
京都府在住の30代女性・Iさんは、車いすユーザーだ。
車いすを使っての生活は、簡単なものではない。周囲の人々に何度も助けられ、同時に、心無い言葉を投げかけられることもあったという。
そんな経験が積み重なり、彼女は外へ出かけることに抵抗を感じるようになって......。

いろんな経験が積み重なって...(画像はイメージ)
<Iさんからのおたより>
私は外出時、車椅子を使用しています。
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30歳へのカウントダウンが始まったころ、突然手足などに違和感を覚えて受診。
入院や通院を重ねましたが、原因や治療法は明確にはならず、回復の目処が立たないまま歳月が流れ、数年後、自力での歩行が難しくなったため車椅子を導入することになったのです。
車いすで出かけると、見ず知らずの人たちが...
車いす生活になってから、見ず知らずの方の温かいご親切に幾度となく助けられてきました。
決して当たり前ではないそのお心遣いに、申し訳なさと感謝とが入り混じった複雑な気持ちを抱いていました。
同時に、一歩外に出れば誰かの通行を邪魔していないか不安が付き纏うようになり、その不安を、出先で時折向けられる心無い言動や、車いす生活という現実に未だ理解が追い付いていない自身の感情が後押しし、いつしか外出に抵抗を感じるようになっていました。
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慣れない車いす生活に苦悩(画像はイメージ)
そんな中、母の日を目前に控えたとある平日、私は母をランチに誘いました。
もちろん外出への抵抗が無くなった訳ではありません。
それでも、私がどんな状態になろうといつも傍で寄り添い、良い意味で特別扱いせず、自分の時間や身を削って日々精一杯支えてくれる母に、ささやかなお礼がしたかったのです。
お店は、府内最大の駅から大きめの横断歩道を渡った先にある、ホテルのレストランにしました。
食事を終えた後、少し駅の方に行こうという話になりました。
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横断歩道の前で信号待ちをしていると...
その日は雨風が強く、駅へと繋がる横断歩道の前では、多くの方が傘を手に信号待ちをされていました。
雨なのは予報通りでしたから、私たちも傘を持っていました。
ですが、片手で傘を差しながら片手で車椅子を押すのは危ないという母の判断で、差さない選択をしました。
そしてまもなく信号が青に変わると身構えた時、急に頭上に何か黒いものを感じました。

駅方面へ向かう横断今日の前で(画像はイメージ)
傘です。
隣で信号待ちをされていた男性が恐らく状況を察して下さって、私たち母娘にご自身の傘を差して下さっていたのです。
驚くとともに非常に申し訳なく、何度もご遠慮申し上げたのですが、
その方は横断歩道を渡りきるまで、こちらのペースに合わせてゆっくりと歩いて下さいました。
そして、きちんとお礼をお伝えする間もなく、その方は駅へと向かわれたのでした。
ご自身が濡れてしまうことを厭わずお時間まで割いて下さったこと。今でも思い出すと熱いものが込み上げる、とても心にしみる出来事でした。
この先、もう直接お礼をする機会には恵まれないかもしれません。
ですが頂いたご恩を忘れず、必ず次の誰かに繋げていきたいと強く思います。
あの時は本当にありがとうございました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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