ついに姿を消したiPhoneの「Lightning端子」 Dockコネクターから始まった“iPhoneの端子”を振り返る

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2025年05月19日 14:21  ITmedia Mobile

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iPhoneの端子も利便性の優れるものに進化した

 Appleの新型スマートフォン「iPhone 16e」が発売されたことで、Apple製品からLightning(ライトニング)端子が完全に姿を消した。これは1つの時代の終わりを意味していると考える。今回は、iPhoneに採用されてきた端子の変遷を振り返ってみたい。


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●iPhoneといえばLightning端子だった


 iPhoneの外部接続端子としてなじみが深かったのが、Lightning端子だ。2012年に登場したiPhone 5で初めて採用され、最後に搭載されたのは2022年発売のiPhone 14シリーズだった。


 約10年にわたってiPhoneの充電、データ転送端子として採用され、この間に幾多の対応アクセサリーも登場した。2020年代に入ってからは後述するUSB-Type Cへの変更を求める声も多かったが、今ではiPhoneを象徴する要素の1つとして多くの方が思い浮かべるだろう。


 思い返せば13年前にLightning端子が登場した当時は、「端子の向きを気にせずに挿せる」構造が革新的だった。当時はまだUSB Type-Cは規格策定前で存在せず、主流だったMicroUSBは端子の爪が壊れやすく、差し込み方向にも注意が必要だった。端子の爪が破損したり、経年劣化で引っ込んだ状態になっていたりすると、接触不良で充電できないことが多々あった。


 そんな中、Lightning端子はケーブル側の端子接点が表面にあるため壊れにくく、端子の向きを気にせずに使うことができた。向きを気にせずに使えることが、これほどまでにストレスフリーなのかと痛感させられたことを思い出す。暗がりなどの手元が見えない場面でも迷わず端子を接続でき、ユニバーサルデザインという意味でも画期的だった。


●サードパーティーのアクセサリーを入手しづらいデメリットも


 一方で、Lightning端子には課題もあった。Appleが独自チップを内蔵するMFi認証制度を導入していたため、これに対応しないサードパーティーのケーブルやアクセサリーはOSのアップデートによって使えなくなるケースがあった。当時製品のパッケージには「iPhone 6対応」「iOS 8.0対応」と記載された製品が多く存在したが、これは消費者への配慮でもある。


 その結果、廉価な粗悪品ケーブルが出回ることは少なくなったものの、MicroUSBケーブルと比較して入手しにくい状況が3年ほど続いた。今でこそ多くの店舗で購入できるLightningケーブルだが、当時のMicro USB並みの量がそろうまでには時間がかかった。


 この他、端子部がむき出しの構造となるため、汚れには弱かった。長期にわたって利用すると湿気などを理由にケーブル側の端子にさびが付着することもあった。端子がむき出しなので、何らかの理由でショート(短絡)する可能性も指摘された。


 これについてAppleは「端子がむき出しになっているが、内部回路で保護されている」と明言しており、日常的な使用でショートによる損傷が起きることはほとんどないようだ。


●もはや懐かしい Lightning以前に主流だった30ピンDockコネクター


 Lightning端子よりも前のiPhoneには「30ピンDockコネクター」と呼ばれる端子が使われていた。これはiPodと同じもので、名前の通り30ピンの接点を持つ横長の形状の端子だ。


 物理的なロック機構も備えており、端子だけでデバイスを吊り下げられるほど頑丈だった。この特性を生かして、iPhoneを首からぶら下げられるアクセサリーも販売されていた。


 アクセサリーの種類は今ほど豊富ではなかったものの、iPodに準拠したアクセサリーが多く使えた。iPhoneのDockコネクターに直接接続するスピーカーやオーディオ機器が多く存在し、iPod/iPhone向けのアクセサリー市場も活発だった。


 オーディオ関連のアクセサリーの豊富さは、音楽プレイヤーとして登場したiPodシリーズがあったからこそといえる。音楽以外では動画を大画面で楽しむために、コンポジット出力でテレビに映像を出力するケーブルなども販売されていた。ただしアナログ出力のため、画質はそれなりだった。


