最新家電でくつろぎ空間を作ろう 「片付けたいのに、片付かない」「収納しても、すぐに散らかってしまう」――。そんな悩みを抱えている方は少なくないでしょう。かくいう筆者もその一人で、今回のインタビューにはいつもの5割増しでチカラが入りました。お話を伺ったのは、インテリアコーディネーター・整理収納アドバイザーで2級建築士でもある田中カオルさん。田中さんの提案する“くつろぎ空間”とは、日常の家事がしやすく、休日は心安らぐ時間が楽しめること。そんな空間をつくるための実践的なヒントを伺いました。
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●片付けの基本は「物を減らす」
田中カオルさんは、オーダー家具設計の会社に勤めていた経験から、美しくかつ実用的な収納に知見を持ち、建築と片付けを融和させたインテリアの提案を心がけています。
自身のマイホームの空間設計とインテリアも手がけています。整っていながらも、生活面で実用性もある片付けと収納を実践し続けています。
よく言われることですが、片付けのファーストステップとして、収納用品を買い揃えてはいけません。その前にやらなければならないことがあります。それは「持ち物を見直すこと」です。
田中さんは「まずは数を減らすことをルールにして、習慣にしてほしいです」と強調します。
「全部必要と思い込んでいる人ほど、実は不要な物に囲まれています。」と田中さんは指摘します。いきなり筆者の耳が痛くなってきました。
『このデジカメだってまだ十分に使えるし、あのキーボードだって普通に入力できるし・・・』というような、妙なものばかりにこだわっているのは筆者ぐらいかもしれません。
一般家庭の方なら『この服あんまり着ないけど買ったとき高かったし、このエアロバイクもまた運動をしはじめるかもしれないし・・・』という人は多いでしょう。
しかし、「必要」と「不要」の区別はどうやってつければよいのでしょうか?
●「場所とモノの費用対効果」という考え方
「いろんな方法で判断できますが、私がよくお話しするのは『コストパフォーマンス』です」。田中さんが提唱するコストパフォーマンスとは、場所とモノの費用対効果だといいます。
筆者のようなモノを処分できない人たちは、そのモノにかけたお金にばかり注目してしまいますが、モノには「置く場所」が不可欠です。田中さんは、この置く場所にかかる費用にも注目してほしいといいます。
賃貸住宅なら、家賃を総平米数で割れば月の1平米あたりのコストがわかります。持ち家であっても、建築費をローン支払い年数で割って月額を算出すれば、同様にコストがわかります。
例えば、家賃10万円で50平米の賃貸住宅であれば、1平米当たり2000円/月です。2平米のクローゼットがあるのなら、その場所は毎月4000円で、倉庫を借りているのと同じになります。そう考えると、確かにクローゼットの中を整理したくなります。
●「よく使う収納スペース」を片付けよう
「片付けにはいろんな方法があります。まず最初に見えるところを片付けるとか。でも私が提唱するのは『よく使う収納スペース』を片付けましょうという方法です」と田中さんは話します。
片付けられないと相談に来るクライアントさんのリビングでは、掃除機や鞄などがしまわれていないケースが多いいそうです。つまり、見える場所に不必要なものが置いてあるから、片付いていない印象を与えるのです。
では、なぜ掃除機や鞄がリビングに置きっぱなしなのかというと、本来置いておくべき押し入れやクローゼットがいっぱいで、そこに仕舞えないからです。ですから、まずは押し入れやクローゼットを片付けて、仕舞える空間をつくりましょうということです。
「リビングにある必要のないものをクローゼットに移すだけでも、空間がすっきりします」と田中さんは話します。
収納スペースには、いつか使うかもしれないと思いながら何年も使っていないものや、もう使わないけれど思い出があるというものも多く入っているでしょう。
そんなときは「毎月、4000円を払ってでも置いておきたいかどうかと考えれば、本当にとっておきたいものだけになっていきます」と、田中さんは平米当たりのコストを判断材料にすることを推奨します。
収納スペースを圧迫しているだけかもしれない「使わないもの」を処分するには、とてもよい考え方です。
ここで、筆者による家電のプロから、いつくかの製品を紹介しましょう。
【プロの家電アドバイス】
使わないけれど、思い出があるので捨てるのには忍びないというモノを処分しやすくする方法として、デジタル化して思い出だけを残すのはどうでしょうか。
・モノ
スマホのカメラで撮影して、思い出を残すアプリで保管します。
・書類や手紙
ドキュメントスキャナで一気にデジタル化してクラウドに保存しましょう。
掃除機を片付けるためのスペースがどうしても確保できないという場合は、リビングに置いてもおかしくない「見せる」掃除機を選ぶのもありです。
●リバウンドしない収納の工夫
さて、前述のような考え方でなんとか片付けられても、結局また散らかってしまう…、というリバウンドを体験した人は多いでしょう。その原因の多くは「物が戻らない」収納にあります。
田中さんによると、リバウンドを防ぐ鍵は「使う場所に、使う物を収納する」こと。キッチンでよく使う調味料が高い棚の奥にあったり、リビングで使う文房具が別室にあったりすれば、元に戻すのが億劫になりがちです。
モノの居場所を決めておいて、使用後は必ず元に戻すというのはよく言われる片付けの基本ですが、戻す場所は使う場所とあまり離さないのが重要ということですね。
