
スーツを着て毎日働く、いわゆる「普通のサラリーマン」。世間ではその存在が「当たり前」のような存在として見過ごされがちですが、そんな「普通の仕事」の裏側にも、葛藤や成長、誇りがあります。漫画家の吉谷光平さんサイコミで連載中の漫画『今どきの若いモンは』の一部エピソードである作品『はじめて父を尊敬した日の話』がX(旧Twitter)で注目を集めています。
【漫画】「サラリーマン、めっちゃすげぇじゃん」…はじめて父を尊敬した日の話・全編を読む
物語は、若手社員・金松のミスで取引先へ謝りに行くも、取引先の社長の態度の悪さから金松が怒ってしまう場面から始まります。しかし取引先からすれば、頼んでいた部品が届かない事態は死活問題なのです。
もしこのトラブルによって取引先企業の仕事が失敗してしまった場合、この取引先企業が倒産してしまい、そこに勤める社員が路頭に迷う危険性があったのです。この事実を社長に説かれた金松は、萎縮して何も話せなくなってしまうのでした。
その時、先輩社員であり同作の主人公でもある麦田は、社長へと再度謝罪をし、さらに新規取引の提案書を渡そうとします。しかし怒りが冷めやらぬ社長は、麦田が手に持っている提案書を払い落としました。
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もしこの提案書を金松が渡そうとしていたら、払い落された時点で動けなくなってしまうであろうところ、麦田は地面に落ちた提案書を拾い集めると、強い信念を持つような瞳で社長を見つめながら、再び提案書を渡そうとします。
麦田の粘りに根負けした社長は、提案書を受け取り、仕事に戻っていくのでした。その後、帰りの車内でわざと明るく振る舞う麦田に対し、金松は、社長を怒らせた失敗についてなぜ自分を怒らないのかと聞きます。この質問に麦田は「私もそうしてもらったから」と優しく答えるのでした。
「人は理屈では動かない。気持ちで動いている」と諭す麦田の言葉を黙って聞く金松。かつて、先輩である麦田に反抗的な態度を取っていた自分を思い出し、金松は自責の念に駆られるのでした。帰り道、一人で歩きながら自分の未熟さや軽薄さに情けなくなるも、みんな何かを背負って戦っているんだということに気づきます。「サラリーマンなんて楽勝だと思ってた」「みんなただの歯車 そう思ってた」「全然違った」「サラリーマン めっちゃすげぇじゃん」と心の中でつぶやきます。
帰宅後、金松は食卓でくつろぐ父親に、どうして仕事の話を家でしないのかと尋ねたところ「かっこわりい」という意外な回答を言われます。
家に帰っても仕事の話などはせず、無言でテレビを見ながらくつろいでばかりいる父親。そんな父親に嫌悪感を抱いていた金松ですが、実は社会で戦い続けており、その疲れを家庭に持ち込まない尊敬すべき人だと気付くのでした。同作について、作者の吉谷公平さんに詳しく話を聞きました。
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新入社員の金松やその父にはモデルが?
ー麦田さんの、ちょっと不器用だけど伝わる言葉選びはどのように思いついているのですか?
麦田のセリフは理論的にならないよう、感情的で一生懸命なキャラクター性が伝わるよう意識しています。
ー金松くんの表情が後半どんどん変わっているように感じましたが、意識してこのように描いたのでしょうか?
はい、意図的に変えています。「一皮むけました!」みたいに感じてもらえたら嬉しいです。
ー父親に対して感じた変化の描写がとても感動的でしたがモデルはいるのでしょうか?
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実はこの話、実体験として自分が父に対して感じたことをほぼそのまま描きました。
(海川 まこと/漫画収集家)