャンダルを起こして世間を騒がせたことで、月曜日は呪われている説が囁かれているそうです。
でも、今回月曜日の夜に彬子様がご出演されたことで、その呪いを止められたように思います。彬子様の気品と皇室オーラで、これまでのスキャンダルのカルマが清められました。そういう意味でも、やんごとなき方がメディアにご出演されることは、社会に良い影響があると思わせられます。
「ごきげんよう、またいつか」で締めくくられた特別番組。また日本のメディア界を浄化してくださることを祈ります。
<文・イラスト/辛酸なめ子>
【辛酸なめ子】
東京都生まれ、埼玉育ち。漫画家、コラムニスト。著書は『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)、『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校育ち』(筑摩書房)など多数。