東京都議選の立候補予定者の街頭演説を聴く人たち=1日、東京都杉並区(一部、画像処理しています) 東京都議選(22日投開票)の告示が13日に迫る中、候補者や政党のSNSでの発信が活発になってきた。新人を中心に、動画をSNSに投稿し知名度アップを狙う候補者が多く、「できることは試していきたい」との声が聞かれる。一方、偽情報のまん延や誹謗(ひぼう)中傷といった問題もより深刻になっており、候補者や陣営は対応に苦慮している。
◇「ショート動画」が急拡大
選挙でのSNS利用を巡り、文章や写真に加え、自己紹介や街頭演説を1分程度にまとめた「ショート動画」が昨年以来急拡大している。ユーチューブやインスタグラムでは、視聴者の居住地や年代に応じてこうした動画を広告として表示する仕組みがあり、政治活動として認められている。
3期目を目指す現職も今回から広告を積極的に活用。「ビラの投函(とうかん)に使う費用の一部を動画広告に振り向けている」と話す。この候補者の選挙区では複数の候補が同様の手法を用いており、広報戦略として浸透しつつある。
◇「地域活動が最善」の声も
ただ、SNSの効果を測りかねる候補者も少なくない。4月に千葉県茂原市議選で初当選した高沢知佳代氏は「街頭演説は必ず動画で配信するようにした。どちらかではなく、併用していくのが大事ではないか」と話しており、有権者と直接触れあいつつ、SNSも活用した。
都議選に出馬する女性候補は、もともとユーチューブなどでの発信を得意としてきたが、商店街や駅前での街頭演説やビラ配りも精力的にこなす。「時間や人、お金が限られる中で地域での活動に力を入れるのが最善だと思う」と語る。
◇偽情報、中傷に懸念
候補者らはSNSでの偽情報の拡散や誹謗中傷にも警戒を強める。ある陣営は告示後にネット上の情報をチェックする専門部隊を配置する。無用な争いを避けるため、「投稿に反論しない」(関係者)方針で、ルールに従って通報などを行う考えだ。
成蹊大学文学部の伊藤昌亮教授(デジタルメディア論)は、SNSの効果や影響に関し「地域とのリアルなつながりを有権者が持っているかどうかによる面もある」と分析。都議選でも候補者や支援者への中傷などが懸念されるが、「SNSは私企業がやっている。事実上公的なものにもなっているが、政府は規制がやりにくいだろう」と話している。