“超有名歌手の父”を持つ若手俳優2人の才能と、意外な共通点「うっとりするくらいに…」

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2025年06月16日 09:20  女子SPA!

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※櫻井海音instagramより
 ここ数年、いわゆる“二世俳優”と呼ばれる若手が、空前のラッシュ状態でその才能をきらめかせている。

 代表的才能はいくらでも列挙できるのだが、ここではいずれも歌手の父をもつ、ふたりの若手俳優を紹介する。

 櫻井海音と宮沢氷魚。このきらめく若手に類似する演技とは? 男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

◆抽象的な共通点

 櫻井海音と宮沢氷魚は、ともに有名な歌手の父をもつ。前者は、国民的ロックバンド「Mr.Children」のボーカル・桜井和寿。後者は、1986年に結成されたロックバンド「THE BOOM」の元ボーカル・宮沢和史。息子たちは、それぞれ俳優として活躍している。

 みたいな具体的でキャッチーな話題性は、さして重要ではないのかもしれない。いわゆる二世俳優の枠組みに決して押し込められない櫻井海音と宮沢氷魚の才能は、むしろ極めて抽象的な共通点によって鮮明になると思うからだ。

 彼らは俳優なのだから、とにかく具体的な作品例から読み解いてみよう。まず櫻井海音から。筆者が彼の演技を初めて見た作品はたしか、齊藤京子主演ドラマ『泥濘の食卓』(テレビ朝日系、2023年)だったかと思う。

◆ドロドロした不倫ドラマ

 同作は、主人公が妻帯者である上司を慕い、その上司も不倫関係をずるずる続け、上司の息子が主人公に恋い焦がれるという図式を描く。ひとつの不倫が激しい情欲の連鎖となる。タイトルを見てわかるように、ドロドロの不倫劇を極める。

 櫻井が演じるのが、上司の息子・那須川ハルキ役である。大人しい性格の高校生に見えて、齊藤演じる主人公を一度好きになると、何度もその名前を口ずさむくらい感情が高ぶる。

 松本まりか主演の不倫ドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系、2024年)で年上の相手に恋する高校生役を演じた野村康太も同様だが、ドロドロした不倫ドラマであればあるほど、若手俳優の演技は、明確な一打のように際立つ。それはなぜか?

◆わかりやすく勉強になる演技

『泥濘の食卓』にしろ『夫の家庭を壊すまで』にしろ、ドロドロな展開一直線のシナリオ上で、主人公たちはその方向目指してひた走る。櫻井が演じるサブキャラクターも例外ではなく、ドロドロ展開の重要な推進力を担う。

 つまり、ドロドロ展開になるために一点集中、物語の加担者として、喜怒哀楽のメリハリがわかりやすい演技が求められる。櫻井のような若手俳優にとっては、一つひとつの感情を結晶化させた一粒の演技に徹することで、演じるキャラクターの感情を分解するレッスンになる。わかりやすい演技でありながらわかりやすく勉強になる演技というわけだ。

 そうした役柄の解像度をさらにあげる一助になるのが、もうひとりのサブキャラクターを演じる原菜乃華だった。原が演じる幼馴染役は、恐るべき執着でハルキを追い回す。彼女の執着を振り払おうとするハルキが激しい怒りをあらわにするのだが、それによって櫻井の「怒」一点の芝居が粒立つ。

 演技の相乗効果をうんだ原とは、『【推しの子】』(Amazon Prime Video、2024年)でも共演している。今度は『【推しの子】』について語る必要があるが、この作品の櫻井がいわば、『泥濘の食卓』で感情を分解し尽くしたからこその達観した名演だった。

◆光と密接に関係がある俳優

 第2話で櫻井演じるアクアが妹のルビー(齊藤なぎさ)と室外から室内に移動する印象的な場面がある。彼らが室内に入ると、画面奥に広がる室外がやけに明るい(白飛びしている)。

 映像のテクニカル的には光量が多いということになるのだが、この光が満たそうとするまばゆい画面上に存在する櫻井がうっとりするくらい神々しい。

 で、このうっとり神々しい光の画面から導かれる才能が、宮沢氷魚なのだ。画面上の光との関係性というのがふたりの俳優の共通点なのだが、宮沢は櫻井以上に光と密接に関係がある。というのも、宮沢の演技を特徴づける目の演技と強く関係しているからだ。

 例えば、宮沢が球団新人スカウトを演じたドラマ『ドラフトキング』(WOWOW、2023年)で、日差しが降り注ぐグラウンドに入ってくる場面がある。その瞬間、強い陽光が宮沢の目元に差し込んで、見惚れるくらい美しい琥珀色の瞳がくっきりきらめく。光が満たす画面上でこれほどきらめく目の演技ができるのは宮沢くらいだと思う。

 あるいは、トランペッター役を演じた『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』(TBS系、2024年)第3話冒頭場面。宮沢演じる奏者が、さわやかな田園の中でトランペットを吹く。ここでも絶妙な角度から入り込む陽光(朝日)が、トランペットの金色以上に宮沢の瞳をきらめかせる。

 光のオンオフで目と瞳の演技を明確に際立たせる宮沢だが、実は彼の父・和史もまた同じ色の瞳の持ち主。横浜流星主演の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)で渡辺謙演じる老中の息子役を演じる宮沢は、持ち前のきらめく瞳の演技を逆に温存しているのが面白い。

 こうして抽象的な光というテーマで読み解く櫻井海音と宮沢氷魚の魅力がたしかにあるのだ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

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