サッカー日本代表メンバーの大幅刷新を喜べない理由 新顔ばかりのチームでは今後のテストにならない

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2025年05月24日 07:30  webスポルティーバ

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 W杯アジア最終予選オーストラリア戦(6月5日)、インドネシア戦(6月10日)に臨む日本代表メンバー27人が以下のとおり発表された。 

GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(FC町田ゼルビア)、鈴木彩艶(パルマ)

DF
長友佑都(FC東京)、渡辺剛(ヘント)、町田浩樹(ユニオン・サン・ジロワーズ)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、関根大輝(スタッド・ランス)、鈴木淳之介(湘南ベルマーレ)、高井幸大(川崎フロンターレ)

MF/FW
遠藤航(リバプール)、大橋祐紀(ブラックバーン)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、森下龍矢(レギア・ワルシャワ)、町野修斗(ホルシュタイン・キール)、中村敬斗(スタッド・ランス)、佐野海舟(マインツ)、平河悠(ブリストル・シティ)、熊坂光希(柏レイソル)、久保建英(レアル・ソシエダ)、細谷真大(柏レイソル)、鈴木唯人(ブレンビー)、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、佐野航大(NEC)、俵積田晃太(FC東京)、佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)


 前回のバーレーン戦、サウジアラビア戦に招集された27人のうち、連続して招集された選手は13人。フィールドプレーヤーに限れば24人中10人である。およそ6割が入れ替わったことになる。MF、FWに限れば、連続招集は6人(遠藤、鎌田、久保、中村、町野、藤田)。一定以上の時間プレーしてきた常連組となると、遠藤、鎌田、久保、中村の4人になる。常連組のなかでも、今季の欧州で活躍した選手、出場時間の長かった選手、故障がちだった選手は、今回、選出されていないという。

 前回は伊藤洋輝(バイエルン)、上田綺世(フェイエノールト)、守田英正(スポルティング)など故障上がりの選手を選出した。その結果、バーレーン戦で上田、守田が負傷し、代表チームから離脱することになった。伊藤も代表ウィーク明け直後のブンデスリーガでケガに見舞われ、残りのシーズンを棒に振ることになった。

【FIFAランクの話は一切出なかった】

 前回のメンバー発表の会見で、山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)は、「なぜ新たな選手を招集しないのか」という質問に対し、FIFAランクを引き合いに出し「W杯の抽選会で上のポットに入るためには、勝ち点をひとつも落とすことはできない」と述べている。森保一監督も「W杯本大会まで負けていい試合はひとつもない」と語気を強めたものだ。

 森保監督は今回の会見でも、「負けていい試合はない」と述べているが、前回とは言葉の強さが変わっていた。山本NDからFIFAランクの話は一切出なかった。フィールドプレーヤーの6割が入れ替われば、特にオーストラリアとのアウェー戦では勝ち点を落とす心配がある。ベストメンバーにこだわり、ケガ人を出した前回の反省を述べなければ、辻褄は合わない。

 実力と出場枠(8.5)の関係でいうと、日本は世界で最も楽な立場に身を置いていた。従来の突破確率が85%だとすれば今回は95%。4戦目を終了した段階では、限りなく100%に近づいていた。にもかかわらず、森保監督は7戦目、8戦目までテストを怠り、頑なにベストメンバーにこだわった。そして今回、「100%近く」が100%に変わると、フィールドプレーヤーを6割変えた。

 徐々に変えることができない代表監督なのだ。その資質に問題ありと、筆者には見える。

 先述のようにMF、FWで常連組は4人。不動のスタメンとなると遠藤だろう。しかし、その遠藤を今回、さすがに2試合フルタイム出場させることはできない。代表キャプテンとはいえ、今季のプレミアリーグを制したリバプールに所属する一流選手だ。格の高いベテラン選手を消化試合に起用するわけだ。取り扱いは慎重にしなくてはならない。出場時間はせいぜい半分。オーストラリア戦に先発フル出場させたら、インドネシア戦は休ませる。それが遠藤を起用する場合の常道だ。

 となると、3−4−2−1の守備的MFは、およそ半分の時間、常連組でない選手同士がコンビを組むことになる。それがたとえば佐野兄弟であったとしても、うまくいかない可能性は高い。テストとしてアンフェアだと言わざるを得ない。本気で若手を育てるつもりがあるのか、怪しいと言わざるを得ないのだ。

【代表監督に必要な選手を漸次的に移行させる術】

 そもそも代表チームにおけるテストとは、そのポジションに新顔がハマるかハマらないかを確認する機会である。個人能力の確認は、各所属クラブにおけるそれぞれのプレーを見て済んでいなくてはならない。あるポジションにいい感じで収まるか。森保監督の意向に沿ったプレーができるか。その点に目を凝らそうとすれば、フィールドプレーヤー10人中、常連は半分以上を占めている必要がある。

 新顔が多数を占めた段階で、テストの意味は失われる。そして合格する確率は減る。新顔には不利になる。一見、門戸を広げたようでいて、実は新顔には厳しいテストである。

 新顔7人を含む6割の入れ替えは、テストというより発掘の場だ。となると新たにテストをする機会が必要になる。常連組と新たにコンビネーションを確認する場を設ける必要が生まれる。つまり、新顔と常連組、それぞれを選ぶ人数のバランスに問題があるのだ。

 代表監督に不可欠なのは、徐々に、まさにグラデーションを掛けるように漸次的に選手を移行させる術だ。毎回、少しずつ入れ替える。これができないと代表チームは循環しない。

 なにより短期集中トーナメントの采配に影響が出る。森保監督は東京五輪の後、なぜ選手を入れ替えなかったのかと問われると、「日本はまだ先を見て戦うことができない」と答えた。日本ではなく森保監督は、と言い換えるべきであるが、この発想ではW杯の3戦目で手詰まりとなる。ベスト8の戦いは6試合目で、森保監督が口にする優勝は、8試合目の戦いに勝利した産物だ。ベストメンバーが何通りもあるサッカーでないと、そこに辿り着くことはできないのである。

 メンバーを少しずつ入れ替えながら使える駒を増やしていく。W杯の成績はその数に比例する。森保監督の方法論では、メンバーがいくらよくても4試合目あたりが限界だろう。

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