キャリーケースで通路を占拠、非常ボタン誤作動に改札トラブル…関空で働く男性が明かす“迷惑観光客”の実態

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2025年05月19日 16:31  日刊SPA!

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※写真はイメージです(Photo by AdobeStock)
 ここ数年、外国人観光客が非常に増えた。その影響は電車やバスなどの公共交通機関にも及んでいる。利用に関するマナーは日本と海外で異なる場合が多く、彼らに悪気はなくとも周囲が「迷惑」と感じてしまうケースが少なくない。
 現在は大阪・関西万博が開催されている。関西国際空港内に勤務する古川達也さん(仮名)によれば、空港や周辺の交通機関は平日も混雑。自宅と空港を電車で往復している古川さんは、外国人観光客からスマホを目の前に差し出され、音声翻訳アプリで「この電車は目的地まで乗り換えなしで行けるのか?」と尋ねられることが日常茶飯事だという。

 古川さんは、そんな外国人観光客のふるまいに困惑してしまうことがたびたびあるそうだ。

◆自撮りに夢中で通路をふさぐ外国人観光客

 南海電車の乗り場近くで、外国人観光客のグループが楽しそうにセルフィーを撮影していた。問題は、彼らがキャリーケースを4つ並べて通路をふさいでいたことだ。

「その場は通行量が多く、立ち止まるだけでも混雑の原因になるんです」

 駅員が「Excuse me, please keep moving」(すみません、そのまま行ってください)と声をかけても、彼らは「OK !」と笑顔で手を振るだけで、撮影を続ける。

 その間にも列は詰まり、他の観光客が困った顔で押し合うように通り抜けようとしていた。

「駅員が声をかけ続けて、ようやく動き出しましたが、現場は一時的にもみくちゃ状態になっていましたね」

◆改札口やエスカレーターで立ち往生

 また、関西空港のJR阪和線の改札は、東京などの大きな駅と比べると明らかに少ない。古川さんは、ある日の帰宅ラッシュ時にこんな場面に遭遇した。

 大きなキャリーケースを抱えた外国人観光客が、改札でICOCAの残高不足や特急券の入れ方に戸惑い、何度もエラー音を鳴らしている。

「ただ、駅員も窓口に1名しかおらず、他の駅員たちは外国人観光客の質問対応に追われているため、改札でのトラブルにはよほどのことがない限り駆けつけてこないんです」

 ようやく彼らが改札を通り抜けたと思ったら、今度はエスカレーターの入り口で立ち止まっている。日本のエスカレーターのルールがわからないのか、大きなキャリーケースを真ん中にどんと置いて動かない。

 心の中で「いや、だからそこは通路やって!」と叫んだ。現実としては英語で説明する余裕もなければ、時間もなかったのだ。

◆誤って押された非常ボタンでパニック状態に

 外国人観光客による些細なハプニングはよくあることなのだとか。関西空港駅で、突如として火災報知器が鳴り響いた。

「後に判明した原因は、ある外国人観光客が誤って非常ボタンを押してしまったことでした。そのため、ターミナル内と駅の火災報知器が連動して作動。T-1ターミナル全体が一瞬、パニック状態になりました。

 駅のスタッフも動揺していましたが、ただでさえ忙しい現場に、こうした“予想外の出来事”が加わると、その対応は容易ではないと思います」

◆電車内で顔をしかめる乗客が多数

 電車内の様子も以前とは変化がある。隣の席に座っていた年配の女性が「最近、こういうの多くなったなあ……」とつぶやいた。

 外国人観光客のグループが乗車するなり、通路にキャリーケースを広げた。そこから地図を取り出して観光プランを練り始めたのだが、大音量で観光アプリの案内を再生。ここは観光案内所かよ……。

 古川さんは「まわりの乗客は全員だまっていながらも顔をしかめていました」と振り返る。

◆外国人観光客に日本のマナーを伝える難しさ

 また、関西空港駅発の電車内では、4人席に2人で座り、その空いたスペースにキャリーケースをドンと置いて占領、他の乗客をシャットアウトするパターンを頻繁に見かけるという。

 戸惑いを覚えながらも、古川さんは今日もなんとか帰路に着く……。こうした出来事を通して、「最低限の公共マナーを外国人観光客にどう伝えるか」が大きな課題だと感じていると話す。

「英語で注意するのもハードルが高く、つい見て見ぬふりをしてしまうことが多いですね。旅先での高揚感や文化の違いは理解していますし、決して悪気があるわけではないことも分かっているのですが、小さなことでも積み重なっていくとストレスになります。本当に良い旅とは、訪れる側と迎える側、お互いの理解と配慮があってこそ成立するものなのかもしれません。

 万博が開催され、観光客がますます増加している今、国としても文化の違いを“壁”ではなく“橋”に変えていくような取り組みが求められている気がします」

<取材・文/藤山ムツキ>

【藤山ムツキ】
編集者・ライター・旅行作家。取材や執筆、原稿整理、コンビニへの買い出しから芸能人のゴーストライターまで、メディアまわりの超“何でも屋”です。著書に『海外アングラ旅行』『実録!いかがわしい経験をしまくってみました』『10ドルの夜景』など。執筆協力に『旅の賢人たちがつくった海外旅行最強ナビ』シリーズほか多数。X(旧Twitter):@gold_gogogo

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