今年の夏はスタイリッシュに攻める?「ドライカーボンうちわ」に感じたロマン

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2025年07月07日 18:00  おたくま経済新聞

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今年の夏はスタイリッシュに攻める?「ドライカーボンうちわ」に感じたロマン

 日本の夏に欠かせない、涼を呼ぶアイテムといえば「うちわ」。最近では見かける機会が減ったようにも思えるこの伝統的な道具に、驚くほど現代的な進化形が登場しています。


 ドライカーボンを使った“黒い高級うちわ”とは――?


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


■ 高級でスタイリッシュな雰囲気が漂う「ドライカーボン製のうちわ」

 うちわが好きだという、Xユーザーの「Kei ichi」さんが「今年はドライカーボンです」というコメントとともに投稿したのは、黒いテーブルと半ば一体化するような形で置かれた、黒いうちわの画像。


 形状はスタンダードな丸型の柄つきうちわですが、色は扇ぐ部分から持ち手の部分まで含めて全部真っ黒。さらに特有の網目が入っていて、高級でスタイリッシュな雰囲気が漂っています。扇ぐのはもちろん、部屋に飾っておくだけでも映えそうなデザインです。


 Kei ichiさんが投稿したうちわは、なんとバイクや車のパーツにも使われる「ドライカーボン」でできています。個人で原付バイクのドライカーボンパーツなどを手掛ける「ハリボテレーシング」さんが作成・販売しているものとのことです。


 うちわの素材といえばポリプロピレン、たまに竹のものを見かける程度だった身としては、この「ドライカーボン製のうちわ」はかなりの衝撃を受けました。


 Kei ichiさんがうちわにハマったのは、趣味である「鰻の食べ歩き」がきっかけ。お店で鰻を煽っている立派なうちわを見て憧れ、購入に至ったのだそう。


 さらに実際に使ってみると、うちわが意外と涼しいことに気づき、以来毎年夏が来るたびに1つ、少し贅沢なうちわを購入しているとのことです。


 普段の使い方については「リビングで使ったり、たまに散歩や旅行の時に持ち出してパタパタしながら歩く感じです」「町並みの綺麗な所に行く時に持っていくことが多い気がします」と話しています。


■ 室町時代から続く日本人の知恵!気化熱で涼しさが増す、ユニークなうちわも

 今回の「ドライカーボン製のうちわ」のほか、ユニークなうちわがあるかをうかがってみたところ、「昨年購入した水うちわです」と教えてくれました。


 水うちわは、雁皮紙(がんぴし)という薄くて強い手漉きの和紙に、天然のニスを塗って防水処置を施したうちわのこと。古くは室町時代頃から存在しているとされています。


 その名の通り水につけて使えるほか、水につけることで透き通った非常に綺麗な色合いになる水うちわ。また気化熱により、通常のうちわよりも涼しく感じることができるのだそうです。


 Kei ichiさんは「素材、作り方、作りの美しさ、使い方どの方面から見ても面白いうちわだと思います」と話しています。


 ドライカーボン製のうちわにも、水うちわのように機能面のメリットがあるのかを訪ねてみましたが、残念ながら「あまりメリットはないと思います」とのこと。


 しかし一方で「触ってわかる硬さには満足感があると思います」とも。ドライカーボン製のうちわの投稿は1万件超の「いいね」を集めていますが、ここまで大きくバズった要因についてKei ichiさんは「機能性ではなくロマンですね」と推測。


 「バイクやクルマが好きな人は、F1などレースカーでも使われる事からドライカーボン大好きな人が多いので、それもありクルマ好きで拡散され今回バズったと思います」(Kei ichiさん)


 そんなロマンあふれるドライカーボン製のうちわについて、制作者であるハリボテレーシングさんにも話をうかがってみました。



■ 「最初は複雑な物が作れなくて……」ドライカーボン製うちわが生まれるまで

−− 普段は車やバイクの小物・パーツを制作されているとお見受けしていますが、なぜ「うちわ」を作ってみることにしたのでしょうか?


 うちわ自体は結構前から作ってました。初めて作ったのは2021年みたいですね。


−− 4年近く作られているんですね……!


 ドライカーボンを始めたのは2020年みたいなので、まだやり始めた頃で大きい型、複雑な物も作れなくてスプーンだったりクリアファイル、ナンバー隠し、ビールジョッキ、どんぶり等々身近にある型取りしやすくて簡単な物を作ったりしてました。


 その際は身内にあげただけでしたが、たまたま2023年にバイクのイベントに参加した際に持って行ってたうちわが好評で量産し始めました。


−− うちわは「3k綾織」と「開繊」の2種類があるようですが……


 3k(※)綾織に関してはよく見かける馴染みのあるカーボン柄です。開繊は最近GTマシン等でよく使われている薄くて強度がある物になります。


 厳密には違うのですが簡単に説明すれば、普通のカーボン生地の1束1束の繊維を薄く引き延ばして編んだ物になります。


 ※「k」はカーボン繊維の本数を表す単位で「1k=1000本」。したがって3kは「3000本」、12kは「1万2000本」のカーボン製が使われていることになる。


−− それぞれの違いはどういった点になるのでしょうか?


 うちわの場合は3k綾織の表面に開繊を貼っているかどうかだけの違いになります。開繊だけで作るとなるとコストがかかりすぎるので……。


−− この「ドライカーボン製のうちわ」は扇ぐ部分から持ち手に至るまで、すべてドライカーボンでできているのでしょうか?


 そうです。全てドライカーボンでの一体形成です。


 表面は扇ぐ部分は3k綾織、開繊バージョンは開繊。中間部分は3k綾織バイアス、柄の部分は12k平織バイアスとなっています。


−− うちわを作るにあたってこだわったのは、どんな部分でしょうか?


 初めて作った時(2021年)のうちわはほぼ平板みたいな物だったので持ち手の部分から折れてしまいました。


 その後持ち手の部分が折れないようにマスター型(製品と同じ形)を作り、雌型(反転した型)を作り製品を作りました。


 その際に極力折れないようにと扇ぐ部分、中間、柄の部分で貼る枚数、向きを変えて強度を持たせつつある程度しなるようにしています。


−− カーボンは丈夫なイメージもありますし、Kei ichiさんも「硬さには満足感がある」とおっしゃっていましたが、いずれも努力の結晶なんですね……。強度のほか、見た目の部分での工夫はありますか?


 見た目的にも扇ぐ部分、持ち手との中間部分、柄の部分と貼る向き、使う繊維の種類を変えて見た目でも楽しめるようにと思って貼っています。


−− うちわは黒一色ですが、部分ごとに織り方が違うので複数の色が入っているように見せますね。同じ色なのに違って見える感じが、すごくカッコいいです。


* * *


 うちわはシンプルだからこそ作り手のこだわりや工夫を知ると驚きがありますし、涼しさ以上の魅力を我々に感じさせてくれます。


 ハンディファンが人気を博す令和の時代ですが、この夏くらいはうちわで扇ぎ街歩きをしてみてもいいかもしれませんね。



<記事化協力>
「Kei ichi」さん(@Keiloves911)
「ハリボテレーシング」さん(@haribote_racing)


(ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025070707.html

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