ラジオは、人生を太くする─起業家を招く番組をナビゲートする、エバンジェリスト・西脇資哲氏が魅力を語る

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2025年05月26日 12:10  J-WAVE NEWS

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グローバル視点で活躍する未来のビジネスパーソンに求められるモノとは何か? そのヒントを探る番組として、J-WAVEでは『SEVEN BANK GLOBAL BUSINESS CHARGE』(毎週月曜-木曜 21:45-22:00)をオンエア中。ナビゲートするのは、マイクロソフトの業務執行役員でエバンジェリストの西脇資哲氏だ。

ゲストに登場するのは、社会にイノベーションを起こしているスタートアップ企業や、革新的な事業を展開する企業のリーダーたち。西脇氏は彼らの話を引き出し、ビジネスの最前線で求められる知識や感性、起業へのモチベーションをシェアしている。

今回は西脇氏に、番組の手応えや、ラジオというメディアに感じる力について伺った。(J-WAVE NEWS編集部)



■ポッドキャストページ

ラジオのメリットは、感情が伝わりやすいこと

──『SEVEN BANK GLOBAL BUSINESS CHARGE』というラジオ番組を担当して、どんな楽しさを感じていますか?

今のIT業界は、スタートアップ企業がすごく多いんです。一昔前より起業のハードルが下がり、資金が多くなかったり学生だったりしても立ち上げられますし、極端な話、赤字でも会社は経営できますから。そこで、起業するモチベーションをいろんな人に広めるためにお届けしているのが、『SEVEN BANK GLOBAL BUSINESS CHARGE』です。話題の企業をスタッフが提案してくれたり、私が注目している会社や投資している会社の経営者に出ていただいたりと、幅広くゲストを呼べるように工夫しています。

「こんな会社があったんだ」という学びや驚きを与えられるインタビュー番組になっていると感じています。私自身はエバンジェリストとして、特にテクノロジーの最先端とか楽しさを広める仕事をしており、その特性がスッとハマったかなと。

──西脇さんは、他局も含めると、ラジオへの出演を長年続けていらっしゃいます。どんなところに魅力を感じますか?

8〜9年前から担当していますね。文字の媒体より感情が伝わりやすいことがメリットだと思っています。私の番組はひとり語りではなく、ゲストとのやり取りの中で話が深掘りされていきます。それこそが最大の魅力ですし、字面では絶対に伝わらないような本人の気持ちや感情が電波に乗っていると思います。

この回は、スタートアップ向けの法人融資「Flex Capital」と個人向けウォレット事業「IDARE」を通して、社会に必要な流動性を供給して価値を生みだしている、株式会社Fivot 代表取締役 安部匠悟さん 第1回。

成功談だけじゃなく、失敗談も届けていきたい

──難しさは感じますか?

頑張らなくてはいけないポイントは、“はじめまして”の方がゲストに登場してくださったときですね。この番組は、初対面の方とも始めから深く話さなくては成立しません。私はそのことをよく「徹子の部屋状態」と呼んでいるんですけど(笑)、相手に喋ってもらって、自分も話すというバランス感覚をすぐに作りあげなくてはいけないんです。それでいてリスナーも喜ぶようなトークを繰り広げる。ここは頑張っています。

その上で『徹子の部屋』と異なるのは、ゲストが芸能界で活躍する方ではないということです。経営者の中には寡黙な方もいますし、メディア出演が少ない方は緊張もするでしょう。そういう状況で話を聞き出すことは、難しいところでもあるし、おもしろみでもあります。番組が始まってからの1年ちょっとで、私のインタビュー能力は上がったなと感じています。

──どんなときに実感しますか?

ふたつあります。ひとつは、番組ではゲストの守秘義務みたいな部分に触れなくちゃいけないときもあって、相手はもちろんそれを言いたくないわけですね。そういう瞬間があるとすぐに察知して、切り替えられるようになったことです。もうひとつはスタートアップ経営者の幼少期の話や、失敗談も聞き出せたときですね。そういうプライベートなことやセンシティブな部分って、話したくない人もいるじゃないですか。でも、会話が盛り上がる中で、ふとお話いただけるときがあるんです。そういう技術も身についたように感じます。

──なるほど。

リスナーは失敗談も聞きたいものだと思うんですね。成功者が成功したことばかりを語っていると、どうしても心は離れてしまいます。しかし、成功している経営者も同じ人間で、つまずいたことがない人などほとんどいません。どこで苦労して、どこでマインドをチャージして、どこでチェンジできたのか──そういったパーソナルな部分を届けなくちゃいけないと思っています。

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「夜のラジオ番組で喋ってます?」質問されて音声の力を実感

──西脇さんはプレゼンのプロとして、多くの著書も刊行されています。プレゼンだと「目線誘導」などのテクニックがあるそうですが、ラジオは声だけなので、効果的な伝え方はまた異なるのかなと思います。どんな工夫をされていますか?

