
今年2025年は、1925年にNHKがラジオ放送を開始して以来「放送100年」となる。それを記念して、5月31日(土)・6月1日(日)の2日間にわたって「BK100年まつり」と題したイベントが、NHK大阪放送局1階アトリウムにて開催された。イベント2日目の6月1日の様子をレポートする。
【写真】「クリスマスケーキの回」と呼ばれる『カーネーション』の伝説のシーンの台本!
大正・昭和・平成・令和のBK放送史を一気見!
会場内には1925(大正14)年6月1日に社団法人大阪放送局(コールサインJOBK)としてラジオ放送を開始して以来、大正・昭和・平成・令和の日本を見つめてきたNHK大阪放送局(通称BK)の歴史を追ったパネル展示がずらりと並ぶ。パネルと共に、100年前に実際に使われたマイクや、1950年代のテレビ草創期に使われていたテレビカメラなど、ここでしか見られない希少品の数々が展示されていた。100年前に使われていた、電気を使わずにラジオ波を集める「鉱石ラジオ」を復刻させた展示では実際に聴取体験ができ、多くの人だかりができていた。
中でも目を引いたのが1945(昭和20)年8月15日、終戦の日のラジオの放送予定表。当時は随時放送内容が変更になるため、「予定表」に実際放送された内容を書き込んで保存していたそうだが、8月14日と8月15日の予定表には放送内容の書き込みがなかったという。当時の放送局にとって大混乱だったであろう2日間が垣間見える。
ツボを押さえたレアアイテムの展示に唸る
また、本イベントの目玉といえるのが、1964(昭和39)年度作品の『うず潮』以来、BKが制作してきた48作品の連続テレビ小説の展示だ。『うず潮』から『おむすび』(2024年度)に至るまでのBK朝ドラ全48作のパネル展示は圧巻。それぞれの朝ドラにまつわるアイテム展示も実に“ツボ”を押さえていて、会場を訪れた多くのBK朝ドラのファンを歓喜させていた。
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『純ちゃんの応援歌』(1988年度)でヒロイン・純子(山口智子)が美山村で応援していた野球少年たちのためにスタッフが手作りしたという布製のグローブ。『ふたりっ子』(1996年度)の舞台である新世界の“ミューズ”、演歌歌手・オーロラ輝子(河合美智子)ののぼり。『芋たこなんきん』(2006年度)でヒロイン・町子(藤山直美)が上梓した単行本。『カーネーション』(2011年度)でヒロイン・糸子(尾野真千子)の娘・直子(川崎亜沙美)と優子(新山千春)が奪い合った赤いバッグetc.。実に朝ドラファンの心理を「わかってる」展示であった。
昨年から今年にかけて昼の枠で再放送され、「心に残るBK朝ドラ」と題したファン投票で1位を獲得した『カムカムエヴリバディ』(2021年度)は特設コーナーが設けられ、作品内で出てきた各時代のラジオ12台が展示されるなど(実際はさらに多くの台数が登場したとのこと)、微に入り細を穿つディスプレイがなされていた。
展示のほかに、メインステージでは様々なショーも行われた。イベント1日目は「BK朝ドラコンサート」と題して、心を震わせた朝ドラの主題歌や劇伴を特別編成のバンドによる生演奏で披露。さらに、「歴代ヒロインが明かす! BK朝ドラのヒミツ」と題したトークショーが催され、『てっぱん』(2010年度)のヒロイン・あかりを演じた瀧本美織と、『舞いあがれ!』(2022年度)でヒロイン・舞を演じた福原遥、そして両作品に出演した松尾諭が登壇し、撮影時の思い出話に花を咲かせた。
演者もファンも涙『カーネーション』トークショー
そして2日目に会場を沸かせたのが、「あの名場面をもう一度! 尾野真千子×BK朝ドラ常連SP」と題したトークイベント。『カーネーション』のヒロイン・糸子を演じた尾野真千子と、「安岡のおばちゃん」を演じ、BK朝ドラに4作出演した濱田マリ、勘助を演じ、BK朝ドラに8作も出演している尾上寛之の3人が、『カーネーション』撮影時の「熱い日々」を懐かしみ、ときには涙ぐむ場面も。
約10カ月にわたる『カーネーション』の撮影を振り返って尾野は、
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「いっぱい、いろんなしんどいことはありましたね。だけどそれが、みんなで頑張ったから『辛い』『しんどい』が『喜び』になりまして、最後には宝物になる。もう二度とNHKに来たくないって思うんですよ、途中(笑)。だけどなぜか終わりのほうになるとみんなの顔が神様に見えて、友達・家族に見えてくる。このマジックは何なんだろう。子どもを産んだときの感覚に似ているのかな。苦しいんだけど、最後には宝物になってしまって、またBKに戻ってきたいって思ってしまう」
と声を震わせながら語った。また尾上は8作品も参加したBKの朝ドラについて、
「久しぶりにBK来させてもらったんですけど、さっき控え室行ったときにいんな人が迎え入れてくれて、今東京にいる人もわざわざ来てくれて。『勘助久しぶりやな!』って言ってくれたんですよ。実家というか、本当にみんな親戚みたいになってて。宝物のような場所だなって思います」
とコメント。
そして勘助の母で「安岡のおばちゃん」こと玉枝を演じた濱田はこう話した。
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「私も勘助と一緒で、撮影中やっぱりいいなあって思うのは『家族』だなって。スタッフさんの笑顔とか、愛情、技術、全部とっても安心して一緒にお仕事ができる。クラスでも『おもろいやつがNo.1』という土壌で生まれ育ってきた人たちだからかしら、『なぜこんなに楽しいの?』って思います。現場に笑顔が溢れている」
3人の愛に満ちたコメントに、思わず目頭を押さえる会場の朝ドラファンも見受けられた。
かくして演者の愛情、スタッフの愛情、ファンの愛情が響き合い、心地よいヴァイブスに包まれて、2日間の「BK100年まつり」は終了した。なお、「あの名場面をもう一度! 尾野真千子×BK朝ドラ常連SP」の模様は「らじる★らじる」で6月8日まで「聴き逃し配信」される。
(まいどなニュース特約・佐野 華英)