妊娠中の鉄不足、雄化に影響=マウスで確認―大阪大
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2025年06月05日 00:31 時事通信社

妊娠中のマウスが鉄分不足になると、胎児の精巣形成が阻害され、雄化を妨げることを大阪大の研究グループが解明した。性染色体だけでなく、母体の栄養状態も胎児の性決定に影響を与える可能性を示す研究結果という。論文は5日、英科学誌ネイチャーに掲載された。
多くの哺乳類の雌雄はXとYの性染色体の組み合わせによって決まり、「XY」なら雄、「XX」なら雌になる。ただ、生殖腺が精巣へと発達するにはY染色体にある「Sry遺伝子」が機能する必要があると判明している。
研究グループは、Sry遺伝子がよく働いている細胞では、鉄を多く蓄積していることに着目。細胞内に鉄を取り込むたんぱく質を持たないマウスを妊娠させ、胎児の細胞を分析したところ、鉄の量が大きく減り、Sry遺伝子の働きが抑えられた。
また、妊娠したマウスに体内の鉄を取り除く薬を飲ませたところ、卵巣と精巣を両方持ったり、雄から雌への性転換が起きたりするマウスが現れた。妊娠前から母体に鉄欠乏食を与えた胎児でも、一部で性転換が確認された。
研究グループの岡下修己助教は「今回の知見を直ちにヒトに当てはめることはできないが、妊娠中の栄養状態が胎児の発達に及ぼす影響は無視できない」と話している。
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