
「とにかく地道に一生懸命に」
そんな姿を見て母親は「ホント私に似ているわねえ!」と目じりを下げるという。
母は榊原郁恵、父は渡辺徹
タレントの榊原郁恵と俳優の渡辺徹を両親に持つ、渡辺裕太(36)。俳優業と並行して情報番組のレポーターを務めたり、野菜ソムリエの資格を仕事に活かしたり、落語家として高座に上がったり。親譲りの器用さが表れているようだ。
「何か一つ秀でたものがあるわけではないけれど、とにかく地道に目の前にあるいただいたお仕事を一生懸命にやる。いろいろな試行錯誤を通して少しずつ道を切り開いていく。芸能界でのそんな僕の生き方を見て、母は『ホント私に似ているわねえ!』と言います。確かに性質としては似ているような気がします」
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俳優を志したのは、高校の演劇の授業がきっかけ。クラスメートの前で演じてみたら思いのほかウケた。
「自分で考えて披露したものに対して笑いが起きたりして予想外の反応があった。作って表現して反応をもらうってこんなに楽しい事なのかと。福祉系の大学に進学はしたものの、俳優養成所に通うようになりました」
両親へのリスペクト
養成所に通うと決めたのも大学卒業後に就職せずに芸の道に進むと決めたのも、すべて事後報告。それに対しての両親の反応は…。
「それが何もありませんでした。良い悪いもなく、本当に『そうなんだ』程度でした」
そっけない態度?否、両親は誰よりも息子の心境を理解している。そして息子は誰よりも二人の背中を間近で見てきた。
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「両親の仕事を通して喜んでくれる人たちがたくさんいる姿を見てきたので、自分が芸能に興味あるなしに関わらず、うちの親は素敵な仕事をしているという思いはずっとありました。そこに対するリスペクトが今の自分の活動の下地になっている気がします」
亡き父・渡辺徹の軌跡をなぞるかのように、俳優として頭角を現しつつある。映画『囁きの河』(6月27日より熊本県先行上映中、7月11日より全国公開)では、22年間離れた父に葛藤を抱える青年をシリアスに演じている。
目指すはモロヘイヤ
夢は国民的ドラマ枠、NHK朝の連続テレビ小説にレギュラー出演することだが…。
「30代のうちには叶えたいけれど、う〜ん。これまでの半生を振り返るとなんだかんだ自分の目標にはたどり着いているので、目標をフワッと言い続けて気づいたら出演していたという流れが理想です。いつまでにと断言するのではなく、それこそいろいろな試行錯誤を繰り返して地道に一生懸命に。たどりついた先に夢の実現があれば」
目指す俳優像を尋ねると、野菜ソムリエの資格を持つ落語家としてのプライドが頭をもたげる。
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暫し黙考の後「モロヘイヤ」と返ってきた。その心は?
「流されることなくモロヘイヤのような粘り気を持って人の心に残り、モロヘイヤのような高い栄養を作品に与えてクオリティを底上げできるような俳優になりたい!…いかがでしょうか?」
親譲りの無邪気な笑顔をみせてくれた。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)