WEST.・濱田崇裕、初演時は「何もできなさ過ぎて号泣」 シリーズ化された主演舞台は「代表作になりましたと胸を張って言える」

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2025年06月27日 08:40  クランクイン!

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クランクイン!

WEST.・濱田崇裕  クランクイン! 写真:高野広美
 WEST.の濱田崇裕が主演を務める人気舞台「市場三郎」シリーズが7年ぶりに復活。これまで、“温泉宿の恋”、“グアムの恋”と行く先々で実らぬ恋を続けてきた市場三郎の恋路が、新作『歌喜劇/〜蘇る市場三郎 冥土の恋〜』ではついに“冥土”にたどり着く!? 「代表作になりましたと胸を張って言える」と語るほど同作への愛情があふれる濱田に、「何もできなさ過ぎて号泣した」という初演の思い出や、演出の河原雅彦やおなじみの共演陣との稽古場でのエピソードを聞いた。※濱田崇裕の「濱」は旧字体が正式表記

【写真】WEST.濱田崇裕、爽やかな“濱ちゃんスマイル”がかわいい!

◆「市場三郎」と自身は「似てない」が「これくらい真っすぐでありたいと思う人」

 河原からの指名で、福田転球が脚本を書きおろした本作品は、「歌喜劇」というアカペラの歌唱に心情や情景をのせて物語を紡ぐ、人情味あふれるエンターテイメント。福田が愛情たっぷりにあて書きした、天然で頑張っても空回り、だけど困った人を見過ごせない、情に厚くまじめな男・市場三郎を濱田が体現する。

――7年ぶりの「市場三郎」シリーズの復活。新作のお話を聞かれた時のお気持ちは?

濱田:僕自身何度でもやりたいなと思っていましたし、河原さんも「出演者のおっちゃん連中が元気な限り何回も行けるぞ」とおっしゃっていたので、早めにできたらいいですねというお話はしていたのですが、まさかのコロナ禍になってしまって…。「市場三郎」は声を上げて笑ってはいけないという中でやってもうれしくないなという気持ちもあったんです。

今回、7年ぶりに新作が上演できると聞き、新規のお客さんがついてこられるのかなと心配にもなりましたが、台本を読むと初めてご覧になるお客様も「そんなことがあったんだ」と楽しんでもらえるような内容になっていて安心しました。なんせくだらないことに特化しているので僕も楽しみにしています(笑)。

――改めて市場三郎という男はどんなキャラクターですか?

濱田:とんでもなく不器用で一途で、真っすぐな男です。どんくさくもあり、真っすぐすぎるがゆえに痛い目にもあう。正直者が馬鹿を見るってこのことやって思うんですけど、だからこそ、見ていてこうありたいなと思わせてくれる古き良き男。女性に対する思いが真っすぐで、今回は冥土の恋にまでなってしまうという男でもあります(笑)。

――ご自身に似ているなと思うところは?

濱田:ないですね! 僕も変ですけど、ここまで変じゃないです(笑)。うれしいことに、濱ちゃんしか演じられないよと言ってくださるんですけど、そんなことないと思うけどな〜って思っています。

似てないけれど、これくらい真っすぐでありたいなとは思いますね。三郎くらいきれいな心の持ち主にならなきゃいけないよなと思わせてくれる人。浄化してもらえる役です。

――今回はタイトルが「冥土の恋」。どんな内容になるのでしょうか?

濱田:もう終わるんかな?と思ったら、終わらなさそうです(笑)。想像していたものじゃない展開になったり、そこに恋するの?っていうところがあったりするので、楽しみにしていてください。

前作までを観てくれている人はご存じだと思いますが、今回初めてご覧になる方は、ホットパンツの妖精が現れると恋の予感のはじまりなので、どのタイミングでホットパンツの歌を歌うか注目してほしいですね。そういう舞台です(笑)。

◆河原さんの現場を経験してほんまによかった


――河原雅彦さん、福田転球さんとのタッグは、2016年に始まりました。初演時の思い出は何かありますか?

