愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「景況感を探る“街角の生の声”と“為替市場”の仕組みと見方」を解説

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2025年06月20日 21:10  TOKYO FM +

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愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「景況感を探る“街角の生の声”と“為替市場”の仕組みと見方」を解説
本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

6月11日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「景況感を探る“街角の生の声”と“為替市場”の仕組みと見方」というテーマでお話を伺いました。


(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆現状の景況感は、実に5ヵ月ぶりの上昇

浜崎:今回、宗さまには「景況感を探る“街角の生の声”と“為替市場”の仕組みと見方」についてお話しいただきます。

やしろ:政府が毎月、街角の生の声を聞いて国内の景況感を探る調査をしているそうですね。僕は知りませんでしたが、その調査の概要などを教えてください。

宗正:内閣府が毎月公表している、「景気ウォッチャー調査」があります。これは毎月25日から月末にかけて調査がおこなわれていて、原則として翌月の第6営業日に結果が公表されます。政府が公表する調査や統計はまとめるまでに2、3ヵ月程度かかるものが多いのですが、「景気ウォッチャー調査」は公表までのリードタイムが非常に短いのも特徴です。

概要は全国を12の地域に分けて、百貨店やスーパー、コンビニにお勤めの方、レジャー業界で働く人、タクシーの運転手さんのような、景気に敏感な仕事に携わる約2,000人に「今の景気はどうですか?」と街角の生の声を集めて、それを指数化することで“見える化”しています。

やしろ:株価などと比べると、より身近な感じですね。

宗正:そうなんですよ。例えばタクシーに乗ると、運転手さんに「どうですか景気は?」なんて私達もよく聞きますよね。この調査では、「現状判断」と「先行き判断」の2つの形で、その結果が毎月公表されます。

やしろ:ズバリ、現状の景況感と街角の生の声はどうだったのでしょうか?

宗正:まずは、現状の景況感を示す指数。好況と不況の境目を50ポイントとして、50よりも上であれば景況感は「改善している」、50を下回れば「悪化している」という見方をしますが、結果は44.5ポイントでした。

やしろ:うわー、低いですね。

宗正:50ポイントを下回っているので景況感はよくはありません。ただ、この数字を見るときに、もう1つ注目すべき点があります。それは「前の月と比べてどうなのか」という点です。前の月と比べて、1.8ポイント上昇しています。

実は前月比で5ヵ月ぶりの上昇なんですよ。前月比で上昇したのが、「家計動向関連」と「雇用関連」。下がったのが「企業動向関連」でした。

それでは、街角の生の声をいくつかご紹介しますね。まずは九州エリアのスーパーにお勤めの方の声です。「一般食品の値上げが続いているが、野菜の相場が下がったことで客の購買状況はある程度良好となっている」とのことです。今、お米の価格ばかりが注目されがちなんですが、あんなに高かった野菜の価格が気付けば今は下がっているんですよ。

やしろ:なるほど、そうか! それでちょっと購買欲も上がってきている……という、九州の方の意見ですね。

宗正:次は、北海道エリアの住宅販売会社にお勤めの方の声です。「今の建築単価が下がらないことが世間の常識になりつつあることで、そろそろ建築しようという客の動きが出始めている」とのことです。

やしろ:「もう価格が下がらないのなら、そろそろ建築してしまおう」という動きになっているんですね。

宗正:建築資材もすぐには下がりそうにないし、人手不足で人件費もこれから上昇傾向が続くだろうと。何よりも住宅ローン金利が上がり始める。これが決断の理由だと思います。

やしろ:「それだったら今買おう」と、購買意欲はプラスの方向に動いたということですね。

宗正:次は北陸エリアの繊維工業にお勤めの方の声です。「米国政権の関税措置による影響は現時点で正確には見通せていない状況だが、様子見により発注を抑制する取引先があるという声や、取引先から値下げ要求があったという声がある」とのこと。トランプ関税の影響は、自動車や鉄鋼以外にも繊維業界にまで幅広く影響を与えていることが分かります。景気に先行き不透明感が出てくると、取引先も動くに動けないという話です。

やしろ:とりあえず様子を見るしかないということですね。

◆ガソリン代引き下げ、備蓄米放出で“消費マインド”は上昇するか?

やしろ:先行きの景況感と街角の生の声についてはいかがでしょうか?

宗正:2〜3ヵ月先を見た先行きの景況感、こちらは44.8ポイントでした。50ポイントを下回っているので景況感は決して良くはありませんが、前月比で2.1ポイントの上昇です。こちらも5ヵ月ぶりの上昇なんですよ。景況感は人の気持ちや感情なので、現状と先行きの景況感は、同じような傾向になりがちなんです。

やしろ:そうですよね。現状が良くなってくれば「今いい感じだから、来月以降もいいだろう」って思えますもんね。

宗正:そうなんですよ。先行きの景況感は、「家計動向関連」と「企業動向関連」と「雇用関連」の3つ全てが上昇しています。街角の生の声としてはこんなものがありました。北関東エリアの居酒屋にお勤めの方の声です。「米や野菜の価格が安定して、早い夏の訪れと猛暑でビール消費が増え、提供側も安価で多彩な夏メニューの提案ができ、消費量が多少増えることを期待している」とのことです。

もう1つ、こんな声もあります。「ガソリン代の引き下げや備蓄米放出などによって、客の消費マインドが高まり娯楽への出費が増えると見ている。6月からボーナスシーズンとなり、臨時収入を得ることによって売上が増えると考える」とのことです。これ、どういう業界の声だと思いますか?

