
F1第10戦カナダGPレビュー(前編)
これまで不運ばかり見舞われてきたカナダGPで、今年も角田裕毅(レッドブル)のジンクスは続くのか。
マシンにマックス・フェルスタッペンとまったく同じ仕様のフロアを装着し、どのくらいフィーリングが変わるのかをじっくり確かめようとコースインした土曜午前FP3の走り始めから、角田はハンドリングに違和感を感じていた。
「左右で重さが違う。左はアンダーステア(曲がりにくい)で右は軽い。マシンが勝手に右に進もうとする」
角田はガレージに戻ってフロントブレーキ周りの補修作業を強いられ、たった1時間しかないフリー走行の時間を大幅にロスすることになってしまった。
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ようやくコースに復帰できたのは残り7分の時点。ソフトタイヤで2周の確認走行をするのが精一杯で、最新スペックのマシンを十分に習熟できたとは言えず、午後の予選に向けてはほぼぶっつけ本番の状態で臨むこととなってしまった。
予選の本命になる可能性があったミディアムタイヤの感触を確かめることもできず、予選をソフトタイヤのみで戦うことになってしまったのも、ジョージ・ラッセル(メルセデスAMG)やフェルスタッペンがミディアムで最速タイムを刻んだことを考えれば痛かった。
「なんかうまく波に乗れていないなぁという感じですね。フロアとかあれこれすべて変えて、マシンのことを感じ取っていきたいと思っていたFP3があんなことになってしまったのは、すごくつらかったですね......。
僕はまだマシンのことを学んでいる段階なので、未知数な部分もありますし、限界まで攻めた時にどうなるかはわからない。そこまでマシンを信頼して攻めていくことができない状況でしたから」
Q1で落ちてもおかしくないと覚悟して臨んだ予選だったが、Q3進出まで0.099秒という11位。状況を考えれば決して悪くない結果であり、なによりマシンの性能向上を感じられたのがポジティブだった。
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「フィーリングは間違いなくよくなっていましたし、マシンの速さは増していると思います。それだけにFP2とはマシンの挙動がかなり違っていましたし、Q2の最後のプッシュラップでもどのコーナーであとどのくらい速く走れたかはわかっています。ふだんはそういうのが1〜2箇所ですけど、今回はもっとたくさんありました」
【10グリッド降格の厳しいペナルティ】
ただし、FP3中に赤旗が提示された際、右リアタイヤを壊してスロー走行していたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を抜いてしまい、角田には10グリッド降格ペナルティが科されてしまった。
ダメージを負ったマシンの後方を走るリスクを考えれば、視界の開けたバックストレートで先行することに何の問題があるのか──というのが、角田とレッドブルの主張だった。しかし、赤旗提示時はコース上に予測不能な危険が生じている可能性に備えることが大前提であり、追い抜きは許されないというのがルール。
大きくスロットルを戻して合図を送るなど、安全確認をしっかりと行なったことをアピールしていたのなら、情状酌量の可能性もあったように思われる。だが、後方のルイス・ハミルトン(フェラーリ)がピアストリを見て減速し、追い抜きをしていないことも含めて、この厳しいペナルティは仕方のないものと言わざるを得なかった。
◆つづく>>
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