濱田:めっちゃプレッシャーでした。ぎこちなかったと思います。初座長公演やし緊張しかなかったですね。初日の記憶がないくらいです。

常に笑いの絶えない現場なんですけど、初演はひたすら僕が苦戦していました。稽古の初日か2日目かにあまりにできなさすぎて号泣しました。大人になって初めてTシャツで顔面を隠しながら「うわぁぁぁぁ」って声を出しながら泣きました。今考えたら河原さんもかわいそうでしたね。「こんな青年を泣かしたくないんだよ。嫌だよ」って。でも、「濱田がそのまま、いいやと思ってやると絶対に後悔する。かっこいい俳優さんっていうのはたくさんいるけれど、しっかりと芯まで俳優って言えるくらいの人になってもらいたいから」と言ってくださって。「ただ人気だけで作品を取ってほしくない。しっかり年を重ねた時に『やっぱりあの人がいいよね』って言われるようになってほしいから厳しくする」と。そもそも僕が厳しくしてくださいとお願いしたんですけどね。

河原さんの現場を経験してほんまによかったって思っています。あの経験がなかったらお芝居に取り組む姿勢が違うものになっていたなと感じます。

――河原さんの演出の特徴を挙げるとすると?

濱田:役作りみたいなものは全部任せてくれるんです。持ってきたプランを絶対否定しないですし。でも「なんでそうなったの?」って聞かれて答えられなかったときはズバッと切られる。「考えてないんだったらそんなことするな」と。

初演の時は「もう(稽古に)行きたくない〜」とも思ったのですが、お客さんの前で披露した時にちゃんとリアクションが返ってきたんです。「あれ?これってこんな面白かったんや」と自信につながりましたね。お客さんの笑い声で共演者の次のセリフが聞こえなくて、声を枯らしてやった思い出があります。

第2弾ではまた違う試練がありましたね。歌の進化をどう見せるかっていうのをいっぱい考えました。

市場三郎シリーズは全部アカペラでやるんですね。波の音とかの効果音も全部自分たちでやるんです。本読みは台本にセリフとして♪マークがついてるんですけど、どんな曲なのか聞かされていない。「♪マークがついてるんで歌ってください、はい、どうぞ」で本読みがスタートして、どうしよう!?みたいな(笑)。それをみんなで「ここはこうじゃないか、ああじゃないか」と作っていくので、小劇場のような一体感を味わえました。本当に河原さんに鍛えてもらいましたね。

――『千鳥の鬼レンチャン』などで歌には自信のある濱田さんでも大変ですか?

濱田:アカペラはやばいですよ。出だしの音を間違えたらハモれないんですよね。その難しさがこの歌喜劇のキモですね。仲が悪かったら成立しないです。みんなで手をつないで発声や歌の練習をするんですけど、ちょっと言い合いとかすると音が狂ったりするので、「あそことあそこ、言い合いしたな」ってわかります。

――初演から続く共演者の皆さんとのチームワークも楽しそうです。

濱田:信頼関係はめっちゃあります。おじさん同士が「そんなにふざけんなよ」って舞台上で怒られてるんですよ、いい大人が!それがめちゃくちゃ面白い。ついつい楽しくていろいろやっちゃうんですよね。そこがいい作品だなって思います。

普段のご飯の時とかも、ずっといじられています。変に遠慮されるとやりづらいなーと思うタイプなので、いじってもらえるのはうれしいですね。

――濱田さんにとって、「市場三郎」という作品はどんな存在ですか?

濱田:代表作になりました。胸張って言えますね。くだらないことを全力でやるんですけど、稽古の時間には本気のぶつかり合いがあって。いろいろ教えてもらった作品で思い出のある作品でもあります。

今回の『冥土の恋』も、初演から観てくださっているファンの皆さんには、とてつもないレアキャラが登場したりと面白いことが盛り沢山です。今回初めてご覧になる方たちは、「いったい何をしてるんやろ?」と思いながら観てください(笑)。簡単なお話なので、すぐについてこれます。観終わってから、三郎に対して何か心に残る思いがあったら、ぜひそれを大切にしていてください。

(取材・文:渡那拳 写真:高野広美)

 舞台『歌喜劇/〜蘇る市場三郎 冥土の恋〜』は、東京・東京グローブ座にて6月30日〜7月27日、京都・京都劇場にて8月1日〜10日上演。
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