“殺し屋マンガ”が続々登場、今注目の作品は? オカモトショウ推薦『アマチュアビジランテ』『INNU -イッヌ-』

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2025年06月23日 13:00  リアルサウンド

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オカモトショウ

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。


参考:【漫画】最強の殺し屋に必要なのは数学?


 今回のテーマは“殺し屋マンガ”。「週刊ヤングマガジン」で連載中の『アマチュアビジランテ』(原作:浅村壮平、作画:内藤光太郎)、『INNU -イッヌ-』(原作:大沼隆揮、作画:小丸ひかり)の2作をピックアップします。


■『タクシードライバー』と構図は同じ? 『アマチュアビジランテ』


——今回のテーマは“殺し屋マンガ”です。


「最近、殺し屋マンガが増えてきてない?」という印象があるんですよね、個人的に。“殺し屋 マンガ”で検索すると、『あずみ』からはじまって『殺し屋1』『ザ・ファブル』『SAKAMOTO DAYS』とかいろいろ出てくるんですけど、ここ最近の作品がめっちゃ多いんですよ。


——何ででしょうね?


 やっぱりダークヒーローが求められてるんじゃないですか。爽やかな好青年が主人公で、“正義を守るために戦う”みたいなマンガは共感しづらいというか。それより、本楽は“悪”とされている人が困ってる人を救ったり、もっと悪い奴をやっつけたりするほうが気持ちいいんじゃないですか。『ザ・ファブル』や『SAKAMOTO DAYS』みたいに日常系が混ざってるものも流行ってますけど、それももともとは「殺し屋の普段の生活を覗き見れる」という目新しさがあったと思うんですよ。逆張りじゃないけど、隙間を狙ったというか。最近も殺し屋という職業を舞台装置に使ったマンガが増えているので、今回はそのなかから俺が面白いと思ってる2作を紹介しようかなと。


——なるほど。まずは『アマチュアビジランテ』。主人公は低学歴で無職の39歳の男・尾城慎太郎。日本の与党の政治家を暗殺するために身体を鍛えているが……というあらすじです。


 マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』が大好きなんですけど、『アマチュアビジランテ』の連載が始まったとき、「これ、『タクシードライバー』じゃん!」と思って。人生に鬱屈している引きこもり気味の主人公が、身体を鍛えて、武器を作って要人を暗殺しようとするっていう。“ひょんなことから少女と出会って、その子を守るために悪い奴らをぶっ殺そうとする”という構図も一緒なんですよ。


——確かに! そのラインでいえば、映画『レオン』にも似てるかも。


 そうそう。『アマチュアビジランテ』の主人公は何も持っていない男だったんですけど、いざ殺しをやり始めたら「自分には殺しの才能がある」と気づいて。いきなり何人も殺めてしまうんですけど、そのアクションの描き方もすごくよくて、最初から引き込まれましたね。


——“アパートの隣の部屋に住んでいたシングルマザーと子供たちを守る”という動機も共感……はできないまでも、「わかる」という感じがしました。


 そうですよね。その後もヤクザに狙われ続けるし、主人公が自分でやばい状況に突っ込んでいって。「困ってる人を助ける」という構図は大体同じなんですけど、「え、そいつを助けて大丈夫?」みたいな感じもあるし、善悪の境目が曖昧になっていくんですよ。従来のヒーロー像って、どうしても「こっちが悪」「こっちが正義」って勝手に決めちゃうイメージがあるじゃないですか。でも今はそうじゃなくて、「どっちが正しいかわからない」とか「でも、目の前に困ってる人がいたら手を差し伸べるべきでしょ」もあって。『アマチュアビジランテ』もそういうところがあると思います。その一方で、殺しがどんどん上手くなってて。若干「楽しんじゃってない?」という節があるんですよね。


——快楽殺人鬼になると、またマンガの雰囲気が変わってきそうですね。


 まだそこまでいってないんだけど、名の知れた殺し屋と戦って、もっと強くなってるし、コツを掴んじゃってるんですよ。ただ、とは言ってもアマチュアなので、相変わらず手製の銃だし、“非常階段の下から追ってきた敵を、上からどう倒すか?”みたいなところで戦ってて。(殺し屋マンガの)『ねずみの初恋』や『キルアオ』の主人公はもっと特異な才能を持ってるんだけど、『アマチュアビジランテ』ではそうじゃなくて、あくまでも素人なんですよ。そのリアリティも楽しいですね。あと、ちょっと日常系の要素もあって。


——誰かと仲良くごはん食べたり?


