
F1第7戦エミリア・ロマーニャGPレビュー(前編)
第7戦エミリア・ロマーニャGPの予選開始から5分が経過したところで、衝撃的な映像が飛び込んできた。
時速290km/hで飛び込むターン5で挙動を乱し、ほとんど減速しないままタイヤバリアに激突し、宙を舞って回転するマシン。
それは、タイムアタックに入ったばかりの角田裕毅(レッドブル)のマシンだった。
「完全に僕のミスです。最初からあんなふうにプッシュするなんて、本当に自分自身がバカだと思います。
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特に予選に向けて、マシンにはいろんな変更をかなり加えていたので、(そのセットアップを変えた)マシンのことを理解する前にあんなふうにハードにプッシュすべきではなかったんです。普通なら大きく変えた時はビルドアップしていくべきで、それをせずに最初からあそこまでのプッシュは、本当に不必要だったと思います」
通常なら1段目までしかタイヤを乗せない、ターン5イン側縁石の2段目までカットしてしまい、フロアを打ちつけて挙動を乱したことが直接の原因だった。
F1参戦初年度のフランスGPでも、同じようなミスをQ1最初のアタックで犯したことがあった。集中力がふと切れた時に自分でも予想外のプッシュをしてしまうのが、角田の悪い癖だった。
だが、今回は違った。
Q3で最高のアタックをするために、Q3に新品タイヤを2セット残したい。そのためにはQ1を1セットで通過することが必須で、それを可能にするためには1回目のアタックから好タイムを刻んでおく必要がある。そのことを理解したうえで、意識的にプッシュしたのだ。
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しかし、結果的にはそれが間違いだった。
「Q1を1セットのタイヤでクリアしようとして、高望みしすぎたんです。自分自身はコントロールできる自信がありましたけど、セットアップを変えたマシンの反応が思っていたのと違っていたのは言い訳にしかならない。許されることではないと思います」
【手段が目標になってしまった】
予選Q3でマックス・フェルスタッペンに肉薄する好タイムを刻みたい──というのは、今の角田が一番に掲げている「目標」だ。今回は得意のイモラで、金曜からフェルスタッペンとの差が小さかっただけに、その期待も大きかった。
そのためにQ3に2セットの新品タイヤを残し、Q3で2回のアタックを行なって万全のラップを決めたかった。だから、Q1から力が入ってしまった。
しかし本当に必要なのは、マシンの理解を深めて限界までプッシュできるようにすることだ。
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Q3に2セット残すというのは、あくまでその「目標」を達成するための「手段」でしかない。それなのに、いつの間にかその「手段」が「目標」になってしまい、一番大切な本来の目標を見失ってしまっていた。
それが、あのミスが起きてしまった最大の理由だったと言うべきだろう。
金曜からFP3まではマシンのフィーリングが思わしくなく、予選に向けて金曜の方向性に戻す大きなセッティング変更をしなければならなかったことも、理由のひとつ。
そしてこのエミリア・ロマーニャGPで楽しみにしていた、フェルスタッペンと同スペックのマシンで彼から多くを学ぶことができなかったのも、理由のひとつ。
新型フロアとサイドポッドは投入されたものの、角田のマシンにはスリムな旧型ノーズと旧型フロントウイングが装着されていた。マイアミGPでフェルスタッペンがフロントウイングを壊したため、スペアが足りなくなったからだ。
こうしたさまざまな背景があったとはいえ、ミスはミスであり、それをすぐさま認めて自分と向き合うことができるのは、角田の強さのひとつでもある。
◆つづく>>