帝国データバンクは、2024年度業績における主な紳士服7社のスーツ事業について調査・分析を行った。営業利益は177億円で、前年度(166億円)比6%増となり、コロナ禍前の2018年度(221億円)に迫る水準まで回復したことが分かった。
【画像】主要紳士服7社のスーツ事業 売上高・営業利益(帝国データバンク調べ)
紳士服7社の店舗数は、2024年度末時点で約2300店となり、コロナ禍前で最多だった2017年度末の2997店から約700店減少し、8割前後まで縮小した。これは、コロナ禍に実施された大規模な店舗整理に加え、従来の郊外型の大型店舗から、展示数を絞った都市型の小規模店舗へのシフトが進んだため。原材料価格の高騰やリモートワーク普及による服装のカジュアル化、少子化による新社会人の減少も影響し、既製スーツの需要は縮小傾向が続いている。
一方、近年は品質を重視する消費者や、個別のカスタマイズを好む層の増加により、オーダーメードスーツの需要が拡大。その結果、1着あたりの客単価が上がり、「量から質」への転換が進んだことで、利益面が改善している。
特に、青山商事やAOKIホールディングスは、オーダースーツやカジュアルウェアの販売強化によって増益を達成した。業界首位の青山商事は、自社オーダースーツブランド「Quality Order SHITATE」が堅調で、売上高は減少したものの営業利益は1割以上増加。2025年3月期のメンズスーツの平均販売単価は3万4076円と、前年から7.3%上昇した。
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AOKIホールディングスも、女性向けの高機能ウェアやビジカジ(ビジネスカジュアル)ウェアの品ぞろえ強化が奏功。新入学や新社会人向けの需要を取り込み、ファッション事業で増収増益を確保した。こうした動きを受け、パターンオーダーを含むオーダースーツの認知度は高まりつつあり、中小の紳士服店でも販売に注力する傾向が広がっている。
帝国データバンクは、「業界全体で価格改定やコスト削減が課題となっているものの、低価格化が進んでいたスーツの付加価値向上や、ビジネススーツ以外の商品の強化が功を奏し、新たな“成長”の兆しが見え始めている」と分析している。
今回の調査は、主要な紳士服7社(青山商事、AOKIホールディングス、コナカ、はるやまホールディングス、銀座山形屋、タカキュー、グローバルスタイル)の「スーツ・フォーマルウェア」セグメントの売上高合計をもとに実施。2024年度の数値には、帝国データバンクによる推計値を含んでいる。
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