
「日本の大相撲なのに、私が優勝したときは輸入車のオープンカーだった。もうそれが悔しくてね」
これは、歴代2位となる63連勝を記録、優勝回数は45回、横綱在位は84場所という史上最多記録を持つ第69代横綱の白鵬の言葉。
大相撲の優勝パレードは、これまでベンツやアウディなど外国産のオープンカーで行われてきた。優勝旗を持つ騎手を従え、優勝力士が後部座席でバンザイをし、国技館を出発するあのシーンに使われる車を見たことがある人は多いだろう。
これまで45回も優勝した白鵬は、冒頭のような思いを抱いていたことをトヨタ自動車の豊田章男社長に打ち明け、優勝パレードの車が輸入産から国産のトヨタ車に変わったのは昨年1月のこと。
相撲協会とトヨタ自動車の関係は
「白鵬の強いリクエストもあり、昨年の初場所から新型センチュリーSUVオープンカーに変更されたんです。日本最高級車の新型モデルで優勝者を称えたいという当時の宮城野親方(白鵬)の思いに応えたのが豊田社長でした。力士が乗るとあって約500kgまで耐えられるサスペンションになっているようです」(相撲協会関係者)
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優勝力士と騎手と後援者の3人が後部座席に乗ることができ、これまで黒塗りだったボディも白星を意味する真っ白に仕上げられた、まさに世界で一台しかない優勝カーとなっている。
白鵬と豊田社長の“友情”は長くて深い。白鵬が相撲協会を退職し「世界相撲グランドスラム」構想を打ち出した矢先に、アマチュア相撲を統括する日本相撲連盟会長に豊田氏が就任。まるで示し合わせたかのようなこの再スタート。協会を離れ、世界に相撲を広める決意をした白鵬にとって、心強い存在となっている。
そんな全力士の憧れと言っても過言でないこの優勝パレードオープンカーの使用にに、“待った”がかかっているというのだ。
「先日行われたトヨタの株主総会で、豊田社長がこのセンチュリーの提供を、相撲協会から一度引き取るということを示唆したようなんです。明言は避けたようですが、今後相撲協会との話し合いが行われるのではないでしょうか」(スポーツ紙記者)
やはり、白鵬の退職がここにも関係していると思われる。
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豊田社長は株主総会で白鵬の退職について「こんな終わり方ないよね」といい、2010年からの付き合いを告白。「友人として、そしてお互いアスリートとして、本気でその道の勝負をかけているというところで、いろんな共通項がある」とし、「相撲を世界に広め、『こんなスポーツがあるんだよ』ということを白鵬さんと共にやっていく。トヨタの株主総会で決意表明するのはアレだが、ぜひとも応援いただきたい」と宣言した。
違うフィールドで相撲を盛り上げていくため、白鵬のいない相撲協会との一線。世界に一台しかないオープンカーでの優勝パレードは、2場所連続4度目の優勝を果たし横綱昇進を決めた大の里が最後となってしまうのだろうか。