父は有名俳優、母は伝説的バンドのボーカル…岸谷蘭丸が明かす“2世”としての葛藤「親からも『すごいのはお前じゃない』と言われて育った」

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2025年05月08日 10:30  日刊SPA!

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岸谷蘭丸
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
 父はトップ俳優の岸谷五朗、母は伝説的バンド「プリンセス プリンセス」のボーカル・岸谷香──。

 そんな“濃いDNA”を持ちながらも素性を隠し、地道に発信を続けてきた岸谷蘭丸。誰もが羨む道を歩んできたと思いきや、人知れぬ葛藤があったと彼は言う。

 病気、不登校、孤独な留学、そして“親ガチャ”の光と影……。

◆芸能人2世としての告白、反響と戦略

 切れ味のある発信力で、スターの両親に引けを取らない存在感を放つ岸谷蘭丸。

 現在はイタリアの名門・ボッコーニ大学に在籍しながら、海外大学受験に特化した塾「MMBH留学」を立ち上げ、留学支援活動にも力を注いでいる。

 わずか23歳にして「恵まれた環境だからこそ、見える景色がある」と語るそのまなざしには、すでに達観の色がにじむ。そんな彼の目に、今の世界はどう映っているのか──。

──芸能人2世であると明かしたことで、反響はありましたか。

岸谷:叩かれるかなと思ったんですが、意外と好意的なコメントが多くて安心しました。いきなり「2世です」と言って登場したわけじゃなくて、そのずっと前から「柚木蘭丸」として発信し続けていた土台があったからこそ、そういう反応もいただけたんだと思います。

──その辺りは戦略的に考えていたんですか?

岸谷:すでに週刊誌で親については報道されちゃってたんで、自分の口からどのタイミングでどの媒体で公表するかはずっと考えてましたね。あくまで自分のコントロールが利く範囲に露出を抑えたかったから、そういう意味では理想的な案配だったのかなと思います。

◆芸能界に進まなかった本当の理由とは?

──ご両親を見て、芸能活動に興味を持つことはなかった?

岸谷:気づいたら「これは自分の道じゃないな」と思うようになっていましたね。

 その分野で親を超えることは無理だし、親からもむしろ「すごいのはお前じゃない。勘違いしたらいけないよ」と言われてたし、親の威を借りるのはみっともないという意識で育てられたんで。

 ただ両親の存在が、プレッシャーになることはたくさんありました。僕が何か失敗したら周りは「ほらやっぱり2世なんて甘やかされて育ってるから」と好き勝手言うわけじゃないですか。成功するのは親の力があるから当たり前。失敗すれば喜ばれる。

 全然ゆるふわ人生じゃなかったですよ。

◆難病がもたらした言語力の成長と生存戦略

──SNSでもメディアでもトピックに対して自在に言語化されている印象ですが、昔から?

岸谷:気持ちを表現するのは小さい頃から得意なほうでした。僕、3歳から4歳の頃に若年性リウマチという難病にかかって、入退院を繰り返していた時期に暇すぎて本ばかり読んでいたんです。

 そのおかげで言葉を多く吸収できたのかもしれない。母親が本だけは何でも買ってくれて、『はらぺこあおむし』から始まり『人間失格』などの純文学まで浴びるように読みました。

 病気で運動もあまりできなかったし、勉強もすごくできるわけではないから、言葉の力を借りて「面白くて賢そうに見える人」というキャラに全振りしてましたね。それが学校生活での生き残り戦略だったというか。

──その特性はどのように発揮できた?

岸谷:困難な状況を伝えて、事態を克服できたことはたびたびありました。

 たとえば恥ずかしい話ですが、アメリカの高校に留学中、彼女と別れたショックで学業と日常生活に支障をきたした時期があって。

 それで学校主任やカウンセラーに呼び出されたときに、「こういう点を理解してサポートいただければ、また勉強に向き合えると思うのでお願いしたい」と話したことで復帰に繋げられました。

──気後れはなかった?

岸谷:なかったですね。自分を含めて誰かが我慢して成り立つ環境は持続しないと思ってるんで。持続可能な在り方、つまりサステナブルであることを昔からすごく意識していました。

◆アメリカは多様性の国じゃない

──ほかにもアメリカでの経験はどう生きていますか?

岸谷:英語が嫌いだったんですが、留学して圧倒的成果を残すことが目標だったので、その手段として必死に習得したことを通じて精神的にタフになりましたね。

 さらに帰国後、専門の塾で英語の構文をしっかり学んだせいか日英問わず、言葉の組み立て方が得意になりました。SVOの概念を日本語に乗せて、より明瞭なアウトプットができるようになった気がします。

――アメリカは多様性の国じゃないともおっしゃっていますよね。

岸谷:特に若い白人男性は“白人らしさ”や“男らしさ”にすごくとらわれていて、それをいかに証明して男社会を生き抜くかに躍起になっている。

 彼らにとってそれは重要なアイデンティティになっていて、僕みたいに「髪が長く化粧をしているが、異性愛者のアジア人男性」という存在は、ラベリングに頼って他人を理解しようとするアメリカ社会の中では異質な存在として扱われることもありました。

──その経験から改めて日本を見つめてみて思うことは?

