手押し車を押しながら歩く原告の小寺アイ子さん=8日、大阪市旭区 国が2013〜15年に生活保護基準額を引き下げたのは違法だとして、全国各地の受給者が減額処分取り消しや損害賠償を求めた訴訟で、原告、被告側双方の意見を聴く弁論が27日、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)で開かれる。意見陳述を予定している大阪訴訟の原告、小寺アイ子さん(80)が取材に応じ、減額により孫と会う機会が減り、知人の葬式にも参列できないなどの窮状を訴えた。
小寺さんは00年から大阪市内でカラオケ喫茶を経営していたが、股関節が壊死(えし)する病気を患い、家賃や電気代などを支払えずに自己破産。13年から生活保護を受けている。
しかし3度にわたる減額で、生きがいだった孫への小遣いやプレゼントも用意できないほど困窮。孫から「ばあば、お金ないねんな」と言われ、何もしてやれない申し訳なさが募ったことで、次第に足も遠のいたという。
香典を出すゆとりがなく、カラオケ喫茶の店名を付けてくれた恩人の葬式にも参列できなかった。「すごくお世話になった方だったのに、とっても悲しかった」と振り返る。
医師からはバランスの良い食事を指示されているが、購入するのは値段が安い豆腐や鶏胸肉などに偏っている。入浴は3日に1度。「恥ずかしいけど、仕方ない」とうつむく。
団地内で他の住人から「仕事もしていないのに生活保護を受けて」と言われるなど、社会の冷たい視線も感じながら生きてきた。「できたら私も働きたい。周囲から理解してもらえないといつも思う」と嘆く。
「生活保護がないと最低限の生活も送れない。さらに減らされたら、どれだけ苦しい生活を強いられるか」。訴訟を起こして既に10年近くの月日が流れた。最高裁だけでなく社会にも自らの声が届くことを願い、最後の訴えに臨む。

インタビューに答える原告の小寺アイ子さん=8日、大阪市旭区