【漫画】交通事故で空手を諦めた少年を救ったのは書道だったーー『清冽 水の如く』が描く希望

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2025年05月10日 08:00  リアルサウンド

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『清冽 水の如く』(松並香葉)

 作者の好きが詰め込まれた漫画は、作者の筆が乗っているからなのか、より登場人物が活き活きしているように感じる。4月上旬にXに投稿された『清冽 水の如く』は、作者の挙げたらキリがないほどの好きが詰まった作品だ。


 高校生の雄大は亡き母の故郷で父親と2人暮らしすることになる。1人で新居を目指すが、慣れない土地のために早くも迷子になっていると、土手で足を滑らせて川に落下しそうになる。そんなところを、書道教室を開いている謎の男・大護守に助けられ、なぜか教室まで連れて行かれ――。


 本作の作者で、商業漫画家としても活躍している松並香葉さん(@KouyouMatsunami)に制作背景など話を聞いた。(望月悠木)


参考:【漫画】『清冽 水の如く』を読む


◼︎自身のグッと来るものがてんこ盛り


――本作はどのような経緯で制作されたのですか?


松並:デビューするキッカケとなった『冴えて懐か』という作品があるのですが、その作品をベースにしています。『冴えて懐か』はあまりキャラ設定が一般向けではなくニッチな感じだったので、当時の担当さんに「商業は難しい」と言われていたんです。それをなんとか内容をいじり、一般の方にも読みやすいように自分なりに変えたのが本作になります。


――「やりたいことを見失っていた青年が書道と出会う」といった設定などはどのように決めていったのですか?


松並:自分がグッとくるものや言葉、概念から決めていきました。爽やかな風、清冽な水の流れ、全てを失ってもまだ心に灯る火、有限の時間を生きる、木漏れ日、愛すべき毎日、他人との比較や葛藤など、挙げたらキリがないくらいにグッと来るものがあり、それらを漫画にした感じです。


――雄大がかつて熱中していたものとして「空手」を、そして変わるキッカケになるものとして「書道」を選んだ理由は?


松並:自分は幼稚園の時から書道をずっとやってきて、大学では専門的に学び、卒業後も高校で芸術科書道の教員もやっていました。ですので、“書道が未経験の才能がある子”という主人公を作りたかったんです。そこで、奥の深さや集中力や姿勢や動きのキレなんかが書道と通じるところがあると思い、感覚的にしっくりきたので元空手家という設定にしました。スポーツマンが文化系にいくのも個人的にエモさがあります。


――書道の専門家でもあったのですね。


松並:そうですね。その知識で本作を描いています。書道家だったのですが今は漫画家になっているのってなんだか面白いですね。


◼︎気になる続編は


――雄大というキャラはどのように作り上げましたか?


松並:クールというかサイレントで中身でぐるぐる考えている男子が個人的に好みだったので、雄大というキャラが生まれました。キャラデザはでかくてやる気なさそうな顔をしていてとっつきにくそうな感じで……自分の趣味でできたような主人公です。


――一方、大護守は?


松並:もはや人ではなさそうな人物にするため、見た目や設定なども仙人のようにしてみました。「どうして希死念慮があるのか」「不思議な力があるのか」など設定も固まっているのですが、物語を続けられるのかは謎です……。


——Xでも「反応が良ければ続きを描きたい」と投稿していますが、続編制作の予定は検討されていますか?


松並:いや…ぜひとも…できれば商業で続編制作をさせていただきたいところです。ただ、今のところお蔵入りが濃厚な気もしますね……。気に召された編集さんがいましたら連絡ください!


――『清冽 水の如く』以外で言えば、どのように創作活動を進めていく予定ですか?


松並:今連載しているコミカライズ『日常ロック』(KADOKAWA)をもっと盛り上げていけるよう、作画担当として努力していきたいです。その一方で、自分で作った漫画のキャラたちが単行本になったり声を当てられたり動いたりなど、「そんなことが将来あったら嬉しいな」とは思っています。また、文字を書いて収入を得ること“筆耕”を主題とした漫画のネームも作成しているので、そのうちどこかで公開できたらいいな!


(文・取材=望月悠木)



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