「XR・メタバース総合展」で見つけたユーザー思いの製品あれこれ 日本Xrealは新型ARグラス「XREAL One Pro」の日本発売を発表

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2025年07月04日 17:11  ITmedia PC USER

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日本Xrealの高天夫氏

 7月2日から4日にかけて、東京ビッグサイト(東京都江東区)で「第5回 XR・メタバース総合展 夏」が開催された。1日目に当たる7月2日、本イベントに合わせて日本Xrealが新型ARグラス「XREAL One Pro」を日本で販売することを発表した。


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 XREAL One Proは、より広い瞳孔間距離(IPD)に対応するために「Mサイズ(IPD 57〜66mm)」と「Lサイズ(IPD 66〜75mm)」の2モデルを用意しており、想定価格は両モデル共に8万4900円だ。発売は7月24日を予定していて、予約は7月2日から受け付けている。


 この記事では、XREAL One Proの発表会の模様と、XR・メタバース総合展の展示物をいくつか紹介する。


●自社開発チップを搭載した「XREAL One Pro」


 XREAL One Proは、Xrealが開発したコンピューティングチップ「X1」を搭載したARグラスだ。X1チップは、2025年1月に国内販売が始まった「XREAL One」にも搭載されている。


 X1チップの搭載により、ネイティブ3DoF対応、3ミリ秒未満のレイテンシー(遅延)、ブレ補正、ワイド固定表示、自動調光への対応(映像の表示されていない方に顔を向けた際に自動的に透過度を上げる)、瞳孔間の距離調整、設定メニューの単体表示……など、スタンドアロンでいろいろなことができるようになった。


 発表会に登壇した日本Xrealの高天夫(コウ・テンフ)氏(プロダクトマネージャー)は「X1チップにより、XREAL Oneの性能は押し上げられたが、まだ性能の半分くらいしか発揮できていない」とする。


 その上で「XREAL One Proでは、ワイドスクリーンに『21:9』に加えて『32:9』のアスペクト比を追加した。サイド表示ではサイズを調整することも可能になった。これらによって、ARグラス内にマップを表示しながら歩くといったことも実現する」と新機能について説明した。


 XREAL Oneとの大きな違いとしては、独自開発した光学モジュール「X Prism」を搭載していることも挙げられる。XREAL Oneでは小型プロジェクター(ディスプレイ)が発した光を2枚のハーフミラーを使ってユーザーの目に届ける「Birdbath」という三角形の光学モジュールを採用していたが、XREAL One Proではさらに2つの部品を追加して長方形にまとめたX Prismを採用することで、本体体積が約44%削減されている。


 また、Birdbathでは(特に明るい色のトップスを身に着けていると)グラス下方への映り込みが激しかったが、X Prismはその課題が解決している。


 ディスプレイは1920×1080ピクセルの0.55型Micro-OLED(有機EL)を採用している、リフレッシュレートが最大120Hzであることなど、基本スペックはXREAL Oneとほぼ同様だが、視野角は50度から57度へと拡大した。これにより、10m先に428型ディスプレイを表示させたのと同じ効果を得られる。


 また、最大輝度も向上して明るくなった。XREAL Oneは最大600ニトだったのに対し、XREAL One Proは最大700ニトとなっている。


 3段階に透過度を変えられるエレクトロクロミック調光機能は、引き続き搭載している。


 音響については、引き続きBOSE(ボーズ)がチューニングしたスピーカーを搭載し、音質をさらに改善している。


 XREAL One Proは、5月にXREAL One向けに発売されたカメラアクセサリー「XREAL Eye」を取り付けられる。XREAL Eyeを取り付けると、XREAL One Proでも6DoF、つまり空間固定画像表示が可能となり、体を前傾させて画面をのぞき込むといった、リアルディスプレイと同じような操作性を得られる。


