3日に89歳で逝去した長嶋茂雄さんは、音楽界の交友関係も深かった。その1人が1959年に長嶋さんの応援歌「男の友情背番号・3」を発売した石原裕次郎さんだった。
38年前の7月、東京・成城の自宅で営まれた裕次郎さんの通夜の2時間くらい前。社用車で事前取材のデータをまとめていると、ベテランドライバーが「あっ長嶋さんだ」とつぶやいた。50メートルくらい先の曲がり角、すでに日は落ちていたが、シルエットのスーツ姿はなぜか遠目にも長嶋さんと分かった。足は速い。あっという間に車の脇に来て日刊スポーツの社旗を確認すると窓越しにのぞいた。
顔見知りの担当記者でないことが分かると、申し訳ないというように顔をクシャッとして裕次郎さん宅に向かった。想像以上の大スターのきさくさに驚き、会釈するのがやっとだった。
その後、囲み取材では「裕ちゃんを思い、『錆びたナイフ』を歌いながら来ました」と話したことを覚えている。裕次郎さんが主演、主題歌も歌った「錆びたナイフ」は殺人事件を扱った作品で、決して場にふさわしくはなかったが、長嶋さんが言うと不思議に2人の友情を表す温かいコメントに聞こえた。
「シゲ」「裕ちゃん」と呼び合った仲で、長嶋さんは脳梗塞に倒れた後も含め、命日には毎年裕次郎さん宅を訪れている。野球の直感のように耳コピだけで裕次郎さんの曲を器用に歌いこなした。二十三回忌では「わが人生に悔いなし」を披露している。
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93年、ZARD、WANDS…当時のトップアーティストがそろった「果てしない夢」には、ゲストボーカルとして溶け込んだ。これも耳コピ力のなせる技に違いない。【相原斎】
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