
横浜DeNAベイスターズ・三森大貴インタビュー(後編)
前編:DeNA三森大貴が語るプロ人生初のサヨナラ安打はこちら>>
横浜DeNAベイスターズといえば、明るいチームカラーが持ち味だが、三森大貴は数カ月過ごし、移籍前に持っていたイメージとのギャップを感じたことはないのだろうか。
「いや、そんなにはないですね」
三森は、かぶりを振った。
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【キャプテン牧秀悟の存在】
「負けが込んでしまっても、みんな顔を上げて、切り替えて、明るく『また明日!』みたいな感じですし、これを年間通してやっていくことができれば悪い雰囲気にもならず、戦っていけるんじゃないかなって思います。ただ......」
そう言うと、三森は苦笑して続けた。
「開幕してすぐに負けが続いた時、意外とみんな暗かったんですよ。ああ、けっこうテンション下がるんやなって。逆にホークスは負けた時でも切り替えが早い感じだったので、なおさら明るいベイスターズは負けても切り替えられるのかなと思ったらそんなことなかった。いい時はいいけど、落ちる時は落ちるんだって。
ただ5月、6月に入ると、連敗もありましたけど春先とは全然違った雰囲気になったんですよ。チーム全体が成長しているようで、このまま終盤に向けていい感じでいくんじゃないかと思っています。特にベイスターズに来て感じたのは、勢いに乗った時のすごさですよね。ホークスもすごいんですけど、それ以上の勢いを感じるんです。打者も投手も、集中力を発揮して一致団結していけるのはベイスターズの強みだと思います」
若手が多いベイスターズにあって、そんな勢いを支えているのが、筒香嘉智や宮?敏郎、桑原将志、佐野恵太といったベテランや中堅だと三森は感じている。
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「先輩方が、勢いだけじゃないところを引っ張ってくれるというか、チームのことを考え精神的柱となって支えてくれているように感じます。若手はどうしても結果に一喜一憂しちゃうけど、シーズンをトータルで考えられるように先輩方が導いてくれているので、そこはすごくありがたいなと思っています。経験値の高さゆえ、チームに安心感を与えてくれているんです」
外から来た人間だからこそ、冷静にチームを俯瞰できる三森は貴重な存在だ。
そんな三森が誰よりも厚い信頼を寄せているのが、同学年でキャプテンの牧秀悟だ。先の自身初となるサヨナラヒットでは、一塁をまわった後、真っ先に駆け寄ってきた牧とハグをして喜びを分かち合った。三森は牧について次のように語る。
「もう本当にチームの中心人物であるのはもちろん、プロ野球界全体の中心になれる人間だと思います。キャプテンとしてチームの先頭に立ち、試合で活躍するだけじゃなくバックヤードでもチームメイトをケアしてくれています。そんな姿を見ていると、同級生としてサポートしたい気持ちになりますし、牧をひとりにせず、突っ走っていかないように、みんなでしっかりついていけるようにしていければ、このチームはもっと強くなるような気がしますね。本当に心強いリーダーなので、できるかぎり協力したいと思っています」
DeNAの強さの源は、牧のリーダーシップと若手の勢い、そしてベテランの献身であり、これが一致団結できたときに大きな力を発揮することは昨年の日本シリーズ制覇で証明されている。
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【代走はプレッシャーを感じる】
そこに今季、新たなスパイスとしてピリッとした存在感を示しているのが三森だ。サードとファーストをカバーするユーティリティー性はもちろんのこと、特に試合終盤の勝負を左右する大事な局面で代走として出場し、盗塁を決め、得点へとつなげる役割も担っている。
非常にプレッシャーのかかる難しい立場だが、盗塁や走塁について三森が心がけていることは何だろうか。
「やはりスタメンでいくよりも、代走のほうが緊張感は高いですね。どうしても盗塁を求められる場面ですし、得点につなげなければいけない。もちろん相手ピッチャーのデータを教えてもらい、それを頭に入れて出ていくわけですけど、いざ対峙した時に感じ方の違うピッチャーもいるので、そこは自分の感覚とデータを擦り合わせながら向き合っています。よりアウトにならないような材料を見つけていかなければいけない」
"セーフになる"ではなく"アウトにならない"という哲学。ここぞの場面でのヘッドスライディングは、三森の代名詞になりつつある。
「今はヘッドスライディングが多いんですけど、本当はケガのリスクもあるので足からスライディングしたい気持ちはあるんです。けど、絶対にアウトになれない場面が多いので、そうなると間一髪は、僕の場合はヘッドスライディングのほうが早い。今は身体も元気ですし、アウトにならない確率を求めて、考えながらやっていけたらなって」
そう言うと、三森は少しだけ口角を上げ、うれしそうな様子で続けた。
「最近ではファンの方々から『走れ!走れ!』の応援も多いですし、そこを意気に感じながらやれればいいなと思っています。ただ最近はセーフになるのが当たり前な感じになってきて、そこはあの......プレッシャーを感じていますよ(笑)。
まあ、アウトにならないのはいいことなので、続けていけるようにしたいですね。本当、横浜スタジアムの声援や応援はすごくて僕たち後押しになっているし、勝てば皆さん喜んでもらえるので、もっと応援して頂けるようにチーム一丸でやっていきたいですね」
この言葉を聞く限り、すっかり"ベイスターズの三森"になったと感じずにはいられない。
「まずは出たところでしっかりと結果を出し、それを続けていく。いい形で終盤まで行って、シーズンをトータルで見た時、僕個人もチームもいい成績で終われればいいなと考えています」
これから苦しい夏場を迎えるが、勝負の秋に向け、試合の流れを変えられる冷静沈着な三森の存在は、よりクローズアップされることが予想される。移籍1年目、数々の役割をこなし、ダイヤモンドを駆け巡る韋駄天の献身に期待したい。
三森大貴(みもり・まさき)/1999年2月21日生まれ。埼玉県出身。青森山田高では2年秋から4番に座り、東北大会で打率.571をマークし、センバツ出場に貢献した。2016年のドラフトでソフトバンクから4位で指名され入団。3年目の19年に一軍出場を果たし、21年、22年と100試合以上に出場。24年オフにトレードでDeNAに移籍。ユーティリティプレーヤーとして存在感を発揮している。