●「変な人がいる」と思われない薄さ――体験して分かったこと


 XREAL One Proの体験会は、XR・メタバース総合展内のXREALブースで行われた。


 発表会に参加したほぼ全ての報道関係者たちが訪れたため、現場には長い列ができるほど盛況であったが、筆者も5分ほどという短い時間であったが体験する機会を得た。


 ちなみに、筆者は本製品が登場する直前まで“最新製品”だったXREAL Oneを持っており、出先での作業における“サブディスプレイ”として重宝している。しかし、カフェなどのサードプレイスでつかっていると「変な人」と見られているようだ。


 理由をいろいろ考えて見ると、サングラス部分と顔との距離が離れており、大きめサイズのグラスがさらに大きく見えるという点が結構大きいように感じる。


 しかし、XREAL One Proでは映像をディスプレイ(プロジェクター)部から目に届ける光学モジュールがスリムなX Prismとなったおかげで、サングラス部分と顔との距離が、一般的なサングラスに近づいた。


 これなら出先で作業していても、「(どこを見ているかはわからないが、)サングラスをかけている人」と見られるに違いない。変な人に見られることなく、老眼にも優しい作業環境を構築できそうだ。


 発表会では、XREAL OneとXREAL One Proでは光学モジュールの形状が異なるだけでなく、部品も追加されたと説明していた。「減光する分が増えて、明瞭度が低下するのではないか?」と予想していたが、前モデルと変わらずクリアだった。


 操作方法はXREAL Oneを踏襲しているので、乗り換えても戸惑うことはなさそうだ。また、高氏が公開しているスキンパネル(前面フレームパネル)の3Dデータも、そのまま利用可能だ。手作りのスキンパネルがある場合、その資産も活用できるだろう。


 7月23日までの予約期間中にXREAL One Proを予約すると、ホスト端末に電力を供給しながら仮想空間ディスプレイを楽しめる「XREAL Hub」(5980円相当)が特典としてプレゼントされる。


●Android XR搭載ARデバイス「Project Aura」についても言及


 Xrealの発表会には、スペシャルゲストとして中国XREALの徐馳(チー・シュー)CEOも登壇した。徐CEOはXREALの創業者でもある。


 徐CEOは「Project Auraについて知りたいと考えている人も多いことでしょう」と話した上で、その概要を語り始めた。


 Project Auraは、Google/Qualcommと共同で開発を進めているARグラスで、VR/ARデバイスに最適化されたOS「Android XR」を搭載している。


 Project AuraのARグラスは、視野角がさらに広がり約70度になること、GoogleのAIエージェント「Gemini」をグラスで使えること、またX1チップを強化した「X1Sチップ」を搭載することで現行モデル比で25%高速なマルチタスクを行えるという。


 徐CEOによると「X1Sチップの開発は完了しており、あと少しでゴールにたどり着くというところまで来ている。(Project Auraは)2026年内に登場予定だ」という。「確実に日本で初めてのAndroid XRデバイスとなるので、期待していてほしい」とも語った。


●他ブースで見つけた注目の展示物


 XR・メタバース総合展では、日本Xreal以外にもさまざまな企業/団体がブースを構えていた。ここからは、筆者が注目した展示を紹介したい。


XPERTブース(韓国パビリオン内)


 XR・メタバース総合展には、韓国企業が集まる「韓国パビリオン」があった。その一角にブースを構えたXPERTは、バリアフリー字幕サービスソリューションスマートグラス「XPERT INMO 2」などを展示していた。


 INMO 2があれば、映画や演劇などの音声をグラス内に字幕で表示できるようになるので、聴覚に障害がある人も健常者と一緒に楽しめる。


 音声を翻訳した結果をテキスト表示する機能もあるので、外国旅行などでも重宝しそうだ。


 XPERTは主にリアルタイム字幕システムやリアルタイム翻訳ソリューションを提供している。それをインストールしたスマートフォンが置いてあったのでずっと眺めていたら、韓国語話者のスタッフの説明が、リアルタイムに日本語化して表示されていた。同社は、映画館や舞台演劇などを行う劇場の他、観光地や博物館でのガイド代わりといった用途を同社では考えているという。


