作業前の写真「部屋をキレイにしたい」と思っているのに、いつまで経っても片付けられない自分に嫌気がさしますよね。
そこで、『「片づけられない…」をあきらめない!―「ADHD」の整理収納アドバイザーが自分の体験をふまえて教える!』(主婦と生活社刊)の著者で、自身も元汚部屋女子だったという整理収納アドバイザーの西原三葉さんに、片付けられない女子が片付けに取り組むための具体的なコツを聞きました。(初公開日は2020年5月11日 記事は取材時の状況)
◆汚部屋に多いのは「忘れられたモノ」たち
同じモノでも、使えば道具となり、使わなければ邪魔なだけのモノになる……片付かない人は、持っていることすら忘れているモノや捨てるだけのモノを多く持っている可能性が高いと西原さんは言います。
「整理収納アドバイザーの理論には「モノを4つの領域」に分類した「基本領域図」というものがあります。いつも使うものを『アクティブ領域』、毎日は使わないけどすぐに取り出せるモノを『スタンバイ領域』、持っているだけで忘れているモノを『プロパティ領域』、そして捨てるだけのモノを『スクラップ領域』と呼んでいます」
4つのアイテムの中で「アクティブ」を多く持っていて、他のモノが少ない人は部屋が片付いている状態。コレクターなどは「スタンバイ」が多い状態なのだそう。
普段汚部屋と言われるのが「プロパティ」が多い人。そして「スクラップ」が多い状態は、汚部屋ではなくゴミ屋敷の域に達した状態のことを言います。
「『スクラップ』は捨てればいいけど、『プロパティ』に属するモノは、なかなか捨てられないという人も多いのが汚部屋女子の実情です。特に捨てることに対しては、抵抗感が強い人が多い。そこで、まずは『仲間分け』からはじめることをおすすめしています」
「仲間分け」とは具体的にどのような作業なのでしょうか?
◆コツその1。「仲間分け」で持っている量を把握
「服、文具、書類など、まずは持っているモノを『仲間』ごとに分けていきます。これは、持っている量を把握するため。『これだけあった』と気づくことで、モノを捨てられない人でも『手放してもいいかも』という気持ちになりやすいのです」
捨てることが苦手な人に対して「捨てなきゃダメ!」と言うのは、マイナス行為。相手の心を閉ざしてしまうことにつながるので無理強いしないよう注意しましょう。
◆コツその2。使用頻度で分ける
例えば、大量にある洋服を仕分けしてみたはいいけど、どれを捨てたらいいのかわからない。そんなときは、使用頻度でわけることで、アクティブに使う服としまう服に分けることができるようになります。
「普段着ていないけれど捨てることに迷う服は、無理に捨てなくて良いので、段ボールなどに入れ中身が分かるよう分類と日付を付け、普段着る服と分けてしまいます。タンスやクローゼットの中が着る服だけになると日々の生活が楽になります」
また、日付けをつけることで、いつ収納したかが可視化されます。1年2年と開くことがない服は、必要ない可能性が高い服。そう気づいたときに捨てればOKとのこと。捨てられない思い出の品は「思い出ボックス」に。できれば、子どもの思い出の品は写真を撮ってデジタル化で保存がおすすめとのこと。
「片付け=捨てると思っている人もいますが、無理に捨てなくてもいいんです。分けるだけでも片付けはできます。もちろん、雑誌に載るような状態には出来ませんが、自分の中で妥協点を見つけて、生活に困らないところに落とせばそれでいいのです」
家のサイズに合わせた量まで減らすことを、まず目指すといいそうです。完璧を目指さなくていいのなら、出来そうな気がしますね!
