あの時あの人がいなければ――。漫画家の夢を持ち続けることができた恩人との高校生活を描いた漫画「僕が創作の道を選べた理由」がXで公開されている。
本作は6年前にnoteで発表されたものの再掲。現在新たな連載を準備中の作者・つのだふむさん(@tsunoda_fumm)が、もう一度過去作を世に出した理由とは。(小池直也)
――この作品を投稿した経緯について教えてください。
つのだふむ(以下、つのだ):新連載を迎えるに当たり、自分の過去作にヒントがあるかもしれないと振り返っていたんです。そこで本作を見つけたので、どんな反応があるかなと投稿してみました。
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――いつ頃の作品?
つのだ:6年ほど前に描いた作品です。自分の感情にウソは付いてないのですが、受験でマークシートをわざと間違えた思い出とか、親が見る可能性があるのによく描けたなと思いますよ(笑)。
――作品発表当時の反応はいかがでした?
つのだ:ありましたね。noteの「#描くきっかけ」の投稿コンテストでグランプリを受賞しました。再掲してみると、僕と猪原君の関係性に萌えるとか、バディものとして読んでくれる人がいるんですよね。それは意図せずに描いていたことなので驚きました。どうやったら今再現できるのかと考えたり。
――制作の経緯も聞きたいです。
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つのだ:当時「好きに漫画を描こう」という段階で、1〜2ページの短編を漫画サイト「コミチ」に次々と上げていたんです。そこで読者からの反応がいいのは実体験や記憶を題材にした漫画だと気付きました。
それもあって本作では自分の青春を描いたんです。自分が隠してきた過去とか感情を開示するほど、技術の拙さに関係なくエンタメとして伝わっていくのだと思えました。
福岡・糸島への移住を描いた、実録マンガ『糸島STORY』も、失敗と葛藤の連続なんです。この時に「情けない自分」を描いてもいいと思えた経験が、今のエッセイの描き方にもつながっている気がします。
――友人・猪原君は懐古趣味を持っていたということなんですかね?
つのだ: 僕の知らない古典映画や文学、漫画などのサブカルチャーに精通する彼の趣味には大いに感化されました。今でもふと思い出しますね。正直会ってみたい気持ちもあるし、知りたくない気持ちもある。複雑です(笑)。
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――中学生の時から漫画家になるという熱意を持っていたのはすごいです。
つのだ:別に漫画を描いて応募してたという訳ではないですけどね。結局、僕は猪原君と出会ったことがきっかけで映画監督を目指し、美大の映像学科に進学したのですが、この出会いがなかったら「頑張ってチャラチャラしなきゃ」と自分を偽った3年間を過ごした可能性が高いです。
――制作方法の違いなどは?
つのだ:これはちょうどデジタルで描き始めた時期の作品なんですよ。直前まで紙とペンで描いてましたし、当時iPadを持っていなかったので、スマホのアプリを使いながら拡大して描いていました(笑)。毎日、電車で帰りながら1ページ描くみたいな。「とにかく自分の想いを出したい」というパッションがあったと思います。
――この先も過去作を掘り起こす作業をされていくのでしょうか。
つのだ:そうですね。どうせなら、Xでシェアして再び読んでもらいながら、自分自身も新たな発見や当時の「渇き」を見つめていきたいと思います。
その時に自分がどういう文面で投稿するのかも状況によって変わるし、自分が描いた作品の見え方が変わっていくことが興味深いです。
――今後の展望についても教えてください。
つのだ:去年プレ連載した『運命のリフォーカス』を今1話から描き直してます。ストーリーや設定に、僕の実感とか体感とかパーソナルな部分が投影しきれていなかったなと。
だから魂を入れる作業をするに当たって、過去作を見直しているところなんです。だんだんと主人公が変わってきましたね。フィクションでもエッセイと同じレベルでキャラクターを動かせるようにするのが今年の目標です。連載が始まったら、ぜひ読んでください。
©︎つのだふむ/コルク
■「僕が創作の道を選べた理由」が収録されたつのだふむ漫画短編集『糸島以前STORY』が6月18日発売!(「創作の道を選べた理由」と改題)
(文・取材=小池直也)
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