
連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)、今週は第13週「サラバ、涙」が放送中だ。6月23日放送の第61回では、ヒロイン・のぶ(今田美桜)のもとに夫・次郎(中島歩)の危篤の知らせが届く。次郎を演じた中島歩が合同取材に応じ、役作りについて振り返った。
夫婦のシーンが少ない中、台本以外の「関係性の積み重ね」を膨らませた
次郎という役について、中島はこう語る。
「最初に物語の内容と役どころを聞いた時には『難しそうだな』と思いました。やっぱり次郎が登場するまで視聴者の皆さんは、のぶと嵩(北村匠海)のことをずっと見守ってきたわけですから、『嫌われたら嫌だな』と。次郎はほとんどの時間航海に出ていて、戦争に突入してしまったので、のぶとの夫婦のシーンが本当に少ないんですよ」
「そんな中でもだんだんと距離が縮まって、ふたりの関係が深まっていくところを見せなければならない。台本にももちろん書かれてはいますけど、台本以外のところでの関係性の積み重ねをすごく考えて、膨らましていきました。親しくなれば感情表現が豊かになるから、冗談っぽい芝居を入れたり、表情も豊かになるように工夫しました」
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「僕は結構役を自分自身に寄せるタイプで、自分の表情の変わり方が出ちゃってもいいのかなと思っていたんですが、今回はチーフ演出の柳川(強)さんから抑えるよう指示されまして。次郎の表情や仕草についてはかなり細かく調整しました。まっすぐ目を見て話すとか、のぶとの会話はちゃんとコミュニケーションにするとか、そういう細かいところで、次郎の誠実さが出せたかなと思っています」
また、中島が11年前に出演した朝ドラ『花子とアン』(2014年前期)に次いで2回目となる中園ミホ脚本の魅力については、
「心に残る熱い言葉が多いですよね。と同時に、心が震えていないと通用しない本だと感じます。『中園さんの言葉に魂を宿らさねば』みたいな思いが強くありました。だから真心で芝居ができるように準備をして。なるべく有機的な、人間臭さみたいなところが出るようにして、次郎といるときにのぶが素直でいられるような芝居を心がけました」
と語る。
「ヤムおんちゃんは未来人なんじゃないか」
戦時中の昭和を生きた次郎を演じるにあたっての心構えについては、
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「戦時中に教師として『渦中』にいるのぶに対して、次郎が言う台詞には、当時の日本人に対する現代人の観点が反映されているように思います。『今を生きる人たちに、こういうことを言いたい』という役割を、次郎とヤムおんちゃん(阿部サダヲ)が担っている。特にヤムおんちゃんなんかは、未来人なんじゃないかぐらいに見えますが(笑)」
「戦後を生きるのぶに影響が残るようにしなければなりませんでした。戦争で自分の好きなこと、好きな人とか、人間関係というものがあっという間に汚されて壊されてしまうんだということに、この役をやりながら気づきました。それが自分の身に振りかかったらすごく嫌ですし、いま新聞で世界情勢について読んでいると、のぶと次郎の状況というものが想像できてしまって。それはとても怖いことだなと思いますし、だからこそこのストーリーを皆様に届けるべきだと思いました」
と、物語そのものへの思いも織り交ぜながら振り返った。
(まいどなニュース特約・佐野 華英)
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