
コンコンコンコン―。5月中旬の西大寺観音院(岡山市東区西大寺中)の境内に金づちをたたくリズミカルな音が響く。木造倉庫の改築工事で、外壁になる化粧板を一人の若者が黙々と張っていく。そのまなざしは真剣そのものだ。
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大阪府八尾市出身の片山奨悟さん(20)は、寺や神社の建築・修繕を手がける宮大工を目指す。この春、観音院が立ち上げた「宮大工養成塾岡山西大寺校」の塾生として、近くの寮で暮らしながら技術や知識の習得に励んでいる。「機械ではなく、のみやかんななどの道具を自在に使いこなす技術を持つのが宮大工。修業を重ね『匠(たくみ)の技』を身に付けたい」
木材だけで組み上げる伝統的工法や細かい装飾を施す高度な技術が求められる宮大工。10年かかってやっと一人前とされる厳しい世界だ。高齢化に加え、昔ながらの徒弟制度が敬遠され、後継者が育たず人手不足が深刻化しているという。
そんな課題解決にと、宮大工で寺社建築会社を営む金田優さん(39)=大阪府太子町=が2016年、養成塾を大阪に創設。現在は岡山西大寺校を含め全国5カ所に広がり、計10人が学んでいる。
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観音院の養成塾は、坪井綾広住職(49)が塾の理念や教育方針に共感、金田さんが観音院境内の「西大寺牛玉所殿」(国登録有形文化財)の大改修に携わった縁もあり開設が実現した。
片山さんは子どもの頃から木材加工に興味があったという。のみやかんなを駆使する姿に引かれ、兵庫県内の高校を卒業後、養成塾の大阪本校の門をたたき、2年間修業。3月の岡山校開校に合わせて観音院に「転校」した。
塾の卒業生で棟梁(とうりょう)の田中尚哉さん(23)と寮で共同生活を送りながら日々技術習得に専念する片山さん。境内で毎朝開かれるラジオ体操の輪に加わって地域に溶け込み、祭りや伝統行事にも参加、観音院や仏教の知識も学んでいる。
観音院で初めて手がけ、工房として活用する木造倉庫は5月末に完成した。今後、近隣寺社の修復などにも協力しながら技を磨く。
「技術に限らず目上の人との接し方など社会で必要な力も付き、日々成長を実感している。1棟を任せてもらえる職人になりたい」と目を輝かせる。
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宮大工養成塾 宮大工金田優さんが設立した一般社団法人が運営。寺や神社の建築・修繕などに携わりながら道具の使い方、技術を学べる。共同生活を通じ、職人に求められる礼儀・礼節や規律ある生活も身につける。3年制で、卒業後の就職もサポート。関西や関東などで直営とフランチャイズの計5校を展開する。岡山西大寺校では体験入校も随時受け付けている。募集要項など詳細は養成塾ホームページ。
(まいどなニュース/山陽新聞)