岸谷:日本ほど外見や表現に寛容な国はないと思います。好きな格好ができるし、男がメイクしていてもそれほど変に見られない。

 ただ、学校教育には画一的な部分が根強いですよね。僕、病気の影響でずっとステロイドを飲んでいたから体育座りするとすごく腰が痛むんですよ。

 それを説明しても教師に体育座りを強制させられたときは、なんて不当なんだ!って思いましたね。そういう非効率的で意味のないことを強いられる場面が多い。

 それでもっと生徒自身が、それぞれの意見を適切に言語化できるような教育が必要なんじゃないかと思います。

◆“上の世代”とズレを感じることも

──そうした感覚は、親世代など“上の世代”とズレを感じることもありますか?

岸谷:そうですね。僕の親世代くらいって、まだ白人に対してコンプレックスがあったり、「こうあるべき」みたいな価値観が強かったりする人も多い。でも今の時代は、もっとフラットに自分を表現して生きたほうがずっと自由になれると思う。

──ちなみに、SPA!の読者層でもある“おじさん世代”にはどんなイメージがありますか?

岸谷:おじさんって、なんとなく社会全体で腫れ物扱いされてるじゃないですか。でも僕、嫌いじゃないんですよ。一緒にタバコ吸ったり酒飲んだりすると楽しいし、普通に可愛がってくれる(笑)

 だから、おじさんも若者をそんなに恐れないでほしいんですよね。結局、僕らもおじさんたちが若かった頃と大して変わらないので。

◆「BOT化」するSNS上の発言

──公に発信するときに心がけていることはありますか。

岸谷:“リアル”でいることですかね。見えを張らずに正直に、というのを昔から大事にしています。欲もしっかり表に出していくし、自己アピールもする。

 欲を隠してるヤツってなんか気持ち悪いじゃないですか。あとは生産性のない攻撃をしないこと。SNSのコメントってほぼBOT化してないですか?

──BOT化とは?

岸谷:誰かをなぞっているだけの発言が多いし、コメントの先に生身の人間がいることを想像できていない人が多いなって。

 匿名でも双方向のコミュニケーションであるべきだし、僕はどれだけいろいろ言われたとしても、相手の見た目など、変えようのない部分を否定したり、叩いたら本気で傷つけてしまいそうな人は攻撃しないことを心がけてるんです。

 本来はめちゃくちゃ噛みついちゃうタイプなんですけど、そこは自制を利かせてます(笑)

◆喧嘩を売られても「買わない」

──でも売られた喧嘩を勢いで買っちゃうときってないですか。

岸谷:ありますよ。でも僕がもし何かやらかしたら親が積み上げてきたものも台無しになって、家族全員が路頭に迷うことになる。だから、反抗心はあっても倫理的にブレーキをかけてるんです。その感覚は幼少期からずっとあります。

──すごく繊細に発信をコントロールされているんですね。

岸谷:そうですね。人と違うことをするんだったら、人の5倍は繊細じゃないといけない。

 発信とは、世間に向かってボールを投げたときにどんな跳ね返りが来るか常に調整しながら行う壁打ちだと思ってます。

 かといって守りに入るのではなく、どのラインまで攻めたら大丈夫か、感度は常に高く保っていたい。だからエゴサもするしコメントもしっかり見ますよ。一種の情報収集というか。

◆「親ガチャ成功」のコメントに対して

──なかにはねたむようなコメントもあるんじゃないですか?「親ガチャ成功しただけだろ」みたいな……。

岸谷:実際、恵まれた環境で育ったと自覚しているし、ラッキーだったことは間違いないので、そりゃそう思うよなと受け止めてます。

 でも僕、「ノブレス・オブリージュ」という言葉が好きで。人生は不平等だし、実際に僕自身も病気で障害者手帳を持つ「かわいそうな子」側にいたこともあって、どちらの気持ちもわかると思っています。

 だからこそ、社会にポジティブな影響を与える存在になりたい。

──将来は「政治家になりたい」とも発言していますよね。

岸谷:はい。当面の目標は、40歳までに都知事になることです(笑)

 ただ、僕は何かのプロフェッショナルではないし、法学部ですらないんで、正直細かい政策はまだ考えていなくて。でも日本を愛する若者の一人として、パブリックスピーカーとして日本を良くしていきたい思いは強いです。

 あとは普通に、温かい家庭を持ちたい。若者は結婚や子育てに消極的だと思われがちですけど、僕は愛こそが人生の本質だと思ってるんで。

 そして、仕事でもなんでも一生懸命取り組んで社会に尽くして、かっこいい大人になりたい。暇なのが一番辛いので、ずっと走っていたいですね。

【Ranmaru Kishitani】
’01年7月7日、東京都生まれ。両親は俳優・岸谷五朗と歌手・岸谷香。’21年、「柚木蘭丸」名義でSNSにて発信を開始。’23年、留学向け英語を指導する専門塾「MMBH」を設立。イタリアのボッコーニ大学在学中。『Nスタ』(TBS系列)のコメンテーターに抜擢

取材・文/片岡あけの(清談社) 構成/安羅英玉(本誌) 撮影/杉原洋平 ヘアメイク/三浦 遥

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

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