「対馬丸」の犠牲者を追悼する慰霊碑「小桜の塔」で供花される天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=5日午前、那覇市 戦後80年に合わせて沖縄県を訪れた天皇、皇后両陛下と長女愛子さまは5日、学童疎開船「対馬丸」の犠牲者を追悼する那覇市の慰霊碑「小桜の塔」と対馬丸記念館を訪問された。生存者や遺族らとも懇談した。
学童ら約1800人を乗せた対馬丸は1944年8月、米軍の魚雷攻撃を受け沈没。少なくとも1484人が犠牲となった。ご一家は塔の前に白い花束を手向けて深々と拝礼し、犠牲者を追悼した。
3人とも初めて訪れた対馬丸記念館では、館長の平良次子さん(62)の案内で、犠牲となった子どもたちの遺影や遺品などを見て回った。天皇陛下は「紙資料の保存は難しくないですか」と質問し、愛子さまは「肖像画を集めたらどうでしょうか」と話したという。
館内では生存者や遺族、語り部計9人と懇談。陛下は、両親ときょうだい7人を亡くした高良政勝さん(85)を「大変でございましたね」といたわった。皇后さまと愛子さまは、展示されていた高良さんの兄からの手紙について熱心に尋ねた。
高良さんは在位中の上皇ご夫妻の訪問時にも面会。終了後、取材に「皇室の方々に2代、3代と対馬丸に関心を持っていただけたことは非常に光栄」と語った。
花岡麗華さん(49)は、息子が小学生時代に記念館の児童合唱団に所属。その縁で息子と一緒に高良さんから話を聞く機会があり、体験に衝撃を受けて「語り部」を志したと説明した。ご一家は静かにうなずいて話を聞き、皇后さまは「合唱団は何人ぐらいですか」、愛子さまは「何を歌っていたんですか」と尋ねたという。
その後、ご一家は「かりゆしウエア」に着替えて国営沖縄記念公園の首里城地区を訪問。75〜76年に開催された沖縄国際海洋博覧会の企画展を鑑賞後、2019年の火災で焼失した首里城正殿の屋根の復元状況をガラス越しに見学し、来年の完成を目指して復元に携わっている職人とも交流した。1泊2日の日程を終え、夜に特別機で帰京した。

対馬丸記念館で生存者の高良政勝さん(右)と言葉を交わされる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=5日午前、那覇市(代表撮影)

首里城正殿の屋根の復元状況を見学された天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=5日午後、那覇市(代表撮影)