戦時中(昭和19年)の新聞紙を使った巨大なアート作品がX(Twitter)で話題に。とても未完成とは思えない造形に、「この時点でもかなりすごいです」「すごい迫力!」と反響を呼んでいます。
●戦艦大和を“当時の空気感”とともに再現
現代美術家の足立篤史さんが作ったのは、旧日本海軍の象徴ともいえる戦艦「大和」。足立さんは「過去の資料を作品の表面に刻み込むことで、その時代の空気やリアリティーを立ち上がらせ、出来事をよりリアルに感じ、考えるきっかけを生み出せる」という考えのもとに、新聞などの印刷物を造形作品に織り込んだ作品を生み出しています。
それゆえ、今回の「大和」も当時の印刷物を用いて装飾。船体の主な素材には、猫の爪とぎに使われるような縦方向に重なった段ボール状の紙を使用。艦橋や各部の構造にはイラストレーションボード、主砲やマストなどには紙製の綿棒が用いられており、ケント紙や和紙、コピー用紙、古い新聞など、作品全体がすべて“紙”によって構成されているのが特徴です。
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特に目を引くのが、表面に用いられた新聞紙です。いずれも戦艦大和が進水した日から沈没するまでの期間に実際に発行された本物の紙面で、昭和19年に限らず、戦前の進水日や真珠湾攻撃による開戦、戦中、そして昭和20年の沈没日など、大和の行動と重ねるように日付が選び抜かれています。そのため、眺めていると当時の歴史を“読む”ような体験が味わえるのも特徴です。
戦果を伝える勇ましい文字に交じって、不穏さや緊張感をにじませる言葉も見受けられ、作品全体が戦艦の運命だけでなく、時代の空気や戦争の行く末までも静かに物語っているように感じられます。
戦艦「大和」の詳しい製作過程については、作者・足立さんのnoteで紹介しています。作品に込められた思いや制作の背景に興味がある方は、ぜひあわせてご覧ください。
●今夏に京都・東京・大阪の高島屋で展示
現状ではまだ制作途中ながら、緻密な造形を楽しめると同時に、戦争について静かに問いかけてくるようなこの作品。7月から8月にかけて京都・東京・大阪の高島屋で開催される「昭和100年記念〜言葉と象(かたち)で振り返る昭和展」にて展示される予定です。会場では本作に加え、B-29をモチーフにした作品もあわせて展示されます。
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画像提供:足立篤史さん (C)AtsushiAdachi
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