(画像:TBS ドラマストリームInstagramより) かつては演技が酷評されることもあった佐々木希さんの俳優業が絶好調。
佐々木さんは今クールの医療ミステリードラマ『天久鷹央の推理カルテ』(テレビ朝日系)に、橋本環奈さん演じる主人公の姉役でレギュラー出演中。エキセントリックな天才医師である主人公が唯一頭の上がらない存在で、普段は優雅でにこやかながら怒ると激変するというキャラを好演しています。
また前クールでは深夜ドラマながら『地獄の果てまで連れていく』(TBS系)に主演。かつて家族を殺された主人公が、顔を整形してその殺人鬼にベビーシッターとして近付いていくという復讐劇でした。
表向きは天使のような笑顔を見せる可憐な女性ながら、本当は悪魔のような殺人鬼だというキャラを渋谷凪咲さんが演じたのですが、佐々木さんと渋谷さんの怨嗟(おんさ)入り乱れる演技合戦が話題を呼んだのです。
◆悪女かと思いきや…朝ドラで演じたキャラが好評
以前は大根役者などと揶揄(やゆ)されることも少なくなかった佐々木さんですが、近年演じたキャラクターが好評を博すことがたびたびありました。
佐々木さんが2022年に出演した朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK)で演じたのは、視聴者たちの予想を良い意味で裏切る意外性のある社長令嬢役。その芸能事務所の社長令嬢は、ヒロインの恋人のトランペットの才能を見い出したのですが、登場初期はライバルになる悪女キャラなのではないか、と視聴者をざわつかせていたのです。
しかし、社長令嬢は純粋に音楽の才能に惚れ込んでいただけで、恋愛の泥沼展開を巻き起こすことはなく、好感度の高いキャラクターだったため、演じた佐々木さんの評判も良かったのです。
◆朝ドラが“フリ”になっていた怖いヤンデレキャラ
『カムカムエヴリバディ』の終了直後にスタートした2022年4月期の『やんごとなき一族』(フジテレビ系)では、そんな朝ドラの好演が盛大なフリになっていました。
土屋太鳳さん主演の『やんごとなき一族』は、庶民である主人公が上流社会の超セレブ一族に嫁ぐことになり、骨肉の争いに身を投じていくという物語。
佐々木さんが演じたのは、主人公の結婚相手(松下洸平さん)の学生時代からの友人役。大物政治家の娘で上流階級の教養も兼ね備えた清楚可憐なキャラ……と、途中まではそう思われていたのですが、豹変。主人公から結婚相手を奪おうとするクレイジーなヤンデレ女だったのです。
『カムカムエヴリバディ』で“悪女そうに見えて実は良い人”だったのがフリになっており、『やんごとなき一族』では“良い人そうに見えて実は悪女”という真逆の怪演を披露したことで、役者・佐々木希の評価はさらに上がったのでした。
◆清楚系とはほど遠いやさぐれた人生を歩む元マドンナ
佐々木さんは2024年1月期の恋愛ドラマ『アイのない恋人たち』(テレビ朝日系)にもレギュラー出演。
恋愛偏差値が低いワケありの男女7人が織りなす恋愛群像劇で、佐々木さんが演じたのは主人公(福士蒼汰さん)の高校時代の元恋人役。
高校時代は生徒会長をしておりピアニストを目指していた学園のマドンナだったものの、現在は夜職(水商売)などをしており、男をとっかえひっかえ。主人公と久しぶりに再会したときも、不倫からの略奪愛で交際していた中年男性との別れ話の真っ最中で、半狂乱になった男から「一緒に死のう」と首を絞められる修羅場を演じていました。
佐々木さんは、落ちぶれて清楚系とはほど遠いやさぐれた人生を歩む元マドンナという難役を、見事にまっとうしたのです。
◆「渡部の妻」でい続けることのリスクは高かったが…
佐々木希さんを語るうえで、避けて通れないのは夫であるアンジャッシュ・渡部建さんの不倫スキャンダル。
かつては芸人のなかではクリーンなパブリックイメージを持ち、数々の有名番組のMCも務めていた彼が、2020年に複数の女性と不倫していたことが報じられ、しかも多目的トイレを悪用していたことがダメ押しになり、好感度が地に落ちたのはご存知のとおり。
佐々木さんの立場からすれば、夫の収入が大幅ダウンしたのはもちろんのこと、「渡部の妻」でい続けることはタレントビジネスのブランディング的にかなりリスクが高かったでしょう。
◆山あり谷ありの経験が演技の幅を
けれど彼女は離婚という選択はせずに、不貞夫を支え続けるという決断をしたのです。
タレントとして自身もイメージダウンしてしまう可能性が充分あったものの、結果的に大スキャンダルを起こした夫を許し健気に支えていく姿は、世間で好意的に受け止められ、“佐々木希評”が急上昇したのでした。
そんな彼女の山あり谷ありの経験が役者としての“仁(にん)”を作り上げ、演技の幅を広め、深めていくことに役立ったのかもしれません。
放送中の『天久鷹央の推理カルテ』では、普段は優雅で温厚な振る舞いながら、主人公に激怒するときや、ソフトボールで剛腕をふるうピッチャーをするときは、性格が豹変するというギャップのある役どころ。
これまでの役者としてのキャリアや私生活での人生経験が大いに役立っていることでしょう。
<文/堺屋大地>
【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』(扶桑社)で恋愛コラム連載、『SmartFLASH』(光文社)でドラマコラム連載、『コクハク』(日刊現代)で芸能コラム連載。そのほか『文春オンライン』(文藝春秋)、『現代ビジネス』(講談社)、『集英社オンライン』(集英社)、『週刊女性PRIME』(主婦と生活社)などにコラム寄稿。LINE公式のチャット相談サービスにて、計1万件以上の恋愛相談を受けている。公式SNS(X)は @SakaiyaDaichi