 まさに(笑)。ヤクザのせがれと知り合って、そいつともいろいろあるんだけど、そいつと、そいつが拾った女の子やたくさんの猫とタワマンで暮らし始めたり。暗いばっかりのマンガではないので、普段は殺し屋マンガに興味がない人も楽しめるんじゃないかなと。おすすめです。……そう言えば、『ザ・ファブル』の第3部も始まったんですよね。さっきも言いましたけど『ザ・ファブル』も殺し屋マンガが増えた理由だと思うし、こちらも注目ですね。


——『SAKAMOTO DAYS』もヒットしてますね。


 メジャー感がありますからね。途中から『HUNTER×HUNTER』のテイストが入ってきて、スイッチが切り替わったというか。ジャンプ系の殺し屋マンガということでは、やっぱり『SAKAMOTO DAYS』だと思います。


■『INNU -イッヌ-』は“ハードボイルドな天才バカボン”


——もう一つのおすすめマンガは『INNU -イッヌ-』。任侠の娘で女子高生のサリーちゃんと、“人間の言葉がしゃべれて、圧倒的に強い”パグ犬の“イッヌ”を軸にした作品ですが、これはどちらかというとギャグマンガなのでしょうか?


 ふざけていますよね、いい意味で(笑)。『アマチュアビジランテ』はある程度リアリティがあるんだけど、『INNU -イッヌ-』は“しゃべる犬”が主人公なので、リアリティはまったくありません(笑)。ただね、イッヌはめっちゃハードボイルドなんですよ。セリフもいちいち渋いし、肌の色もトレンチコートみたいで(笑)。


——確かに! 力の強い殺し屋が10代の女の子を守るという構造もいいですね。


 守りたいのは常にサリーちゃんですからね。ただ、敵がどんどんデカくなるんですよ。最初はヤクザだったんですけど、そのうちいろんな国の権力とか、めちゃくちゃデカい敵が出てきて。今高校の文化祭を無事に開催するために、台風にぶつかっていって消したりしてるんで(笑)。


——かなり荒唐無稽ですね……(笑)。


 (笑)「INNU -イッヌ-」の面白さは、いろんなマンガのパロディが入ってるんですよ。「なんでこの犬、喋れて強いんだろう?」というのが最大の謎なんだけど、最近になって『ONE PIECE』のポーネグリフみたいな石碑が見つかって。そこに「小さい“ッ”を継ぐもの」みたいことが書かれてるんだけど、まるで『ONE PIECE』の“Dの意思”のじゃないですか(笑)。しかもその後、“ネッコ”とか“ウッマ”“ウッサ”みたいな動物も出てきて。これでどこまでいけるのかな?って、ちょっと不安になりそうです(笑)。


 他にも『HUNTER×HUNTER』や『ドラゴンボール』のパロディも入ってて。そもそも“イッヌ”もかつてのネットスラングなんで。そこまでギャグに振り切ってるわけではなくて、シュールな感じがあるのも好きですね。個人的にはこのナンセンス感は“ハードボイルドな天才バカボン”なのかなと。とにかく何も考えないで楽しく読めるのがいいですね。


——それも大事な要素ですよね。


 いわゆる“いいマンガ”が厳選されてどんどん世に出てるけど、いろいろ考えながら読まないといけない作品も多くて。そんななか、いい意味で何も考えず楽しめる『INNU -イッヌ-』は貴重だと思います。しかもスキャンダラスなだけ、刺激が強いだけのマンガでは全然なくて。昔ながらのマンガらしさもあるし、ふざけるのもセンスが必要じゃないですか。


——マンガの知見があって、ふざけるセンスがある方々が作っているマンガだと。


 そうだと思います。『アマチュアビジランテ』もそうですけど、さすがにヤンマガ本誌で連載してるだけはあるなと。どっちがいいという話じゃないですけど、本誌連載のパワーってあると思うので。ただ『殺し屋1』とかが好きな方が『INNU -イッヌ-』を読んでどう思うかはわからないけど(笑)。


■『アマチュアビジランテ』『INNU -イッヌ-』を読みながら聴きたい曲


Tzusing『東方不敗』


 台湾や中国を中心に活動しているマレーシア出身のアーティスト・Tzusingのデビューアルバム。「ピリッとした緊張感があるサウンドなんですけど、抜け感があるエレクトロとしても楽しめて。『アマチュアビジランテ』の雰囲気にも『イッヌ』の奇妙なナンセンスさにも合うと思います」


■「OKAMOTO'S TOUR 2025-2026 4EVER NOW」開催決定!!


 OKAMOTO'Sが2025年9月より全20公演の「OKAMOTO'S TOUR 2025-2026 4EVER NOW」の開催が決定! 47都道府県ツアー、そして野音を経てさらにパワーアップしたOKAMOTO’Sのライブをお見逃しなく。


 チケットはOKAMOTO’Sの公式アプリ「オカモトークQ」プレミアム会員限定にて、最速先行受付が6月25日(水)23:59まで行われている。


(文・取材=森朋之)



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