写真少女時代やaespaが所属する韓国大手SMエンターテインメントのアイドルグループHearts2Hearts(ハーツ・トゥー・ハーツ)。
今年デビューしたばかりの新人グループで人気急上昇中ですが、彼女たちの6月18日に発売された新曲のティーザー画像がXを中心に批判の的にさらされています。
◆Hearts2Heartsの新曲ティーザー画像が話題に
Hearts2Heartsの公式Xアカウントが6月16日に投稿したのは、新曲『STYLE』のイメージティーザー画像。そこにはHearts2Heartsのメンバーが笑顔で写っていたのですが、その画像がどう見ても平成期に流行したプリントシール風だったのです。
プリントシールの機械で天井から撮影したような画角、美肌加工を施したような画質、そしてカラフルで可愛らしいフォントによる落書きに至るまで、パッと見た人がすぐに「これはプリントシールだ」とわかるレベルでした。
この画像に対して、一部のネットユーザーから批判が寄せられました。
「日本の平成文化のプリントシールを韓国文化のように発信するのはやめてほしい」
「自国のものではなく日本のものであることも注釈をつけるべきでは?」
「日本が嫌いで日本を差別するくせに日本の文化はパクるのか」
といったコメントがありました。
一部では、ある国の文化を正しい理解や尊重を欠いたまま模倣や利用を行う「文化の盗用」という指摘も多く見られました。
また、Hearts2Heartsの公式Xアカウントが世界中に発信されているため、返信欄にはプリントシールが日本発祥のものであることについて英語で説明する人々も見られました。
◆「またか?」韓国の“起源主張”に再燃する議論
ここまで多くの人が怒りや疑問の声を挙げている背景には、今回の件だけでなく、過去にも韓国が剣道やアニメ、お菓子、シャインマスカットなど日本発祥とされる文化や製品を「韓国発祥」と主張してきたことがあると言えるかもしれません。今回のHearts2Heartsの件では、「竹島問題」まで引き合いに出され、音楽以外にも議論が及んでいました。
実は、Hearts2Heartsが所属するSMエンターテインメントは、韓国の大手芸能事務所の中でもその姿勢や考え方に関してさまざまな意見がある事務所です。
過去には、看板アーティストである少女時代が韓国の領土認識をテーマにした曲『独島は我が領土』を歌った映像が広まり、ネット上で話題となったこともありました。またaespa(エスパ)においては唯一の日本人メンバーであるジゼルさんだけ歌唱パートや広告の出演分量が少なかったことから「日本人メンバー差別をしている」と批判されたりしてきました。
こうした背景があるため、今回の反応はK-POPをよく知るファンの中では「SMエンターテインメントがやりそうなこと」という見方も散見されます。
ただし、今回の件だけで韓国全体を批判するのは行き過ぎた主張とも言えるかもしれません。
◆それは盗用か、それともリスペクトか?
そもそも文化の盗用が問題視されるのは歴史的に支配する側だったり多数派だったりした文化圏の人が、支配される側だったり少数派だったりした文化圏の文化を無断で使うときです。
多様な人種が集まるアメリカにおいては、白人がアフリカ系アメリカンやネイティブアメリカンの文化を本来の意味や文脈を無視して使うときにとりわけ大きな問題として反発を買うのがわかりやすい例でしょう。
アジアにおいても例外ではなく、かつてキム・カーダシアンが補正下着ブランドに「KIMONO」という名前を付けようとした際には、「世界的に『KIMONO』という言葉が日本の伝統的な着物ではなく補正下着として認識される危険性がある」として猛バッシングが起こったことがありました。
しかし、今回のHearts2Heartsの件では、プリントシールというポップカルチャーをそのままの形でティーザー画像に採用しており、「文化の盗用」に該当するとは言い難いと考えられます。
むしろ、日本の平成文化を積極的に採用し、そのままの形で世界へ発信している様子は日本へのリスペクトという見方もできます。
◆日本文化の模倣がもたらす感情的反発
なお、IVE(アイヴ)の日本人メンバーであるレイさんが平成ギャル文化を好み、韓国の若者にギャルピースというポーズを広めたとされるエピソードもあります。
このことから、日本の平成文化が日本国内だけでなく韓国でも人気であることがうかがえます。また、プリントシール風の画像が受け入れられると予測したHearts2Heartsのマーケティング戦略の一部であることも明白です。
現在ではK-POPアイドルに日本人メンバーがいることは珍しくなく、J-POPにおいてもK-POPの要素を取り入れるなど、日韓は音楽やファッションなどのポップカルチャーで相互干渉を進めながらよりよいものを生み出している関係性と言えるでしょう。
とはいえ、今回これほど多くの人々が反発的な感情を抱いているのは「韓国に日本の文化を模倣されること」に否定的な感覚が広がっていることの表れです。
「反日思想を持ちながら日本文化を模倣するな」という意見も多く、K-POPが日本で受け入れられているにもかかわらず、韓国や韓国人に対して否定的な感情を抱く人が一定数存在していることが明らかになりました。
「文化の盗用」か否かが問題ではなく、「韓国に模倣されること」そのものに対する拒絶反応が問題となっているのです。今回の騒動は、日韓ポップカルチャーの相互干渉というプラスの側面をかき消すほど、日本国内における「韓国が日本文化を模倣すること」への拒絶反応を露呈させた形となりました。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中