高木豊が語るセ・リーグで飛躍に期待の野手4人  巨人のショートに定着した泉口友汰らを分析した

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2025年06月23日 18:50  webスポルティーバ

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高木豊が語る飛躍に期待の野手 セ・リーグ編

 交流戦は苦しい戦いとなったセ・リーグの各チームだが、その分、大きな差が開くこともなかった。そこから抜け出すため、疲労が溜まる夏場を乗り切るために若手や新たな戦力の奮起も必要だ。

 かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏が、頭角を現わしてきたセ・リーグの野手について語った。

【巨人のショート、泉口友汰の魅力は?】

――まずは、巨人のショートに定着した2年目の泉口友汰選手(26歳)から伺います。打席数、安打数ともに現時点ですでに昨年を上回り、3割近い打率(.293、6月22日時点/以下同)をキープしていますが、現状をどう見ていますか?

高木 大阪桐蔭高、青学大、NTT西日本、巨人とエリートの道を歩いてきていますし、もともとポテンシャルは高かったと思うんです。今年、劇的に変わったのは、バットを短く持ち始めたことで操作性がよくなったということ。それが、泉口にはすごく合っていたような気がします。

 短く持つというのは、ひとつの"安心感"なんです。ある程度のパンチ力もあるし、アマチュア時代は長打を求められることもあったと思いますが、プロに入って自身のパワーに疑問を抱いたんじゃないかと。それがバットを短く持つことにつながり、いい具合にまわり出したと見ています。

――プロで生きていくためにバットを短く持った?

高木 そうです。バットを短く持つと、ボールを最後まで引きつけられるメリットもあります。ほかにも「短く持ったほうがいいな」と思う選手は多いですが、プライドが邪魔をしているのか、そうしない選手が多い。でも、泉口はそういうものを取り除いてプロで生きていくために短く持った。すごく好感が持てますよね。

 昨年から、泉口が打っても門脇誠に戻したり、門脇がショートのレギュラーと言われていた時期もあってしんどかったと思いますが、今は立場が逆転したわけです。よく我慢したなと思いますよ。アマチュアでも、厳しい競争のなかで勝ち抜いてきたと思いますし、門脇との争いが泉口にいい影響を与えたとも感じています。

【飛躍に期待の広島とDeNAの外野手】

――他のチームで頭角を現してきたと感じる野手は?

高木 広島の8年目・中村奨成(26歳/打率.257)はボールの見極めがよくなりましたよね。今はオープンスタンスで打っていますが、その利点は両目でボールを見られること。最初は体が開き気味で、徐々に左肩を入れていくわけですが、タイミングも取りやすくなったでしょうし、間ができることによってボールの見極めがよくなっているなと。

 来たボールを何でも振り回すのではなく、右におっつけたり、コースに逆らわないバッティングができていますし、広角に打てる技術も持っています。パンチ力もありますし、足もそこそこ速い。いざとなればキャッチャーもやれるわけですし、チームにとって必要な選手になってきましたよね。

――1番で起用されている時期がありましたが、1番は合っている?

高木 彼の"勢い"のある性格が合っているんじゃないですか。今年の広島はクリーンナップや6番を打つ選手が揃っていますし、そんななかで彼の性格に合う打順は1番なのかなと。思考がシンプルだと思いますし、1番はあれこれ考えずに打席に立って集中できますからね。

――広島の外野陣は、7年目の大盛穂選手(28歳)が好調で1番を務めるなど競争が激化しています。中村選手は代打での起用が増えていますが、今後も期待ですね。

高木 そうですね。外野手では、DeNA2年目の度会隆輝(22歳)は近い将来の首位打者候補だと思います。現在の打率はそこまで高くない(.246)ですが、バットコントロールが素晴らしく、凡打の質もいい。だいたいのボールを芯で捉えていますから。3割を打ったり、首位打者になるようなバッターたちは、凡打の内容を見るとほとんど芯で捉えているんです。

 例えば、ボールが上に上がったとしても、ちょっとこすった、という感じ。バットをへし折られての凡打はそうそうありません。度会は数少ない3割バッター候補のひとりだと思います。

――昨年との違いは?

高木 ルーキーイヤーだった昨年と比べて、プロの水に慣れてきたということ。あとは、精神的な落ち着きを感じます。昨年は打った・打たない、守備で捕った・捕らない、とすべてに一喜一憂していて疲れたと思うんです。守備のミスが続いて気持ちがガタガタになっていたので。

 もともと、バットコントロールなどは非凡なものを持っているんですよ。それが今年、ある程度起用され続けていることで地位を確立していっていますし、守備の面でも踏ん張っているので面白いと思いますよ。ただ、バントだとか細かいことがあまり得意ではないと思うので、3番など自由に打たせられる打順のほうがいいのかなと。2番に入る時もありますが、そうなると「バントなしで打たせる2番」ということになりますよね。

 技術があるのでもっと打率を上げていけるはずですが、そのあたりは伸びしろです。選球眼もいいですし、やはりバットコントロールがいいのでボールを引きつけられるんです。引きつけて逆方向へ打つのもうまい。彼の場合は気持ちが安定すれば、安定した成績を残せると思います。

【DeNAは攻守で期待のキャッチャーも台頭】

――ほかに選手を挙げるとすれば?

高木 またDeNAになりますが、3年目の捕手・松尾汐恩(20歳)です。やっぱりバッティングが魅力(打率.280)で、首脳陣は使いたくなりますよ。若い選手の場合、「とにかく長打が打ちたい」などと思ってしまいがちなんですが、どんな状況でも冷静ですよね。

 例えば、追い込まれるまでは力強く振りますが、追い込まれてからはテクニックを感じるんです。この若さでそれができる選手はあまりいません。それと、たまたま芯に当たった、とかではなく、しっかりとボールを捉えています。ときどき雑なときがあるので、もう少し丁寧さがほしいなと思うときもありますけどね。

――DeNAは捕手の競争が激しいですが、松尾選手の出場試合数は山本祐大選手とほぼ同じです(松尾43試合、山本44試合)。

高木 昨年にベストナインとゴールデン・グラブ賞を受賞した山本がいるにもかかわらず、首脳陣が使いたくなる魅力があるということですから、大したもんですよ。キャッチャーとしても成長しています。盗塁も刺していますし、自身のバッティングがいいからか、相手の心理を突くのがうまいしリードもいいです。攻守で非常に楽しみなキャッチャーですね。

(パ・リーグ編:首位打者を狙える打者も 各チームをけん引する野手たちの能力>>)

【プロフィール】

高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

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