 個人的には、「これがあれば、翻訳されたテキストを文字の小さいスマートフォンの画面で見なくて済むだろうなぁ」と考えながら話を聞いていた。


 XPERT INMO 2は、大きな障害だけでなく、小さな障害すらないものにしてくれる、まさにバリアフリーなソリューションなのだ。


Dynabookブース


 ノートPCでおなじみのDynabookのブースでは、dynabook(ノートPC)……ではなく、XRグラス「dynaEdge XR1」“のみ”を展示していた。


 dynaEdge XR1は両目型の完全透過型(グラス部分が透明)のXRグラスだ。上半分に搭載したスリット型の光学モジュールに映像を投影することで、ユーザーが画像を認識できるようにしている。


 実際にかけてみたところ、スリットとスリットの間のすき間を感じることはなく、クリアな映像が現実世界に重なって見える。


 PCと接続すれば、最大で3つの仮想デスクトップ(画面)を表示できる。画面を持つノートPCと組み合わせて使う場合は、最大4画面の作業間物理的なサブディスプレイなしに実現可能だ。


 本製品は、両グラスの間(ブリッジ)にカメラを搭載している。これを使えば、遠くにあってよく見えない文字などを拡大して表示したり、作業者目線の手元の様子をリモートで技術者に送ったりすることができる。


 現在、dynaEdge XR1は法人向けにのみ販売しているので、個人が手にするのは難しい。しかし、個人的には作業しながら取扱説明書を見る必要がある場合や、出先でサブディスプレイを使いたい場合に便利そうだと感じた。手元にある何かを見るために老眼鏡を着脱する手間もなくなりそうだ。


 本製品の受注は3月10日に始まり、出荷開始日は6月3日とつい最近である。スタッフによると、デザインの開発や光学モジュールの調整に最も時間を要したが、「日本人の頭の骨格に合わせて設計しているので、ぜひ試してもらいたい」という。


ASKANETブース


 XR・メタバース総合展と併催された「第1回 イマーシブEXPO」にも足を運んでみたところ、まず目についたのはASKANETブースにあった「浮遊LIVEステージ」だ。


 浮遊LIVEステージは立体映像ソリューションの1つ、光線を特殊なガラスプレート(ASKA3Dプレート)を通過させて、空気中に映像を投影するソリューションだ。表示されている映像に手を突っ込んでも、何にも触れられない。


 昔のSFアニメーションまたは実写映画などで、3Dホログラムが映し出す映像に駆け寄って抱きしめようとしても「スカッ」と通り抜けてしまうという描写があったが、まさにそのイメージである。


 小さいものもあるが、技術的には等身大表示にも対応しており、しかも撮影しながらリアルタイムに配信することもできるという。今後はステージなどでVTuberのライブ配信を行えるのではないかと期待がふくらんだ。


エクシーズブース


 エクシーズブースでは、同社が取り扱う「Looking Glass」を展示していた。


 Looking Glassという名前から「お、これもメガネ型のハードウェアかな?」と予想していたが、実際は裸眼立体視のできる3Dディスプレイであった。


 この仕組みは、子どもの頃に傾けることで見えるものが変わるレンチキュラー印刷の施されたカードと同じで、それをディスプレイで再現しているのだという。


 本製品は専用アプリをインストールしたタブレット(展示会場では「iPad Pro」を利用)を使っていたが、サイズによってはより高性能なゲーミングデスクトップPCなどが必要になるという。


 3Dメガネなどをかけることなく、裸眼で立体的な3D映像として楽しめるのがメリット……なのだが、斜視の人への対応はどうなっているのだろうか。「斜視の場合、立体視が難しいのでは」と説明員に質問したところ、「(横幅の短い)小さいサイズのLooking Glassであれば、立体的に見ていただけるようだ」とのことだ。


 筆者の希望的観測に過ぎないが、立体視の訓練をタブレットサイズのLooking Glassでしていれば、加齢とともに進行する斜視が改善されるかもしれない。


 そんなことを考えながら、会場を後にした。



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