やしろ:ガソリン代が下がって、備蓄米放出で客の消費マインドが高まる……。飲食店ではないですか?

宗正:ちょっと難しいですよね。これは、北陸エリアの競輪場にお勤めの方の声です。衣食住のあとに回るのが、娯楽レジャーです。現状の課題を一つずつ克服して、6月からはボーナスをもらう人も出てくるから、売上が増えるだろうということですね。

内閣府は5月の調査結果を「景気はこのところ回復に弱さが見られる。先行きについては夏のボーナス及び賃上げへの期待がある一方、引き続き価格上昇や米国の通商政策の影響への懸念がみられる」とまとめています。

◆プロの投資家の多くが最も苦手とする為替市場

やしろ:トランプ大統領の発言ひとつで大きく上下する為替市場、本当に動きが分かりづらいですよね。

宗正:正式名称は「外国為替市場」、略して為替市場なんですが、プロの投資家に「苦手な市場は何ですか?」と聞くと、ほとんどの人が為替市場ですと答えます。

やしろ:そんなに難しいんですか!

宗正:為替市場と言っても、株式を取引する証券取引所のような、実際の取引場所や建物はありません。週末や世界的な休日を除く24時間、オンライン上での取引になります。つまり為替市場は万国共通で、世界最大のマーケットということなんですよね。よくニュースで「今日の東京為替市場は……」とか「ロンドンの為替市場は……」なんて言っていますよね。あれはその時間帯の取引の中心となっている国を指して、そう呼んでいるだけなんです。

やしろ:どこかに具体的な場所がある訳でもないし、絶えず動いているし、国名で区切ってそういう言い方をするってだけなんですね。

宗正:そういうことです。そして普段は、それほど為替市場は動きません。だいたい1日で動いて数十銭くらいが普通です。

やしろ:でも、最近は1日に1円以上動くこともよくありますよね。

宗正:トランプ政権が発足して以降、そういう動きが目立ちますね。目安としては対米ドルで、1日に5円程度動くことが1年に1回あるかないか。1日に10円程度の動きは、5年に1回あるかないか、そんな感じですね。

やしろ:今だと141円から144円くらいのところを行ったり来たりしていますけれども、130円くらいに行くかなという局面もありました。でも結局、行かなかったですね。

宗正:トランプ政権絡みの動きも結構落ち着いて来ましたからね。先日も米中の貿易協議で両国の意見が一致したり、当初は高い水準から始まったトランプ関税の税率も徐々に低くなってきたり、だいぶ落ち着いてきています。

やしろ:安定はしてきているのかもしれないです。為替市場には独自の特性があるということですが、それはどのようなものでしょうか。

宗正:まず為替市場は、ゼロサムゲームの世界なんですよね。片方が勝てば、必ずもう片方は負けます。株式市場の場合には、投資家がそろってプラスのリターンを得ることもありますが、為替市場は相対で片方が売って片方が買うという市場なので、ゼロサムなんですよ。

次の特性が、世界中で同じ経済指標や取引材料を基に取引がおこなわれていること。先ほどお話した、為替市場は万国共通というのがその理由です。

やしろ:例えば米国で何か経済的に不安なことが起きたとすれば、同時に各国がドルを売り始める……というようなことですよね。

宗正:それを運用業界では「材料」と言うのですが、世界中が同じ材料を見ていることが特徴です。さらに別の特性として、株式や債券のように、為替の水準は合理的な説明ができないんです。株価の場合には企業の一株利益に連動したり、債券の価格は金利の水準で説明できたりもしますが、為替の水準は根拠付けが非常に難しい。と言うことで、為替の水準には絶対的な高値(天井)が無くて、逆に底値もないんです。

やしろ:けっこう独特な特徴がありますね。予測は難しいとのことでしたが、ここから先の為替市場の動きについては、どこに注目すればよろしいのでしょうか?

宗正:為替市場は、米ドルが基軸通貨ですから、必ず米ドルの動きに注目するのが重要です。今は米ドル買いなのか、米ドル売りの局面なのか。そして為替市場の参加者が注目する、「為替市場のテーマ」を見極める必要があります。例えばアメリカ大統領選挙の途中経過や結果で為替市場が動くときには、為替市場のテーマはアメリカ大統領選挙ですから、ここを注意深く見る。まと外れな市場テーマを見ても、為替市場が動く材料にはならないということですね。

中でも為替市場が大きな影響を受けやすい「市場テーマ」は、各国中央銀行の金融政策です。景気動向や物価動向を確認しながら中央銀行がコントロールする政策金利の上げ下げのことです。例えば日銀が政策金利を引き上げそうだという見方になれば、相対的に日本円は高くなります。日本円が相対的に高くなるということは、一方のアメリカドルは相対的に安くなる。私がよくこのコーナーでお話している、公園のシーソーの原理ですね。あれをイメージしながら為替市場を見ていきましょう。

最後に1つ、為替市場にはトレンドがあります。「為替チャート」を見たことはありますか? あの為替チャートのトレンドは、買い手と売り手の需給バランスを基に、短期的には小刻みに上下を繰り返しながら、中長期的には大小の山と谷を形成しながら動いています。市場参加者の大半がこのトレンドを分析しながら売買を繰り返しています。あのテクニカルな動きを見ることは非常に重要で、為替市場独特のものなんですよね。

やしろ:その辺りにも注目して、為替チャートもちゃんと見て動く、ということですね。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜17:00〜19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ〜)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/


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