
『パディントン 消えた黄金郷の秘密』(5月9日公開)
ロンドンに住むくまのパディントンは、「老グマホーム」で暮らすルーシーおばさんに会いに、ブラウン一家と共に故郷のペルーへとやって来た。しかしルーシーおばさんは、眼鏡と腕輪を残して行方不明になっていた。パディントンたちはルーシーおばさんが残した地図を手がかりに、インカの黄金郷があるというジャングルの奥地へと向かうが、そこにはパディントンをめぐる“ある秘密”が隠されていた。
イギリスのマイケル・ボンドによる児童小説を実写映画化した「パディントン」シリーズの第3作。今回はロンドンからパディントンの生まれ故郷である南米ペルーに舞台を移し、大切な家族を探しながら繰り広げる大冒険を描く。監督はドゥーガル・ウィルソン。
前2作に続いてベン・ウィショーがパディントンの声を担当し(日本語版は松坂桃李)、ヒュー・ボネビルがブラウン家の父ヘンリー、マデリーン・ハリスが娘ジュディを演じる。母メアリー役は前作までのサリー・ホーキンスに代わり、エミリー・モーティマーが演じた。
このシリーズの見どころの一つは、過去の映画のパロディー場面。今回も『アフリカの女王』(51)『インカ王国の秘宝』(54)『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)『メリー・ポピンズ』(64)『サウンド・オブ・ミュージック』(65)『天使にラブソングを…』(92)『マトリックス』(99)『キングスマン』(14)など目白押し。
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また、初作のニコール・キッドマン、2作目のヒュー・グラントに続いて、この映画ではアントニオ・バンデラスとオリビア・コールマンがパディントンと絡む。バンデラスでいえば主演作『デスペラード』(95)のパロディーまで用意されている。大物俳優たちがこうした映画に出て喜々として敵役をやっているのも面白い。
エル・ドラド(黄金郷伝説)に家族の絆を絡める展開にあまり新味はないが、パディントンの愛らしさが全てを救う。エンドロールでは“あの男”が再登場するサービスもある。
『サンダーボルツ*』(5月2日公開)

CIA長官のヴァレンティーナ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)から命を狙われた者たちや、不遇な立場にいるならず者たちが「サンダーボルツ*」というチームを結成する。メンバーは、バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)、ブラック・ウィドウの義妹エレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー)、ジョン・ウォーカー/U.S.エージェント(ワイアット・ラッセル)、アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアン(デビッド・ハーバー)、エイヴァ・スター/ゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)。だが、彼らの前に謎の強敵ボブ(ルイス・プルマン)が現れる。
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マーベルコミックのヒーローたちが活躍するマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の各作品で悪役やならず者として登場したキャラクターがチームを結成し、己の過去と対峙(たいじ)しながら世界の脅威に立ち向かう姿を描いたアクションエンターテインメント。これまでのMCU作品でそれぞれのキャラクターを演じてきたキャスト陣が結集した。
監督はジェイク・シュライアー。脚本は『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17)や『ブラック・ウィドウ』(21)などのエリック・ピアソン。
ライバルであるDCコミックの『スーサイド・スクワッド』(16)を意識したような本作は、マーベル版のスーパーヴィランチーム結成の様子を描いているのだが、実は負け犬ヒーローたちの敗者復活戦であり、心の傷や暗い過去からの再生劇でもあるところが新機軸。“裏アベンジャーズ”という言い方もできる。コミカルなところもあるが、バラバラだった彼らが人助けに喜びを見いだし団結していく姿は感動的だった。
また、MCUの映画はよく懐メロを流すが、今回はスターシップの「愛はとまらない=Nothing's Gonna Stop Us Now」だった。この曲は『マネキン』(87)の主題歌でもあった。
さて、この後は本家である『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(25)以後の世界とリンクしていくのだろうか。まさにMCUの世界は無尽蔵。楽しくはあるが、付いていくのに苦労する。
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(田中雄二)