参院選に向け全国遊説をスタートさせた公明党の斉藤鉄夫代表=4月26日、神戸市 公明党が自民党に対し、消費税減税に向けて圧力を強めている。夏の参院選で苦戦が予想される中、与党内で独自色を出すのに躍起。だが、自民から賛同を得られる見通しは立っておらず、党内には不満や不安が渦巻いている。
「必要な減税、給付も検討対象にすることを自民と確認した」。公明の西田実仁幹事長は7日の記者会見で、同日朝の自公幹事長会談で参院選前に経済対策を策定する方針で一致した際、減税と給付も議論するよう自身が迫り、自民側が受け入れたことを明らかにした。
公明は斉藤鉄夫代表が大型連休前の先月26日に始めた参院選全国遊説で、トランプ米政権の高関税政策などを踏まえた経済対策の訴えに重点を置いた。石破茂首相が同30日、訪問先のフィリピンで「新たな経済対策を考えているわけではない」と火消しを図った後もトーンを変えていない。
幹事長会談では資料を用意し、食料品の消費税率(8%)は軽減税率が適用されてもなお諸外国と比べ「高い現状にある」ことなどを列挙した。さらなる税率引き下げに狙いがあるのは明らかだ。
立憲民主党をはじめ主要野党が消費税減税で足並みをそろえ、埋没への焦りが強まったことが背景にある。国政選挙と並ぶ「政治決戦」と位置付ける6月22日投開票の東京都議選も、勢いを維持する国民民主党や新たに参戦した地域政党「再生の道」の存在を考えると楽観できない。ある公明幹部は「情勢はかつてないほど苦しい」と話す。
先月24日、公明は自民旧安倍派の裏金事件に関わった参院選3候補に推薦を出すと決定。これに対し、党所属の有力都議がSNSで「先の衆院選の反省が全く生かされていない」と表明するなど各地で異論が相次いだ。
「団結第一」を掲げる公明としては異例の事態に、国会・地方議員ら3000人以上が参加したオンライン会議を1日夜に緊急開催。2日明け方近くまで続いた討議では「政治とカネ」の問題を巡る自民批判などが相次ぎ、斉藤氏ら執行部は「必ず首相に伝えます」と釈明に追われた。
ただ、消費税減税に関しては、高齢化の進展に伴う社会保障費の増大に「逆行する」と懸念する声が党内にもある。自民幹部は「経済対策を検討する際には全てのメニューを並べるが、実際に食べるかどうかは別だ」と慎重姿勢を崩さない。
「消費税減税をやると決めたわけではない」。確たる見通しのない状況に、公明幹部は早くもこう予防線を張った。