例えば、調理家電の炊飯器やミキサーなどは使うときだけ取り出すものですが、それらがリビングにあったら出すのも面倒ですし、仕舞うのはもっと億劫になりそうです。
結果、キッチン周辺に出しっぱなしで雑然とした台所になってしまいます。
キッチンは冷蔵庫や電子レンジ、コーヒーメーカーなど、様々な家電を使う場所です。常時使わない家電は、キッチンの周辺に仕舞う場所を作って、そこに納めるようにすることでリバウンドを防げます。
【プロの家電アドバイス】
・スペースがあまりとれないキッチンであれば、炊飯器やミキサーなどはできるだけコンパクトなものを選ぶのもありでしょう。
・炊飯器を兼ねる調理家電を選ぶという裏技も、家族構成や生活スタイルによってはありかもしれません。
●達成感を得やすい収納から始めよう
片付けが苦手な人は、どこから手を付けたらいいのかさえわかりません。そんな人に田中さんからのオススメは、「成果の見える」場所から始めることです。
苦手なことをがんばってやってみて、見た目がすっきりした!と感じられたら、さらに片付けようとモチベーションが上がるでしょう。
田中さんが特にオススメするのは、次の3カ所です。
・廊下に面した収納:掃除道具や日用品が多く、使う頻度も高いため、片付けた効果がすぐに実感できます。
・リビングに近い和室の押し入れ:和室とリビングが繋がっている家の場合、押し入れは生活の動線上にあるので、ここが整うと生活の質が向上します。
・階段下の物入れ:便利なようでいて不要品が溜まってしまうデッドスペースになりやすい場所。片付けることで有効活用できます。
「引き出し一つでも良いし、物入れでも良い。自分にとって“やり切れるサイズ”を選ぶことが、継続のコツです」と田中さんは語ります。
●くつろぎ空間をつくる五つの要素
不要なモノを減らして空間が整ったら、いよいよ“くつろぎ”を演出しましょう。田中さんが教えてくれたのは、以下の五つの要素です。
1. 照明
リビングをくつろぎの空間にするには「調光・調色機能付きダウンライト」がオススメです。リビングで子供が勉強することもあるので、集中したい時は白色の光、夜ゆったりとリラックスしたいときは暖色系で暗めの明かりにするとよいです。
さらに、部分照明や間接照明を組み合わせることで、生活シーンに応じた光の演出が可能になります。フロアランプを置くだけでも雰囲気が変わるので、まずはスタンドタイプの間接照明から楽しんでみましょう。
2.香り
朝の時間に余裕のある休日は、レギュラーコーヒーをゆったりと淹れて、豊かな香りでくつろぐのもよいです。アロマディフューザーを使うのも香りを楽しむ方法の一つですが、「どこに置くか」をあらかじめ考えて導入するのがポイントです。
3.音
お気に入りのアーティストの音楽や、格調高いクラシック、あるいは鳥のさえずりなどの環境音など、音によるくつろぎの演出も取り入れてみてほしいです。
昭和の時代は大きなステレオ装置が必要でしたが、今ならコンパクトなBluetoothスピーカーで十分にハイクオリティーな音が楽しめます。スピーカー付き照明や、プロジェクター内蔵型照明なら、天井に設置できるので場所をとらないし、上から音が降り注ぐ新鮮な感覚が味わえます。
4.色
色も心理的にくつろぎを感じさせる重要な要素です。インテリアとしては家具やカーテン、ラグなど大きな面積を占めるものの色を統一することで、落ち着きのある空間にできます。使う色は2〜3色に抑えるのが理想です。
5.アート
壁面にアートフレームやファブリックボードを配置すると、おしゃれ感が増します。ポイントは、壁をすべて埋めようとせず、1カ所にフォーカルポイント(目を引く場所)を設けることです。「余白の美」もインテリアの一部です。デジタルアートフレームやフォトフレームでの演出もオススメです。
【プロの家電アドバイス】
・調光・調色ができるLED照明
・Bluetooth対応バータイプ間接照明
・コーヒーメーカー
・空気清浄機
・Bluetoothスピーカー
・デジタルフォトフレーム、デジタルアートフレームなど
●まとめ〜片付けは「整えること」から「暮らしを楽しむこと」へ〜
片付けと収納は単なる整理整頓ではなく、「心地よい暮らしをつくるための第一歩」です。そして「くつろぎの空間」を整えることで、日々のストレスや疲れも軽減され、生活全体が整っていきます。
田中さんのアドバイスを実践すれば、きっとあなたの部屋も「居心地のいい場所」に生まれ変わるはずです。(3Dデザイナーズスクール https://3dschool.jp/ 学長・西脇 功)
田中カオル
インテリアコーディネーター、二級建築士、整理収納アドバイザー。オーダー家具設計製造会社から建築設計事務所を経てフリーランスインテリアコーディネーター(現職)。北欧系ナチュラルスタイルのインテリアコーディネートを得意とする。一般社団法人インテリアコーディネーター協会関西(https://ica-kansai.gr.jp/)所属。
西脇 功
3Dデザイナーズスクール(https://3dschool.jp/)学長。製薬会社勤務を経て、1987年にApple社のMacintoshに出会いコンピュータ業界へと転進。IT系企業数社でコンテンツマーケティング、広報・宣伝のプロとして活動。製品導入事例の執筆、オウンドメディアのWebサイト立ち上げからコンテンツ作成までを一人で担当。2020年独立し、合同会社天使の時間を設立。3DCGソフト活用のためのオンラインスクール運営や、Webメディアへの記事執筆を行っている。