
(左から)関口猛さん、笹川友里
関口猛さんは東京工業大学大学院修了、1984年に清水建設入社。生産プラント本部長などを経て、2018年には執行役員エンジニアリング事業本部長に就任。その後、常務執行役員、専務執行役員、取締役を経て2024年4月より現職。
◆早くからデジタル化を推進
日本を代表するスーパーゼネコンの1社である清水建設。ダムや学校、病院、さらに、洋上風力発電所、といった社会インフラをはじめとするさまざまな施設の建設を手がけており、現在も東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」の施工を進めています。さらには、海外にも事業展開していて「東南アジアやアメリカにもグループ会社として支社を持っており、現地での建設事業も展開しています」と関口さんは説明します。
事業内容も多岐にわたり、建築・土木事業をはじめ、不動産投資開発、グリーンエネルギー事業、プラント分野などを手がけるエンジニアリング事業、建物内で使うICT設備(情報通信技術)のシステムインテグレーションをおこなう情報ソリューション事業など、総合的な都市開発にも取り組んでいます。
|
|
◆「Shimzデジタルゼネコン2.0」の3つの柱
清水建設のDX戦略は、2014年に策定された「中期ICT戦略」から始まり、2019年には、その後継として「中期デジタル戦略」が打ち出されましたが、翌2020年に新型コロナウイルス感染拡大があり、アフターコロナを見据えて全面的に見直しを行い、「Shimzデジタルゼネコン」という新しい戦略コンセプトが打ち出されました。
こちらは 3つの柱の推進・実現に向けた取り組みで、1つ目は「ものづくりをデジタルで」。建築現場での更なる効率化や省力化、安全性の向上を目的に、デジタル技術を積極的に活用する方針をまとめたもので、ロボット技術の導入なども含まれています。
2つ目は「デジタルな空間・サービスを提供」。ビル管理システムをはじめ、建設した建物やインフラが、より便利で安全に使われるようデジタルによるサービスを展開していきます。そして、3つ目は「ものづくりを支えるデジタル」。これは業務全体の効率化を図り、企業として“ものづくり力”を底上げするためのデジタル化を推進するものです。
そして、2024年5月に公表された中期経営計画で、デジタルの活用を経営基盤の強化に結びつける方針が打ち出され、「Shimzデジタルゼネコン」を進化・継承する形で「Shimzデジタルゼネコン2.0」をコンセプトとする「中期DX戦略〈2024−2026〉」が策定されました。
|
|
◆関口猛が考える“DX推進の要”
最後に、清水建設にとってのDX推進における課題について伺うと、関口さんは「標準化の難しさ」と言及。清水建設が手がける建物は条件も機能も一つひとつ異なる“一品生産”であり、毎回異なる人材と環境で進めていくため、「根源的に使えるデータや知見をどう標準のノウハウに転用できるかが工夫のしどころ」と分析します。
また、現場ごとに積み上げられたノウハウやデータが属人化(業務が特定の担当者に過度に依存してしまうこと)しやすいことも課題の1つとし、「属人化を防ぐには、みんながデータを使いこなせるようにアレンジをしたり、水平展開していけるような仕組みが必要になります」と言います。
この話を受けて、笹川が「関口さんの頭のなかで、何をどうすれば、ある程度標準化して解決できるようになるのでしょうか?」と質問をぶつけると、関口さんは「例えば、オフィスビルを1つ建設するなかで『こういう技術を使った』とか『こういう課題があった』などいろんな情報が蓄積されます。それらは、オフィスビルに携わる人たちはもちろん、社寺建築に携わっているような人にも“これは参考になる”っていう情報があるかもしれません。なので、そういった情報をチェックできるようなデータプラットフォームやDXの活動基盤を整備して、トライ&エラーでやり続けることが必要かなと思います」と話していました。
次回7月5日(土)の放送は、引き続き関口猛さんをゲストに迎えてお届けします。新しい取り組みを牽引しているスーパーゼネコン・清水建設のアプローチ、そして、建設業の未来について伺います。
|
|
----------------------------------------------------
この日の放送をradikoタイムフリーで聴く
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00〜20:30
パーソナリティ:笹川友里
動画・画像が表示されない場合はこちら