第6話でタメた上で、とうとう大爆発した印象の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』第7話。非常に情報量の多いエピソードであり、内容をひとまとめにするのはなかなか難しい。
シュウジの居場所がバレたことで、マチュはニャアンを巻き込んだ替え玉作戦を開始。クランバトルには替え玉のニャアンを載せたGQuuuuuuXと赤いガンダムが挑み、その隙にカネバン有限公司の金庫からマチュが金を強奪。その資金を使って3人で地球に逃げる作戦だ。しかし対戦相手の「トゥエルブ・オリンピアンズ」は、キシリア暗殺を狙う地球連邦軍の部隊だった。キシリアを狙うためスポーン地点はコロニーの内部に変更され、GQuuuuuuXと赤いガンダムはコロニー内に侵入する。しかしキシリアの確実な抹殺を狙う連邦軍が投入したのは、ゲーツ・キャパの乗るハンブラビ、そしてムラサメ研究所の生み出した強化人間ドゥー・ムラサメの乗る巨大モビルアーマー、サイコ・ガンダムだった。
コロニー内で大暴れを始めるサイコ・ガンダム。そして再び発生したゼクノヴァによって消失したシュウジと赤いガンダム。キシリアの危機を救うべく急行したエグザベのギャン。そして美味しいところを全部持っていった感のあるシャリア・ブルのキケロガ……。『ガンダム』と『Zガンダム』に登場した機体がごちゃ混ぜになってコロニー内で乱戦を繰り広げる。尺の都合もあるのは重々承知だが、それぞれのモビルスーツ・モビルアーマーの見せ場をもっと見たいと思わせるものだった。
それにしても、今回ついにマチュとニャアンは感情を爆発させた。特に「全てを捨てて一緒に逃げよう」とシュウジに訴えるニャアンの行動には説得力があったように思う。そもそも直前のクランバトルで体を張って代打のパイロットを務めたにもかかわらず、マチュからニャアンへのまともな謝罪や感謝の言葉があった形跡はない。それどころか、マチュはシュウジのためにもう一度ニャアンにGQuuuuuuXへの搭乗を迫る。前回は自分の行動を反省し、なんとかマチュと仲直りできないかと悩んでいたニャアンが「こいつ、本当に男のことしか考えてねえんだな……」という失望を感じ、難民である自分よりずっと頭の中がおめでたいマチュを切り捨てようとしても、責められないだろう。
なかなかややこしいのは、マチュがそういった行動に出た理由も劇中で割としっかり説明されている点だ。マチュとシュウジだけの特別なものだった「キラキラ」をニャアンも見、そして自分よりパイロットとしての適性も高そうということになれば、焦るのも無理はない。そもそもマチュは「ちょっと日常に退屈していただけの、いいとこの箱入り娘」である。シュウジのピンチで半ばパニックになり、視野狭窄に陥っても不自然ではない。内容が過密でポンポン話が進むが、主要登場人物の行動に理屈は通っている。
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そしてシュウジである。今回ゼクノヴァが発生する直前の行動でも伝わってきたが、シュウジはそもそもマチュにもニャアンにも特段の感情はない。何をいうにも「〇〇と、ガンダムが言っている」という形式で喋る彼には、おそらく他人に関する関心がほとんどない。だから、ニャアンがどれだけ必死に訴えようと、シュウジが彼女の方を向くことはないし、勝手にゼクノヴァが起きて勝手にどこかに消えてしまった。三角関係の物語になる可能性も感じていた『GQuuuuuuX』だが、おそらく今後その方向に進むことはないのではないか。なんせ現状シュウジ本人の意思が伺えない上、本人がどこかへ消えてしまったのである。ここまで自分の意思がないキャラクターはガンダムシリーズではあまり見たことがない。
意思という点で言えば、今回ようやく目的が明らかになったのがシャリア・ブルである。ただ単に消えたシャアと赤いガンダムに執着しているおじさんというわけではなく、「危うい均衡の上で保たれている一年戦争後の平和を守るため、ザビ家のトップであるキシリアとギレンを同時に表舞台から消す」という危険極まりない企みを進めていることが判明したのだ。
ここで新たな意味を持って立ち上がってくるのが、第一話冒頭でシャリア・ブルが口にしていた「平和のための必要悪です」という説明だ。もともとはモビルスーツの民間への払い下げの是非を巡ってソドンのブリッジで交わされた会話で出てきた言葉で、シャリアは「戦後職にあぶれた連邦軍敗残兵の食い扶持のためにモビルスーツを与えるのも、戦勝国の義務である」という話をしていた。
この時は取るに足らないやり取りに思えたものだが、シャリアが「平和維持のため」に何をするつもりなのかを考えると、セリフの重みがなかなか違って聞こえてくる。なんせシャリアは、前回速攻で軍警の捜査員を二人も射殺しているのである。任務達成のためなら自分の手を汚すことも厭わず、究極の目的は一年戦争後の平和の維持。そのための「必要悪」ならば、ギレンとキシリアの同時排除という離れ技すら画策するという、なかなかとんでもないプランを抱えているわけである。シャリアのいう「必要悪」の限度が一体どのあたりのラインに設定されているのか、全く読めない。
もうひとつ書けば、シャリアの狙いがキシリアとギレンの排除にあるというのは、シムス大尉との会話で出てきた話だった。ということは、シムス大尉はシャリアの企みを知る同志ということになる。元の『機動戦士ガンダム』ではサイコミュ兵器を研究しているサブキャラクターという立ち位置だったシムス大尉が、まさかザビ家による政権の転覆を狙う重要キャラクターになるとは思っていなかった。ゲーツ・キャパやバスク・オムが出てきたことより、シムスがそんな位置で謀略に加担している方がよっぽど異常だと思う。
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どうやら来週は『Beginning』で描かれたソロモン戦のエピソードが放送される様子。赤いガンダムがゼクノヴァで消えたところで「では、ゼクノヴァとはなんだったのでしょうか」というエピソードを挿入するという構成はなかなかスマート。『Beginning』を見ずに本放送だけ見ても面白かったのではないか。『Beginning』視聴済みの視聴者にとっては一週間ヤキモキさせられることになりそう。果たしてマチュとニャアンはどうなってしまうのか。そしてあと実質残り4話で『GQuuuuuuX』は完結するのか。なんとも気になるところである。
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