久しぶりにドライヤーを使うみねお―[振り返れば青学落研]―
YouTubeチャンネル登録者数180万人を突破した「バキ童チャンネル」。
唯一無二の企画とキャラクターを活かした動画が支持される一方で、中心メンバーのお笑いコンビ、春とヒコーキが出会った青山学院大学・落語研究会についてのエピソード動画も強い人気を集めている。
そんな「青学落研の話」を、チャンネル出演者であり、青学落研出身者であり、春とヒコーキの学生時代からの友人でもある芸人・町田が振り返る。
第10回は、町田の憧れる男『みねお』について。
◆みんな“みねお”になりたい
ぐんぴぃをして「俺はみねおになりたいんだよ!」とまで言わしめた男でもある。
みねおは土岡や私と同期であり、勝新太郎の若い頃を少しチャーミングにしたような見た目をしている。
出会った頃からみねおは「エロゲーこそが全てのコンテンツで最も素晴らしい」とよく語っていた。
かつての私はそれを聞いて、そんなわけねぇだろとはいかないまでも、何か言ってやがらぁこいつと、みねおを大変に侮っていた。
みねおに対する印象は、共に大学生活を過ごすうちに大きく変わっていった。
みねおは、大学一年生の序盤ですぐに彼女を作っていた。当時の落研、特に私たちやぐんぴぃ周りの部員に彼女がいる人間など全く存在していなかったし、そもそも私などは落研に入った時点で彼女を作ることを半ば諦めてしまっていた。
好きだと思った相手にはすぐに気持ちを伝えられる行動力があるのがみねお。ただ、みねおのことをすごいと感じるようになったキッカケはその後である。
◆現状に不満を言わない男、みねお
みねおが彼女に振られてしまった時である。
放課後、震えながらみねおが落研の部室に入ってきた。
「振られた…!〇〇ちゃん、俺が悪いとかじゃないんだけど、俺と付き合ってるって事実で飯が喉を通んなくなっちゃったんだってさ…!」
なかなかに悲しい振られ方だ。
「まぁオーケイ!今はたぶん俺落ち込んでるんだろうけど、仕方ないからね!」
悲しみを悲しみとして受け止めつつそれを瞬時に割り切ることのできるみねおの懐の深さ。私はその時から「カッコいいなこいつ」そう思うようになった。
みねおのカッコいいところ、もう15年以上の付き合いになるが、みねおが現状に不満を言っている姿を私は見たことがない。
◆みねおが住んでいた不自然な部屋
ある日、みねおの住む家にお邪魔させてもらった時、マンションの何部屋もあるうちのみねおの家の扉だけが新品のように綺麗だった。
そのことをみねおに聞いてみると、「あーそうなんだよね、所々なんか新品みたいな箇所があるんだよねぇ。でもこの部屋、なぜか他の部屋より安いんだよねぇ」
「それって事故物件なんじゃないか?」
そう疑問に思い、事故物件一覧サイト、大島てるをみねおと見てみると炎のマークがはっきりと記され、火事、死亡と書かれていた。
それを見たみねおは
「あーそうなんだ。だから家賃安いんだあ」
などと呑気に全く気にする様子もなかったので「なんか気味悪くなったりしないの?」とみねおに聞いてみると、
「まあ、俺に関係ないからねぇ。これ見てよ」
そう言ってホームシアターのデカい画面で可愛い女の子がアイドルを目指すアニメを見せてくれた。
◆みねおの生き方を表すような高座名
みねおは物事の価値判断を客観的な物差しに委ねることをしない。
みねおは部屋に無駄毛が散らかるのが嫌で掃除の手間をなくすために、全身脱毛をしている。
みねおがEDになってしまった時、みねおは勘で電気のマッサージ機を自分のそれに当てることでEDを完治させた。
SNSに溢れかえる情報の海に溺れ、ともすれば自分自身の本来の喜びがわからなくもなってしまう今日、みねおはいついかなる時も周囲に流されないで生きていた。
真の意味での情報強者、それがみねおなのである。
みねおはIT系の学部に通っていたので、IT革命をもじって
『愛亭革命』
という高座名を付けてもらっていた。ただ誰も愛亭革命と呼ばず、みねおとしか呼ばないので、愛・地球博の開催とも重なり、
『愛・みねお』
に改名することになり、最終的には
『愛』
一文字となった。二度の悪ふざけともとれる改名をみねおは嫌がりも面白がりもせず淡々と全てを二つ返事で受け入れた。
『愛』
何と美しい高座名だろうか。足るを知る男、みねおの生き方を表しているようである。
迷いの中にある時、私はみねおのように生きられたらなといつも思う。
―[振り返れば青学落研]―
【町田】
ぐんぴぃの友人。芸人としての活動もしている。@saisaisai4126