
初めての子育ては、予想をはるかに超える混乱と発見の連続。そんな育児のドタバタを、まさかの「悪の総帥」の目線から描いたのが漫画家・オオカミタホさんによる作品『悪の組織の子育て日記』です。「悪の総帥」という非日常的なキャラクターを通じて、育児初心者のドタバタを描いた同作からの抜粋『悪の組織が人造人間(赤ちゃん)を育てる話』は、X(旧Twitter)で注目を集めています。
【漫画】「悪の組織が人造人間(赤ちゃん)を育てる話」全編を読む
舞台は海と崖、さらには不気味な森がひしめき合う場所に建つ悪のアジトから始まります。世界征服を企む総帥は、部下の松戸から最凶の人造人間(ホムンクルス)が完成した知らせを受けました。組織のエースとして総帥から大きな期待を寄せられる人造人間ですが、なんと新生児の状態で運ばれてきます。
培養液の入ったカプセルを割って出てくるような狂暴な姿を想像していた総帥は、「えっこれで完成?」「もう世界をおびやかしたりできる?」と動揺しながら松戸に聞くのでした。しかしそんな問いを無視し、松戸は「私は残業があるので総帥の部屋につれていってください」と述べて部屋から出て行ってしまいます。
突然生まれたての赤ちゃんと一夜を共にすることになった総帥は、不安で涙を流しながら松戸が来てくれるのを待ちます。どうやら松戸は、人造人間のために薬局で粉ミルクとオムツを買ってきていたようです。さらに、ネット通販で購入した「悪の育児辞典」を読んで、松戸と総帥は育児に向き合い始めました。
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その後、松戸は仕事でいなくなってしまったことから、総帥1人で人造人間の育児に注力するのでした。作中では抱っこしていて眠った人造人間を、ベッドに置こうとしたらグズりはじめることや、ミルクを作っている最中に泣き出すなど、多くの「赤ちゃんあるある」がちりばめられて笑いを誘います。
そんな慌ただしい夜を一睡もせずに過ごした総帥は、松戸に「この生活っていつまでつづくの?」と投げかけます。すると松戸は辞典を見ながら「すくなくとも1ヶ月はこんなかんじで…」「その後も…1年くらいは昼夜とわずミルクやねかしつけがありますね」と、総帥を絶望させる回答をするのでした。
人造人間を使ってさっそく世界征服に乗り出そうとしていた矢先、なぜか育児をすることになった同作について、作者のオオカミタホさんに詳しく話を聞きました。
育児のバタバタを、かたちに残したい!
ー同作を思いつかれたきっかけや経緯を聞かせてください。
「育児をするつもりがなかった人」が急に育児をすることになったら…という話を描きたくて始めました。私自身、妊娠中に育児本や動画を見て準備していたものの、いざ始まると毎日がテンヤワンヤで。「人類ってこんなことを続けてきたの?」と絶望したこともありました。
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産後1年ほど経って少し余裕が出た頃、「あの混乱を何か形に残したい」と思って描き始めたのがこの作品です。最初はSNSに投稿していたのですが、編集の方に声をかけていただき、WEBレタスクラブでの連載が決まりました。
6月にはKindle版『悪の組織の子育て日記』も発売されました!育児経験がある方には「あるある!」と共感してもらい、未経験の方にも「こんな感じなんだ!」と楽しんでもらえたら嬉しいです。
ー作中に登場する「育児辞典」や「育児アプリ」など、悪の組織との組み合わせがユニークだと感じましたが、これらのアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
実際に、私が育児中に使っていたものがベースになっています。辞典やアプリはかなり頼りにしていたので、作中にも登場させました。作品はファンタジーの世界観ですが、出てくるトラブルや道具類は、リアルな育児からの実体験が多く反映されています。
ー 作品づくりにおいて大切にしていることを教えてください。
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一貫しているのは、自分の実体験や感情をベースに漫画を描くということです。今はAIを使って面白い漫画を作る人も多いと思いますし、私自身も思考の整理やスケジュール管理ではAIに助けてもらうこともあります。
でも「なぜ描きたいのか」という最初の衝動の部分だけは、やっぱり自分の心から湧いたものにしたいんです。
漫画内にはいろんなキャラクターが出てきますが、“いつかの自分“の体験・感情の一部を、キャラクターにしているような感覚です。例えば、「悪の組織の子育て日記」は、「子育てをするつもりがなかったけど、適応していく悪の総帥(主人公)」のほか、「なんで子供を持つの?仕事ができなくなるのに・・・と反発感がある組織の部下」なども出てくるんですが、それぞれのキャラは少しずつ、自分の分身のような感覚があります。
とはいえ、ファンタジー&フィクションなので、オーバーな表現になってたり、バカバカしい展開になったりもするのですが(笑)短編の漫画はさらにわかりやすく感情にフォーカスして、抑圧してきた感情や本心を見つけ、自己を受容していくようなものを描いていこうと思っています。
(海川 まこと/漫画収集家)
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