 ただし、Dockコネクターは端末側の端子が壊れやすい難点があった。誤って逆差ししてiPhoneを破損させたり、端末側のコネクターの角が欠けたりしたことのあるユーザーもいるだろう。


 そんなDockコネクターだが、2025年にもなればなじみのない人の方が多いだろう。最後に販売された機種が2011年発売のiPhone 4sであることもあり、10代の若い世代になると「見たことがない」という声も出てくる。筆者がX(旧:Twitter)に投稿した際は「SDカードを挿入するのか」「親が使っていたiPodのイメージ」というコメントも見られた。


 また、Dockコネクター世代のiPhoneはドコモで販売されなかったこともあり、ドコモでiPhoneデビューしたユーザーからすると、Dockコネクターは「iPhoneの充電端子」としてはなじみが薄い。Lightning端子に切り替わってから10年以上が優に経過しているため、初めてのiPhoneが10年前といってもiPhone 6であることを踏まえると、こうした現状にも納得がいく。


●待望のUSB-Type C採用 汎用規格であることが最大のメリット


 最後に現行のiPhoneでは、欧州の法規制を背景に、汎用(はんよう)規格のUSB Type-Cに移行した。Lightning端子と同様にどちらの向きでも挿せる端子だが、データ転送速度や給電性能はType-Cが圧倒的に上。最大の違いは、独自規格から汎用規格への移行である点だ。


 DockコネクターからLightning端子へ移行したときを思い返すと、ケーブルをはじめとしたアクセサリーの少なさに悩んだことを思い出す。独自規格から独自規格へのアップグレードということもあり、アクセサリーが拡充するまで時間がかかったように感じる。


 一方でUSB Type-Cは既にAndroidスマートフォンやWindows PCなどで広く採用されており、対応するケーブルやアクセサリーも豊富に存在する。こちらも登場から10年が経過することもあって、スマートフォンに限らず家電製品やおもちゃ、加熱式たばこなどでも一般的になりつつある。


 Apple製品でもノートPCのMacBook、タブレット端末のiPadは先にUSB Type-C化が進んでいた。Apple製品向けのアクセサリーも充実しており、タイミング的にもiPhoneは非常にスムーズな移行となった。


 筆者もiPhone 15シリーズに乗り換えた際、以前のようにiPhone専用ケーブルを用意する必要がなくなり、Android端末やノートPCと端子を共有できることが非常に便利に感じられた。出張や旅先などで充電器を1つ減らせる点は大いに助かっている。


 USB Type-Cは汎用規格であるため、ケーブルや充電器の入手性も圧倒的に高い。家電量販店やディスカウントストア、コンビニエンスストアや100円ショップでも容易に手に入り、価格も手頃だ。以前のLightning端子用の安価なケーブルは制限も多かったが、USB Type-Cのケーブルは安価なものでも急速充電や映像出力に対応する多機能な製品がそろっている。


 充電ケーブルはもちろん、映像出力アダプター、イヤフォンジャック変換などの関連アクセサリーも安価に入手できる。上位モデルは高速通信可能なことを生かして外部ストレージの接続もできる。総合的に見れば、USB-Type CはiPhone史上最も部環境が整った端子規格と評価したい。


 iPhoneにおけるLightning端子の終息は、iPhoneが長年守ってきた独自規格からの決別を意味する。きっかけは欧州地域の規制こそあれど、30ピンDockからLightning端子、そして現行のUSB Type-Cへと変化した。他の端末を見ても、独自端子を貫いたソニーのウォークマンも2019年モデル以降はUSB Type-Cを採用しており、2021年にはハイエンドも含めて完全移行した。さまざまな利点のあった独自端子類も、利便性に優れるものに変化している。


 iPhoneの発売以降15年にわたって長らく続いた「iPhoneの独自端子問題」は、iPhone 16eの発売に伴うiPhone SEの販売終了をもって、一段落したといえる。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/



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