ラジオならではの工夫は、リスナーに想像してもらえるようにすることです。経営者の方と話す中で、「この会社が作っているものはどんなものなんだろう?」「社風はどんな感じなのかな?」など、そういった想像を膨らませてほしい。それこそがラジオの魅力だと思うし、音だけで映像も見えてくるような価値を電波に乗せているつもりです。

──西脇さんは、声や話し方にも説得力を感じます。何か訓練されたのですか?

ボイストレーニングなどは受けていませんが、喋ること自体がラジオも含めて私の仕事なので、聞き取りやすいようになど基本的なことを意識しています。声と言えば先日、お寿司屋さんに行ったときに、ラジオの凄さを感じることがあって。早い時間だったので店内には私しかいなくて、大将とお話をしていたんです。初対面だったのですが、「もしかして、西脇さんって夜のラジオ番組で喋ってます?」と質問されて。私を見たり名前を聞いたりしてわかったというのではなく、お店を片付けるときラジオを流しているそうで、私の声を記憶していたそうなんです。タクシーの運転手さんにも「ラジオに出ていませんか?」と聞かれたことがあって、声って印象に残るんだなと感じました。

──たしかにラジオは長時間、同じ声を聞くので、むしろ顔よりも「勘違いかな」という不安が生じず、話しかけたくなるかもしれませんね。ラジオの広がりを感じるエピソードですが、西脇さん自身の仕事に活きている部分はありますか?

ゲストを招いているので、シンプルに人脈ができました。「投資してください」「お客さんを紹介してください」というお願いもあって、ゲストの方の役にも立っているんじゃないかなと。

──仕事が次の仕事に繋がるというのはビジネスマンとして“あるある”だと思いますが、まさにそんな機能があるんですね。

いいハブになっていると思います。私もゲストの方の話を聞いて、“投資してみようかな”と思ったりもしますし、“こういうサービスないかな”と頭で思った時に、“じゃあ、あの人をゲストで呼んでみよう”とラジオにきていただくこともある。私自身にもプラスになっているんです。

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よく聞くエピソードは「海外経験が人生を変えた」

──番組で、印象的だった話はありますか?

「海外に行って自分が変わった」という話をされる方がすごく多いんです。例えば起業したきっかけを訊くと、「フィリピンに行って人生観が変わりました」とか。留学や旅行、仕事の赴任など滞在目的や時間はそれぞれですが、海外に行って自らのマインドが変化したというケースが多い。起業家はインスピレーションを得る能力が備わっている、とも言えるかもしれません。

──“海外旅行は人生観を変える”という話はよくありますが、それをビジネスに活かす力が起業家にはあるということですね。

まさにそんな気がします。

──幅広い分野の専門家が出演されています。“今後こんなゲストを呼んでみたい”などあれば教えてください。

失敗を経験した経営者をお招きしたいですね。どうやって苦境を抜け出したとか、どうやって失敗を繰り返さなくしたのか、生々しい体験をもっと届けたいと思っています。うまくいっている人が成功体験を話すと、成功バイアスを感じるじゃないですか。だから、苦労話もお届けすることで、番組がより豊かになるかなと。なるべく“自分のいけてない話”をゲストから聞き出すようにしています。経営者になって、お金を稼いで、ラジオにも出てるから、リスナーは眩しく感じるかもしれないけれど、完璧な人などそんなにはいません。そういった人間の影の部分もしっかりリスナーと分かち合いたいんです。

──成功者というと遠くに感じますが、そうした話を聞くと親近感が湧きますよね。

極端にヤンチャな人生から起業した人にもお話を聞いてみたいですね。あと今後は、セカンドキャリアとして起業した方の話も聞きたいです。サラリーマンの定年は近年伸びる傾向にありますが、どこかで区切りを迎えます。引退後は、お金もあるでしょうし、人脈もあるし、社会経験も積んでいるから、経営者に向いていると思うんですよ。これまでの番組のゲストは20〜30代が多かったのですが、リスナーは50代以上の方もいるので、セカンドキャリアの話があると、自分ごととして聞くことができますよね。そういう意味でもこれからもっと幅を広げていきたいです。

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ラジオは、新鮮な学びが常にあるメディア

──最後にリスナーにメッセージをお願いします。

ラジオは、新鮮な学びが常にあるメディアだと思うんです。本の場合、一冊には限りがありますが、レギュラーのラジオだと、翌週、その翌週と続いていきますから。そういう意味で、ラジオという媒体は人生を太くすることができるものだと思いますし、そう感じていただけるような番組をこれからも作っていきます。

実際、介護士として働いている方に「西脇さんのラジオはインプットできることがすごく多い」と言っていただけたことがありました。仕事帰りの運転中に私の番組を聴いてくださっているそうで。運転中は本を読むことができないし、テレビも見られない。そういう環境の中での情報摂取にラジオはピッタリですよね。そんな風に、耳を傾けてくれた人の人生が豊かになるようなお話を届けていけたらと思っています。

『SEVEN BANK GLOBAL BUSINESS CHARGE』は、ラジオでは毎週月曜-木曜 21:45-22:00。ポッドキャストでも配信中だ。

■ポッドキャストページ

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(取材・文=中山洋平)
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