◆コツその3。期日を設定しよう
パートナーや家族に「片付けろ!」と言われても、なかなか腰が上がらない人も、「誰かがくる」「部屋を見られる」となれば、重い腰もあがるというもの。
「なかなか片付けがはじめられない人にとって、『人が来る』などのイベントをきっかけに、期日を決めて部屋を片付けるのは一つの方法です。早く片付けさせたいからとプレッシャーをかけるのは逆効果なのでおすすめしません」
できるだけ相手に寄り添う形で、一緒にゆっくり片付けをすすめると良いそう。
「モノを捨てるときも、一気に捨てると苦しくなってしまう人も。無理せず捨てられるモノからちょっとずつ捨てていくようにしてください。モノを捨てるのはトレーニングと一緒。少しずつ進めることで、初めは無理と思っていたモノもだんだん捨てられるよういなっていきます」
◆コツその4。定位置を決める
片付けをするとモノが迷子になること、ありませんか。それは、モノの定位置が決まってないから起きる問題! 場所を決めても戻せない場合は、生活動線に合わない場所に置かれている可能性があるのだそうです。
「いつもこの場所に服がたまってしまう。この場所にバッグが置きっぱなしになっている。というポイントがあれば、そこがねらい目。生活動線に合った便利な場所にモノは溜まりやすいので、その近くに収納を作り定位置にすれば、片付けがしやすくなります」
西原さんも自分の部屋にバッグ置き場を定めたものの、導線にかなわず、いつもリビングのソファ上に放置する結果に。ソファ近くの壁にフックを付け定位置に定めたところ、うまく片付けがまわるようになったのだとか。
◆使用頻度にも注目
また、使用頻度によって片付ける場所を定めることも、片付け上手になるポイント。
「いつも使わないモノは不便な場所に。よく使うモノは出しやすい場所にしまうようにします。よく使うモノを出すために、奥から荷物をひっくり返す必要がなくなるので、散らかりにくくなるんです」
朝の身だしなみセットなど一連の動作で使うモノは、ひとつにまとめると◎。定位置を忘れがちなものは、ラベリングすることで、捜索時間を減らすことができます。
「ラベリングすることで何がどこにあるか可視化でき、モノを戻しやすくなりますよ」
特に重要なモノは「重要ボックス」を作るのがおすすめ。大事なモノをひとまとめにすることで、支払い忘れや契約書の紛失など、トラブルを減らすことにつながります。このとき細かく分類すると後々面倒になるので、あくまでざっくりにしましょう。
◆モノを定位置に戻す時間を毎日とる
片づけが苦手な人は、モノを定位置に戻す習慣が身についていません。定面倒と思うかもしれませんが毎日5分で構わないので、モノを定位置に戻す時間が取れるようになると片づけはすすみます。
その時タイマーを使うと気がそれず片づけが定着しやすくなります。
スマホアプリで「音声タイマー」と検索すると音声でカウントダウンするアプリが見つかるので、そんなタイマーを活用すると集中して片づけられるようになります。
◆片付けに正解はない
部屋を片付けられない人には、完璧主義の人が多いのだそう。自分で汚部屋だと感じている人は、完璧な部屋を目指さず、まずは生活をする上で困りごとが少なく、捜し物が減るような暮らしになることを目標にするといいと西原さんは言います。
「片付けに正解はありません。まずは衛生的な空間になればそれでいい。モデルハウスのような部屋ではなく、まずはちょっとでも便利で楽な暮らしが出来る部屋を目指してみるのがいいのではないでしょうか」
また、部屋を一気に全部片付けようと全てをひっくり返すのも、「片付けが得意ではない人」にはあまりおすすめしないのだそう。最初は引き出し1つから……などの方がハードルも低くなって、片付けしやすいのだとか。スモールステップで片づけに取り組むことが成功のカギ。
◆頼れるところは機械化・家事代行
また、食器の片付けが苦手なら、食洗機を導入したり、布団を干し忘れるなら布団乾燥機を導入したりするなど、頼れるモノには頼ってしまうことも大切と言います。自分でどうしようも出来ない人は、家事代行など人に頼るのも全然あり。
「今まで500件以上のお宅に伺いましたが、本当に困っている人もサポートする人がいることで片付けができます。専門家じゃなくても、理解あるご家族やお友達に寄り添ってもらうことで、片付けられるようになることもあります」
片付けができないからと自分を責めなくてもいいとのこと。まずは衛生的で困らない暮らしができるところまで部屋を片付けることを目標に、自粛期間を使って部屋の片付けにチャレンジ。おこもり生活が、ちょっと快適になるかもしれませんよ。
【西原三葉さんプロフィール】
整理収納アドバイザー1級、産業カウンセラー、栄養士、ライフオーガナイザー1級資格保有。著書に『「片づけられない…」をあきらめない!―「ADHD」の整理収納アドバイザーが自分の体験をふまえて教える!』(主婦と生活社刊)がある。カウンセリングルームAUBE代表
<取材・文/ミノシマタカコ>