生活費で毎月8万円、さらに壊れた給湯器の費用30万円…まさか「親への仕送り」が“贈与税”対象に? 非課税と課税の境界線とは【税理士が解説】

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2025年06月22日 14:40  まいどなニュース

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毎月の仕送りも給湯器の修理費用も…贈与税の対象になるのでしょうか ※画像はイメージです(hikari_stock/stock.adobe.com)

都内の企業に勤めるAさんは、故郷の町で年金暮らしをする両親を思い、毎月8万円の仕送りをもう何年も続けていました。決して楽な金額ではありませんでしたが、両親が少しでも穏やかに暮らせるのならという思いがAさんを突き動かします。毎月、通帳の振込記録を見るたび、ささやかな親孝行ができている自分に少しだけ満足していました。

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そんなある日、Aさんのもとに母親から電話が入ります。実家の給湯器が壊れてしまい、冷たい水しか出ないと言うのです。築30年を超える実家では、これまでも何度か修繕が必要な箇所が出ています。しかし給湯器の交換となれば費用は高額となり、年金で慎ましく暮らす両親にとって、それはあまりに大きな負担でした。

Aさんは両親が心配になり、その日のうちに銀行へ向かい、給湯器の交換費用として30万円を両親の口座へ振り込みます。お金を振り込んだ旨を両親に電話で伝えると、両親は恐縮しながらもとても喜んでくれたようでした。

この話をAさんが知人にしたところ、「贈与税は大丈夫なの?」と質問されます。そもそも、親への仕送りに贈与税がかかるという認識のなかったAさんは、この質問を聞いて青ざめます。良かれと思っておこなっていた仕送りで親を困らせてしまうと考えると、Aさんはとても不安になってしまいました。

このような親への仕送りには贈与税がかかってしまうのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。

原則として贈与税の対象…しかし重要な例外規定も

ー親への仕送りは贈与税の対象になるのでしょうか

原則として贈与税の対象となると考えます。個人から個人へ財産を無償で渡した場合、受け取った側に贈与税が課せられるのが基本的なルールです。これは親子間であっても例外ではありません。年間110万円の基礎控除額を超えて財産を受け取った場合、贈与税の申告と納税が必要になります。ただし、これには重要な例外規定があります。

ー例外規定とは何ですか

「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」が例外にあたります。扶養義務者とは民法で定められており、夫婦や親子、祖父母と孫、兄弟姉妹などが互いに負う義務のことです。Aさんはお子さんとして、ご両親に対する扶養義務者にあたります。

生活費とは、日常生活を営む上で通常必要となる費用のことです。そのためAさんが援助しようとした給湯器の修理費用も、社会通念上、日常生活に欠かせない費用と認められる可能性が非常に高いと考えます。したがって、今回支払った30万円は生活費に該当すると判断され、贈与とはみなされないと考えます。

ー仕送りが貯蓄や投資に回された場合はどうなりますか?

援助したお金が生活費や教育費として使われず、貯蓄されたり株式や不動産などの投資に回されたりした場合は、例外規定は適用されません。そのお金は生活に必要ではなかったと判断されるため、贈与とみなされるでしょう。

月々の8万円の仕送りも同様です。もし生活費として使い切らずに貯め込まれていたとすれば、その貯蓄分も贈与税の対象となる可能性があります。

贈与税の対象とならないように仕送りをするには、必要な都度、必要な金額を渡すようにしましょう。万が一のために、使用目的を証拠として残しておくのも得策です。

◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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